
建設業許可を維持していくためには、許可取得時の要件を常に満たし続ける必要があります。その中でも特に重要な要件のひとつが「専任技術者」です。
専任技術者は、各営業所に常勤している建設技術の責任者として位置づけられており、その在籍が確認できなくなると、建設業許可の根幹が揺らぐことになります。
本記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市で建設業を営む皆さまに向けて、専任技術者の変更手続きの流れ、準備のポイント、注意点をわかりやすく解説します。
1. 専任技術者とは何か
専任技術者とは、建設業法上、営業所ごとに配置が義務づけられている技術責任者のことです。
建設業者が受注・契約・施工管理などを適正に行うために必要な、専門的知識や実務経験を持つ人物であり、次のような役割を担います。
- 営業所で工事に関する契約や見積などを技術的観点からサポートする
- 請け負う工事の品質や安全性を担保するための技術的助言を行う
- 建設業法や各種施工基準に照らして、業務を適正に遂行する
このように専任技術者は「建設業許可の技術的裏付け」となる存在であるため、常に営業所に常勤していることが前提とされます。
2. 専任技術者が退職・異動する際のリスク
専任技術者が退職や転勤などで営業所から離れる場合、その時点で建設業許可の要件を満たさない状態となります。
建設業法上、専任技術者がいない状態で営業活動を続けることはできず、発注者との契約や工事の受注にも支障が生じかねません。
東京都や沖縄県でも、こうした専任技術者不在の状態が続くと、「許可要件欠如」により許可の取消しや業務停止処分の対象となる可能性があります。
このため、退職や人事異動の予定がある場合には、早めに後任者の選定と届出準備を行うことが非常に重要です。
3. 専任技術者の要件と後任者選定のポイント
専任技術者になるには、許可業種ごとに求められる要件を満たす必要があります。大きく分けると以下の2つです。
(1)国家資格などの「資格による要件」
建設業法施行規則に定められた国家資格(例:1級・2級施工管理技士、建築士、技術士など)を有している場合、その資格証明書で要件を満たすことができます。
例えば、建築一式工事業では「建築施工管理技士」や「建築士」、電気工事業では「電気工事施工管理技士」などが該当します。
(2)実務経験による要件
資格を持っていない場合でも、該当する工事業種に関して10年以上の実務経験(特定建設業の場合は15年以上)がある場合は、専任技術者として認められることがあります。
この場合、工事契約書・請求書・注文書・写真・日報などの客観的な証明資料が必要です。
専任技術者を変更する際は、こうした資格や実務経験の有無をまず確認し、書面で立証できる人材を確保することが最も重要です。
4. 専任技術者変更の手続きの流れ
専任技術者の変更は「事後届出制」です。
つまり、変更が生じた後、14日以内に変更届を提出する義務があります(建設業法第11条の2)。
(1)変更届の提出先
- 東京都江東区の場合:東京都都市整備局・建設業課、または所管の都庁出先機関
- 沖縄県那覇市の場合:沖縄県土木建築部・建設業課、または各土木事務所
それぞれの提出窓口や提出方法(窓口持参・郵送・電子申請)は、事前に確認することをお勧めします。
(2)提出書類の構成
主な提出書類は以下のとおりです。
- 変更届出書(様式第22号)
- 変更内容を証明する書類(資格証または実務経験証明)
- 新専任技術者の在籍を示す資料(健康保険証・給与台帳・雇用契約書など)
- 退任した専任技術者に関する退職証明書(または異動通知書)
- 新専任技術者の常勤性を確認する資料
書類の形式や添付順序は、都道府県によって若干異なる場合があります。東京都および沖縄県では、公式ホームページに「変更届の手引き」が掲載されていますので、それに従って作成してください。
5. 変更届の提出が遅れた場合の対応
「退職から2週間を過ぎてしまった」「登記や証明書の準備に時間がかかって間に合わない」というケースも少なくありません。
このような場合は、やむを得ない事情を説明する「申立書」を添付し、遅延理由を明確にすることで受理してもらえる場合があります。
ただし、届出を怠ったまま放置すると、行政指導や許可の取消しに発展することもあります。
特に建設業許可更新の際に「過去の変更届未提出」が発覚すると、更新申請が受理されない事態にもなり得ますので注意が必要です。
6. 変更届提出後の確認と実務上のポイント
変更届を提出した後、行政庁で内容確認が行われ、形式・要件に不備がなければ正式に受理されます。
受理後は、変更届控えに受理印が押されるため、会社の許可関係ファイルに必ず保管しておきましょう。
この控えは、将来的に入札資格審査や経営事項審査(経審)を受ける際にも必要になります。
また、専任技術者の変更に伴い、以下のような関連書類の更新も忘れずに行ってください。
- 建設業許可票(事務所に掲示するプレート)の記載変更
- 各種社内名簿や役職一覧の更新
- 公共工事登録関係書類の変更
行政書士などの専門家に依頼すれば、これらの届出や付随する文書管理を一括でサポートしてもらうことも可能です。
7. 変更トラブルを防ぐための事前準備
専任技術者の変更は、突然の退職や異動で慌ただしく進めざるを得ないこともあります。
しかし、事前に以下のような体制を整えておくことで、リスクを最小限に抑えることができます。
- 技術者資格を持つ社員を複数育成しておく
→ 一人に依存しない人材構成を作ることが理想です。 - 資格証や実務経験証明の書類を常に整理して保管しておく
→ 突発的な変更でもすぐに対応できます。 - 退職予定がある場合は、少なくとも1〜2か月前から後任を確定させる
→ 手続きの猶予を確保できます。
8. まとめ 専任技術者の安定配置が許可維持のカギ
専任技術者は、建設業許可の「技術的裏付け」であり、営業活動を行う上で不可欠な存在です。
そのため、退職や異動が生じた際には迅速な後任選定と届出対応が求められます。
特に東京都江東区や沖縄県那覇市など、地域の行政窓口ごとに提出ルールや必要資料が微妙に異なりますので、事前確認と専門家への相談がスムーズな手続きの鍵となります。
建設業許可の維持は「取得した後の管理」が最も重要です。
専任技術者変更のような日常的な届出も、着実に行うことで会社の信頼性を守ることができます。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。