
建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の二種類があります。
下請代金の総額が一定規模以上の工事を請け負う場合や、大手ゼネコンからの元請案件を受注する場合には、特定建設業許可が必要になります。
しかし、特定建設業許可を取得するためには、一般建設業に比べてはるかに厳しい「財産的基礎」の基準をクリアしなければなりません。
今回は、東京都江東区や沖縄県那覇市で特定建設業の取得を目指す建設会社の方々に向けて、財務改善の具体的なポイントと実務上の工夫について解説いたします。
1. 特定建設業の財務要件とは
特定建設業許可を取得するためには、建設業法施行規則で次の要件が定められています。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
これらの条件は、直近の決算書に基づいて審査されます。
つまり、財務状況そのものが許可取得の可否を決定するのです。
2. 財務改善の重要性
一般建設業のように「残高証明書」で資金調達能力を示せばよいという柔軟性は、特定建設業にはありません。
決算時の貸借対照表と損益計算書の数字そのものが基準を満たしている必要があります。
そのため、特定建設業を目指す場合は、決算前から戦略的に財務改善を進めることが極めて重要です。
3. 財務改善の具体的なポイント
3-1. 資本金を増強する
特定建設業では資本金2,000万円以上が必須です。
資本金が不足している場合は、以下の方法で増強が可能です。
- 新株発行(増資):法人の場合は新たに出資を受け入れる。
- 代表者からの出資:代表者個人が会社に資金を投入する。
増資手続きは登記が必要となりますので、司法書士や専門家に相談しながら進めるのが安心です。
3-2. 自己資本比率を高める
自己資本は、資本金や利益剰余金など、返済義務のない会社の純資産部分を指します。
特定建設業では自己資本4,000万円以上が条件です。
改善策としては、
- 利益を計上し内部留保を積み上げる
- 不必要な借入金を減らす
- 遊休資産を売却し現金化する
といった方法があります。
特に「利益剰余金の積み増し」が重要で、黒字決算を継続することで徐々に要件を満たせる体制が整います。
3-3. 流動比率を改善する
流動比率とは、流動資産 ÷ 流動負債 × 100 で算出されます。
75%以上が必要とされており、資金繰りの健全性を示す指標です。
改善のためには、
- 短期借入金を長期借入金に切り替える
- 買掛金の支払い条件を見直す
- 売掛金の回収を早める(手形決済から振込に切替)
- 在庫の圧縮による資金化
などが有効です。
3-4. 欠損額を減らす
資本金の20%を超える累積欠損がある場合、要件を満たせません。
そのためには、
- 不採算部門の縮小
- コスト管理の徹底
- 経費削減と粗利率改善
が必要です。
また、資本金を増強することで「欠損の割合」を相対的に下げることもできます。
4. 顧問税理士との連携が不可欠
特定建設業を目指す場合、決算直前に慌てても改善は間に合いません。
最低でも決算の半年前には顧問税理士と相談し、どのように数字を調整していくかを検討することが重要です。
例えば、
- 決算期の資産売却や借入返済のタイミング調整
- 利益計上の戦略
- 資本金増資のスケジュール
など、具体的なシミュレーションを行う必要があります。
5. 東京都江東区・沖縄県那覇市での実務的注意点
江東区の場合
都庁は財務審査を厳格に行う傾向があります。中小建設業者が特定建設業を申請する場合、補正や追加資料の要求が多いため、事前相談で財務内容を確認してもらうことをおすすめします。
那覇市の場合
沖縄県庁では、地元建設業者の申請件数が多く、相談体制も比較的充実しています。ただし、観光関連工事などで大規模案件が多いため、特定建設業を目指す企業は競争が激しく、財務要件の「余裕度」が求められる傾向があります。
6. 財務改善のステップ例
- 現状分析(決算書の確認)
- 資本金、自己資本、流動比率、欠損額を確認
- 改善計画の立案
- 増資、利益計画、借入金返済計画を立てる
- 実行
- 決算期に合わせた資金移動や増資手続き
- 専門家との確認
- 顧問税理士・行政書士・金融機関と相談
- 許可申請準備
- 決算確定後、速やかに申請資料を作成
まとめ
特定建設業許可を取得するには、
- 資本金2,000万円以上
- 自己資本4,000万円以上
- 流動比率75%以上
- 欠損額が資本金の20%以下
という厳格な財務基準を満たす必要があります。
そのためには、決算前から戦略的に財務改善を進めることが不可欠です。
特に、増資・利益剰余金の積み増し・借入金の整理・資金繰り改善といった取り組みを、税理士や専門家と連携しながら早めに進めることが成功のカギとなります。
東京都江東区や沖縄県那覇市で特定建設業の許可を目指す方は、まずは現状の財務状況を正確に把握し、改善に向けた第一歩を踏み出してみてください。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。