経審Z点(社会性評価)の加点項目と見落としやすいポイント、確実に得点化するための実務対策

建設業の経営事項審査(経審)において、Z点は「社会性等」を評価する項目です。
企業としての健全性や社会的責任を示すものであり、いわば“信頼性の指標”です。

Z点の配点は400点(標準値200点)と他の指標に比べてやや小さいものの、加点漏れや書類不足によって評価がゼロになるケースも多く、注意が必要です

本記事では、Z点の評価項目を網羅的に紹介しつつ、見落としやすいポイントと確実に加点を得るための準備方法を解説します。


目次

1. Z点とは? ― 社会性評価の概要

Z点(社会性等)では、建設業者のコンプライアンスや社会的責任、法令遵守状況などが評価されます。
加点項目は、公共性・法令遵守・社会貢献といった観点から構成されており、形式的な提出資料に基づいて客観的に点数がつく仕組みです。

Z点の主な構成(令和6年時点)

評価項目点数の目安
労働福祉の状況(建退共など)最大15点
防災協定の締結状況最大15点
法令遵守状況(建設業法違反の有無など)加点・減点
営業年数・継続性最大15点
建設業退職金共済制度の履行加点
若年技術者雇用・障がい者雇用各加点あり
ISO取得、CPD取組最大15点
その他社会貢献一部自治体による

Z点は、書類で証明できなければ加点されない点が最大のポイントです。


2. 各評価項目の具体的な加点基準

以下では、実際に加点対象となる主な項目を具体的に紹介します。

(1)建設業退職金共済制度の履行(建退共)

建退共制度への加入と、過去1年間の証紙の貼付実績によって加点されます。

証紙貼付人数評価点
1人~3人未満3点
3人~10人未満5点
10人以上最大15点

提出書類:退職金共済証紙の購入証明書・加入証明書など

見落としがち: 建退共の証紙購入はしていても、証明書類を添付しないと加点されません。


(2)防災協定の締結

地方自治体などと締結している防災協定(災害時協力体制)により加点されます。

締結形態評価点
単独で締結(自社名義)5点
建設業団体経由3点

提出書類:協定書の写し、防災協力証明書など

見落としがち: 団体締結でも加点対象になるため、所属団体に確認を。


(3)継続年数(経営の安定性)

法人設立からの年数に応じて評価されます(個人事業主も対象)。

継続年数評価点
3年以上5点
5年以上10点
10年以上15点

提出書類:登記事項証明書や営業年数を示す許可証

見落としがち: 許可取得後の年数ではなく、「法人の設立日」または「事業の開始日」が評価対象です。


(4)ISO認証・建設キャリアアップシステム(CCUS)・CPD

項目評価点
ISO9001(品質)取得5点
ISO14001(環境)取得5点
建設キャリアアップシステム登録3点(一定条件下で加点)
技術者の継続教育(CPD)実施最大3点

提出書類:ISO登録証、CCUS登録証明、CPD実績報告書など

見落としがち: ISOの有効期限切れや登録証不備で無効になるケースが多いため、最新の書類を用意しましょう。


(5)若年・女性・障がい者雇用

雇用者区分評価点
若年技術者(35歳未満)1人以上3点
女性技術者在籍1点
障がい者法定雇用率クリア最大3点

提出書類:出勤簿、雇用契約書、障害者雇用状況報告書など

見落としがち: 社員名簿や出勤簿など、雇用実績を示す書類が必要です。


3. Z点でよくある見落としポイント

Z点で減点や無得点となる主な原因は、「実績はあるが、証明書類が未提出」というケースです。

以下、よくある注意点をまとめます。

書類の不備・期限切れ

  • ISOの更新が間に合っていない
  • 建退共の証紙購入記録が過去1年で途切れている
  • 雇用状況の証明に出勤簿を添えていない

団体経由の協定証明を提出していない

  • 所属団体を通じて防災協定を結んでいても、自社名義でない場合は証明書の添付が必要です。

技術者の教育実績が形式的

  • CPD研修を実施していても、内容や回数の記録がなければ加点対象外になります。

4. 実務でのZ点対策チェックリスト

経審前にZ点で損をしないために、以下のチェックリストで準備状況を確認しましょう。

項目確認すべき点
建退共証紙過去1年分の購入記録があるか
防災協定単独 or 団体名義、証明書類の添付は?
継続年数登記簿等で設立年数を明示できるか
ISO取得有効期限内か/証明書が最新か
若年雇用35歳未満の技術者名簿はあるか
CPD実績年間の研修記録・出席簿があるか

5. まとめ ― Z点は“書類で取れる確実な加点”、見逃さない準備を

Z点は、他の評点(X点:経営規模、Y点:技術力、W点:経営状況)に比べ、会社としての姿勢や仕組みで点数が取れる項目です。

加点される条件を満たしていても、証拠資料を提出しなければ一切評価されないため、
「実績があるのにゼロ評価」にならないよう、慎重な事前準備が不可欠です。

確実に得点できる項目を落とさず拾うことで、P点(総合評定値)の安定につながります。
経審直前ではなく、決算期のタイミングでZ点対策を確認しておくのがベストです。

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