無報酬役員を専任技術者とする場合の注意点~東京都江東区・沖縄県那覇市の建設業者の皆様へ~

建設業許可を取得する際には、営業所ごとに「専任技術者」を配置することが必須条件です。専任技術者は、工事の技術的責任を担う極めて重要なポジションであり、許可審査でも最も注目される要件のひとつです。

ところが、中小規模の建設業者や家族経営の会社では、役員が専任技術者を兼ねるケースも多くあります。その中でしばしば問題となるのが、「無報酬役員」を専任技術者とするケースです。

一見すると「役員として会社に関わっているのだから問題ないのでは?」と思われがちですが、実は無報酬役員の場合には常勤性や実務従事性が疑われやすく、許可申請において大きなリスクを伴います。

本記事では、東京都江東区と沖縄県那覇市で建設業許可を目指す方々に向けて、無報酬役員を専任技術者とする場合の注意点や解決策を詳しく解説していきます。

目次

1. 専任技術者に求められる役割と要件

専任技術者は、各営業所に常勤し、建設工事の技術的管理を行う者です。主に次のような要件を満たす必要があります。

  1. 技術的資格要件
     一定の国家資格(建築士、施工管理技士など)または10年以上の実務経験を有していること。
  2. 常勤性要件
     営業所に常勤していること。ほかの会社との兼任は不可。
  3. 責任性要件
     営業所の工事に関し、実質的に技術上の責任を果たしていること。

このうち「常勤性要件」が、無報酬役員の場合に特に問題となります。

2. なぜ「無報酬役員」では問題になるのか

(1) 常勤性が疑われやすい

無報酬である場合、役員として実際に常勤勤務しているのかどうかを外形的に証明しづらくなります。
給与や報酬が支払われていなければ、「生活の基盤をどこで得ているのか」が不明確になり、他の仕事をしているのではないかと疑われるのです。

(2) 他の勤務先があると見なされやすい

無報酬だと「この会社以外に収入源があるはず」と推測され、兼任を疑われます。兼任は許可要件違反ですから、不許可のリスクが高まります。

(3) 資料で裏付けが難しい

常勤性の確認には社会保険加入記録や住民税課税資料が用いられますが、無報酬役員の場合はこれらに記載がないことも多く、結果として「常勤の証拠不十分」とされがちです。

3. 東京都江東区における傾向

東京都では審査が厳格であり、無報酬役員を専任技術者とする場合には特に注意が必要です。

  • 給与や役員報酬がないと常勤性を認められにくい
  • 形式的に名前だけ置いているケースを防ぐため、複数の裏付け資料を求められる
  • 標準報酬決定通知書や住民税課税資料が提出できない場合、追加の説明資料が必要

江東区の事業者にとっては、「無報酬でも大丈夫だろう」という安易な考えでは許可が下りない可能性が高いため、早めの対策が求められます。

4. 沖縄県那覇市における傾向

那覇市を含む沖縄県では、中小企業や家族経営の建設業者が多く、無報酬役員のケースが珍しくありません。そのため、事情を考慮して柔軟に扱われることもあります。

ただし、それでも以下の点は押さえておかなければなりません。

  • 無報酬であっても、常勤している証拠(出勤簿、業務日誌、指揮命令系統図など)を示す必要がある
  • 他の収入源があると兼任と見なされるリスクがある
  • 書類不足の場合には「補正」や「再申請」を余儀なくされる

沖縄では「地域事情を踏まえてある程度認めてもらえる」と考える方も多いですが、最終的には書類で証明できなければ認められないことに変わりはありません。

5. 無報酬役員を専任技術者とする場合の注意点

(1) 報酬を設定することが最も確実

無報酬役員として専任技術者を置くのは極めてリスクが高いため、役員報酬を設定し、社会保険や税で裏付けが取れるようにするのが最も確実です。

(2) やむを得ず無報酬の場合の工夫

どうしても無報酬にせざるを得ない場合には、次のような資料で常勤性を補強する必要があります。

  • 出勤簿や勤務表
  • 会議録、業務日誌、現場の写真記録
  • 指揮命令を行っている証拠(現場への指示書、社内稟議書など)

(3) 他の収入源を否定すること

兼任を疑われないためには、他社に勤務していないことを説明する必要があります。必要に応じて、確定申告書や年金加入記録を提出することもあります。

(4) 事前相談の重要性

都道府県ごとに運用は異なります。特に江東区(東京都)と那覇市(沖縄県)では基準が違う可能性が高いため、必ず事前に窓口に相談して方針を確認することが重要です。

6. 実際にあったトラブル事例

事例1:江東区で不許可に

無報酬役員を専任技術者として申請したが、給与支払いの証拠がなく、社会保険未加入。結果として「常勤性が確認できない」とされ不許可となった。

事例2:那覇市で補正対応

無報酬役員を専任技術者としたが、追加資料の提出を求められた。最終的に出勤簿や業務日誌を整備し直し、補正後に許可が下りた。

事例3:報酬設定でスムーズに許可

当初は無報酬役員を専任技術者に予定していたが、事前相談で指摘を受け役員報酬を設定。社会保険に加入させたことで、スムーズに許可が下りた。

まとめ

無報酬役員を専任技術者にすることは可能ですが、実務上は大きなリスクを伴います。

  • 給与や報酬がないと常勤性を証明しづらい
  • 江東区では厳格に扱われ、不許可となるケースも多い
  • 那覇市では柔軟さはあるが、結局は資料で証明できなければ認められない
  • 最も安全なのは役員報酬を設定し、社会保険・税務資料で裏付けを取ること

建設業許可の審査は年々厳格化しており、「名前だけの専任技術者」と疑われないように準備を整えることが不可欠です。

行政書士見山事務所は建設業許可申請に精通しております、お気軽にご相談下さい。

目次