
建設業許可を取得するためには、経営業務の管理責任者や専任技術者といった人的要件だけでなく、会社や個人事業主としての財産的基礎を備えていることが求められます。これは、発注者から見ても「安心して工事を任せられる業者」であることを示すための重要な要件です。
特に東京都江東区や沖縄県那覇市のように、公共工事や大手ゼネコンとの取引が多い地域では、この財産的基礎の確認が許可申請の成否に直結することがあります。今回は、この財産的基礎について詳しくご説明いたします。
1 財産的基礎とは何か
「財産的基礎」とは、簡単にいえば会社や事業者として健全な財務状態を持ち、建設工事を継続的に行えるだけの資金力を有しているかを確認する基準です。
建設工事は高額な資材調達や下請業者への支払いなど、多額の資金が動く業種です。もし事業者の資金繰りが不安定であれば、工事が途中で止まるリスクがあり、発注者や協力業者に大きな損害を与える可能性があります。そのため、国や都道府県は許可を与える際に一定の財産的基礎を求めているのです。
2 一般建設業と特定建設業で異なる基準
建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」がありますが、財産的基礎の基準は両者で大きく異なります。
一般建設業の場合
一般建設業の許可申請では、直近の決算書において基準を満たしていない場合、500万円以上の資金調達能力を証明する必要があります。
この「資金調達能力」とは、すぐに工事を開始できるだけの現金や預金を有していること、あるいは金融機関から融資を受けられる信用力を有していることを指します。
特定建設業の場合
特定建設業では、下請に支払う工事代金も大きくなるため、より厳格な財務基準が設けられています。資本金や自己資本額、負債の状況などを総合的に見られるため、残高証明書など単発の資料では足りません。
そのため、特定建設業を目指す場合は、決算期の前から顧問税理士と連携して財務改善を進めることが必須となります。
3 一般建設業で必要となる確認資料
一般建設業の許可を申請する際、直近の決算で財産的基礎が確認できない場合には、以下のような資料を提出します。
- 金融機関の融資可能証明書
- 銀行預金口座の残高証明書
特に多く利用されるのが残高証明書です。
残高証明書とは?
残高証明書とは、金融機関が発行する「○年○月○日時点で、当該口座に○○円の残高がある」という事実を示す証明書です。
- 申請時点で500万円以上の残高があることが求められる
- 有効期限は発行から1か月程度と短いため、申請直前に取得する必要がある
- 複数の口座を合算することはできない場合が多く、1口座で500万円以上を確認する必要がある自治体もある
東京都江東区、沖縄県那覇市いずれにおいても、金融機関からの残高証明書の提出で財産的基礎をクリアできるケースが多いですが、細かい扱いは自治体ごとに異なるため、事前の確認が欠かせません。
4 特定建設業での財産的基礎の考え方
特定建設業では、単に500万円以上の残高があればよい、というわけではありません。建設業法施行規則で定められた以下の基準を満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 自己資本の額が資本金の額以上であること
- 資本金が2,000万円以上、自己資本が4,000万円以上であること
これらの基準は決算書の内容から判断されるため、単なる証明書の提出では対応できません。したがって、特定建設業の許可を目指す場合は、決算を迎える前から財務体質を整えることが重要です。
江東区や那覇市でも、特定建設業許可の申請は税理士と連携しながら進めるケースがほとんどです。
5 申請実務上の注意点
① 残高証明書の取得タイミング
一般建設業の場合、残高証明書は発行から1か月以内しか有効とされません。申請日がずれ込むと再取得が必要になるため、申請スケジュールに合わせて取得するのがポイントです。
② 融資可能証明書の活用
金融機関から「この事業者には○○万円の融資が可能」という証明をもらえる場合があります。ただし、発行に時間がかかる場合や、金融機関が発行に消極的な場合もあるため、残高証明書を使うケースが主流です。
③ 資金の出所に注意
一時的に誰かから借りて入金しただけでは、資金力の裏付けとして認められない場合があります。金融機関からの借入であれば問題ありませんが、身内からの一時的な資金移動などは疑義を生む可能性があります。
④ 都道府県ごとの取扱い差
東京都と沖縄県でも、証明資料の取り扱いに細かな差があります。江東区の場合は都庁の指導要領、那覇市の場合は沖縄県庁の建設業課の指導要領を必ず確認しましょう。
6 財産的基礎を整えるメリット
財産的基礎を整えることは、建設業許可の取得に必要なだけでなく、事業の信頼性向上にもつながります。
- 元請業者からの信用度が上がる
- 公共工事への入札参加資格審査でも評価される
- 金融機関からの融資を受けやすくなる
特に公共工事の多い江東区、観光関連工事やインフラ工事が活発な那覇市では、財務体質の健全さが取引先の選定に直結することもあります。
7 まとめ
建設業許可申請における財産的基礎は、会社の信頼性と資金力を示す大切な要件です。
- 一般建設業では、500万円以上の資金調達能力を残高証明書や融資証明で示す
- 特定建設業では、決算内容そのものが基準を満たす必要がある
- 残高証明書の有効期限や資金の出所には注意が必要
- 財務基盤を整えることは許可取得だけでなく事業拡大にも直結する
東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む皆様にとって、財産的基礎の整備は「許可を取るためのハードル」であると同時に「会社の信用を高めるチャンス」です。顧問税理士や行政書士と相談しながら、しっかりと準備を進めていきましょう。
行政書士見山事務所は建設業許可申請に特化した事務所です、お気軽にご相談下さい。