相続手続・遺言における「受遺者」とは?その役割と注意点を解説

人が亡くなった後の財産の承継と聞くと、多くの方は「相続人」による相続を思い浮かべるのではないでしょうか。配偶者や子ども、場合によっては親や兄弟姉妹が相続人となり、法律で定められた割合に従って財産を受け継ぐ、これが通常の相続のイメージです。

しかし、相続の世界にはもう一つの重要な登場人物が存在します。それが「受遺者(じゅいしゃ)」です。遺言書に基づいて財産を取得する人を指しますが、この受遺者の位置づけや権利関係は、相続人とは大きく異なります。今回は、東京都江東区や沖縄県那覇市にお住まいの皆さまに向けて、「受遺者」について詳しくご説明します。

目次

1 受遺者とは誰のことを指すのか

まず「受遺者」という言葉の基本的な意味を整理しましょう。

受遺者とは、被相続人(亡くなった方)の遺言書に基づいて財産を受け取る人をいいます。重要なのは、この受遺者は「法定相続人ではない人」であることが多いという点です。

たとえば、被相続人の友人、世話をしてくれた知人、親戚の子、あるいは地域の公益法人や慈善団体など、相続人ではない第三者に財産を残したい場合、遺言書に「遺贈」としてその意思を書き残すことで実現できます。

一方、法定相続人に財産を「相続させる」と遺言書に記した場合、その人は「相続人」であり「受遺者」とは呼びません。この区別は実務上も非常に大切です。

2 遺贈の種類と受遺者の関わり方

遺贈にはいくつかの形態があり、受遺者の権利に直結します。

2-1 包括遺贈

「財産の全部を〇〇に遺贈する」といった形で、財産全体やその一定割合をまとめて譲る方法です。包括遺贈を受けた受遺者は、法定相続人に近い立場となり、債務も一定範囲で引き継ぐことになります。

2-2 特定遺贈

「自宅の土地を〇〇に遺贈する」「預金のうち500万円を〇〇に遺贈する」といったように、特定の財産を指定して譲る方法です。こちらの場合、受遺者は原則として債務を負いません。

このように、遺贈の種類によって受遺者の負担や権利が大きく異なるため、実務では注意が必要です。

3 法人も受遺者になれる

受遺者は必ずしも個人に限られません。公益法人や学校法人、NPO法人、場合によっては株式会社などの営利法人も遺贈を受けることができます。

たとえば、「生涯お世話になった地元の病院に財産を遺したい」「地域の福祉団体に寄付をしたい」といった想いを遺言に託すことが可能です。東京都江東区や沖縄県那覇市でも、地域に密着した法人に遺産を寄付する例が少しずつ増えてきています。

ただし、法人を受遺者とする場合には、その法人が受遺を受け入れられる規程を持っているか、寄附金控除の対象となるのかといった点も確認しておく必要があります。

4 遺留分との関係に注意

受遺者に財産を渡せるといっても、無制限ではありません。法定相続人の中には「遺留分」という最低限の取り分が保証されている人がいます。

遺留分を持つのは、配偶者、子ども、親(直系尊属)です。兄弟姉妹には遺留分はありません。

もし、被相続人が全財産を友人に遺贈すると遺言した場合でも、相続人である配偶者や子どもは「遺留分侵害額請求権」を行使して、一定の財産を取り戻すことができます。受遺者はその点を理解しておかなければなりません。

5 受遺者が遺贈を受けるまでの流れ

実際に受遺者が遺贈を受けるためには、いくつかのステップを踏む必要があります。

  1. 遺言書の確認
     公正証書遺言であればすぐに内容が確定します。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。
  2. 遺言執行者の存在確認
     遺言書で遺言執行者が指定されている場合、その人が財産の移転手続きを進めます。
  3. 財産の移転手続き
     不動産なら所有権移転登記、預貯金なら払戻し手続きが必要です。受遺者自身が手続きを行う場合もあれば、遺言執行者が代理する場合もあります。
  4. 税務申告
     受遺者が相続人でない場合、取得した財産には相続税が課されます。場合によっては贈与税と比較して有利不利を検討する必要もあります。

6 受遺者に関するトラブル事例

実務上、受遺者が絡む場面ではトラブルになるケースも少なくありません。

  • 相続人が遺言の存在を隠してしまい、受遺者が知らされなかった
  • 遺留分侵害額請求を受けて、思ったより財産を取得できなかった
  • 法人に遺贈する予定だったが、法人側で受け入れ態勢が整っておらず、実行できなかった

これらはすべて、事前に専門家へ相談することで回避できる可能性が高い問題です。

7 まとめ

受遺者は、被相続人の意思を叶える重要な存在です。相続人以外の人や法人に財産を残したい場合、遺言を通じて受遺者を指定することで初めて実現できます。

一方で、遺留分との調整や手続きの煩雑さ、税務上の負担など、注意すべき点も多くあります。特に東京都江東区や沖縄県那覇市にお住まいの方は、都市部と地方で相続人の構成や家族関係が異なるため、遺言内容を工夫することがより重要になります。

ご自身やご家族の大切な財産を安心して託すためにも、「受遺者」の制度を正しく理解し、専門家とともに準備を進めていくことをおすすめします。

終活・生前相談・遺言の作成・相続手続きは行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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