
公共工事の受注を目指す建設業者にとって、経営事項審査(経審)のY点(技術職員評価点)は非常に重要な項目です。
経審全体の総合評定値(P点)を構成するなかで、Y点は2,275点という大きな配点を占めており、他社との大きな差がつく要素でもあります。
本記事では、Y点の計算方法や評価基準を解説したうえで、自社のY点を効果的に引き上げるための実務的な強化策について紹介します。
1. 経審におけるY点とは?
Y点は、建設業者の「技術的能力」を評価する項目です。
建設業法に基づき、営業所に常駐する専任技術者や、現場で配置される監理技術者・主任技術者の保有資格や実務経験年数に応じて点数が決まります。
主に評価対象となるのは次の3項目です。
評価対象 | 内容 |
営業所専任技術者 | 営業所に常駐する技術者(建設業許可の基礎) |
現場配置技術者 | 工事現場で配置される主任技術者・監理技術者 |
一級・二級施工管理技士などの資格保有者 | 技術系国家資格が加点対象 |
2. Y点の評価方法と加点のしくみ
Y点は、国交省の定める点数表に基づき、技術者1人ひとりの資格・経験・配置状況に応じて評価されます。
主な評価基準の例(建築一式工事の場合)
技術者区分 | 評価点 |
1級施工管理技士(専任技術者・監理技術者) | 90点 |
2級施工管理技士(専任技術者) | 35点 |
10年以上の実務経験者(専任) | 25点 |
配置技術者としての実績あり(元請500万円以上) | 実績1件ごとに加点あり(最高25点まで) |
これらの合計をもとに、Y点として算出されます。
3. 技術職員評価のポイント
(1)資格の有無とランクが点数に直結
国家資格(特に1級施工管理技士)を保有する技術者は、1人あたり90点前後の高得点が付きます。
同じ人数でも、「1級技士:3名」か「2級技士+実務経験者:3名」かで、Y点には大きな差が出ます。
(2)経験年数と現場実績が加点に影響
実務経験が10年以上ある技術者や、一定規模以上の現場で主任・監理技術者として配置された実績がある場合にも、評価点が上乗せされます。
(3)重複カウント不可に注意
同一人物について、専任技術者と配置技術者の両方の加点を取ることはできません。
また、1人の技術者が複数の営業所に重複してカウントされることも不可です。
4. Y点強化の具体策
ここからは、実際に点数を上げるために取り組むべき具体策を紹介します。
① 国家資格者の計画的な確保
Y点強化の最も有効な手段は、1級または2級施工管理技士を計画的に増やすことです。
社員のうち、受験資格を満たす人には資格取得を促し、社内での支援体制(講習受講・受験費用負担)を整えると効果的です。
資格 | 評価点 | 備考 |
1級施工管理技士 | 約90点 | 業種によって点数変動あり |
2級施工管理技士 | 約35点 | 経験加算あり |
例:1級技士を1名増やすと、Y点が約90点上がるため、P点全体でも大きな影響があります。
② 若手技術者の育成と実務経験の蓄積
すぐに資格者を増やすことが難しい場合は、将来的なY点向上のために若手人材を長期育成する戦略も大切です。
- 技術者登録簿や実務経歴証明書を整備しておく
- 若手社員には、500万円以上の元請工事の主任技術者を担当させる
- 実務経験10年以上の技術者として評価できるよう、日々の工事記録を残す
③ 外部技術者の採用や嘱託契約の活用
社内に十分な技術者がいない場合、外部からの採用や定年後のベテラン技術者との嘱託契約によって技術力を確保する方法もあります。
ただし、
- 常勤であること(専任性)
- 適切な雇用契約や社会保険加入 などの要件を満たさなければ、経審で評価されません。
④ 技術職員の配置と職務実績の管理
Y点の加点には、過去の工事において主任技術者・監理技術者としての配置実績も影響します。
- 元請で500万円以上の工事(建築一式なら1500万円以上)を実施
- 配置技術者としての「工事経歴書」「工事請負契約書」「請求書」などを保存
- 配置技術者実績証明書を経審時に添付できるよう準備
技術者個人の経歴管理を「会社としての仕組み」で支えることが重要です。
⑤ 営業所ごとの専任技術者の最適配置
複数の営業所を持つ建設業者では、営業所ごとに必要な専任技術者をどう配置するかも戦略ポイントになります。
- 評価点の高い資格者を、主要営業所に配置する
- 支店にも2級技士以上を配置してY点全体を底上げ
- 技術者の異動がある場合は届出や証明書類の整理を怠らない
5. 点数の影響と事前シミュレーションのすすめ
Y点は全体のP点(総合評定値)に対して非常に大きな比重を占めます。
例えば、Y点を100点上げるだけで、P点が100点前後上昇する可能性があります。
これは入札等級の維持・ランクアップに直結します。
毎年の経審前には、技術職員の点数を整理し、事前にシミュレーションを行って対策を立てることを強くおすすめします。
6. まとめ|技術職員の力を見える化して点数に反映させよう
経審のY点は、「人材力」をそのまま数値化する指標です。
社員一人ひとりの努力とキャリアが点数に反映される仕組みであり、企業の成長力や信頼性にもつながります。
- 国家資格者を増やす
- 若手育成と経験記録の蓄積
- 外部人材の活用
- 実績証明の整理
- 最適な技術者配置
これらを日常業務の中で丁寧に積み重ねていくことで、Y点の強化は確実に実現できます。
公共工事への挑戦や業容拡大を目指す建設業者にとって、Y点の強化は避けて通れない道。
ぜひ今後の経審戦略に役立ててください。