建設業許可の維持に必要な『決算変更届』を忘れたときのリスクと対応策について

目次

1. 建設業許可を維持するために欠かせない「決算変更届」とは

建設業許可を取得した後、毎年必ず提出が求められるのが「決算変更届(事業年度終了報告)」です。
この届出は、許可を持つ建設業者が毎年の経営内容や実績を都道府県知事または国土交通大臣に報告するためのものです。

提出期限は、事業年度終了の日から4か月以内です。
例えば3月決算の会社であれば、7月末までに提出を完了しなければなりません。

決算変更届の主な提出書類は以下の通りです。

  • 事業年度終了報告書(様式第一号)
  • 工事経歴書
  • 直前3年の工事施工金額
  • 財務諸表(貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書など)
  • 事業報告書(法人の場合)
  • 納税証明書(必要に応じて)

この届出は、建設業者が「適正に事業を運営しているか」「経営状況が安定しているか」を行政が確認するために必要なもので、いわば“建設業許可の健康診断”ともいえる手続きです。

2. 決算変更届を提出しないとどうなる?実務上のリスク

決算変更届を出し忘れても、すぐに許可が取り消されるわけではありません。
しかし、実務上は非常に大きなデメリットがあります。以下に具体的なリスクを説明します。

(1)建設業許可の「更新」ができなくなる

建設業許可は通常、5年ごとの更新が必要です。
更新申請を行う際には、直近分を含む過去の決算変更届がすべて提出されていることが前提条件になります。

1年でも未提出があると、更新申請が受け付けられません。
つまり、提出を怠ると、更新期限を迎えた際に許可が切れてしまう危険があるのです。
一度許可が失効すると、新規申請として一から取り直す必要があり、時間と手間が倍以上かかってしまいます。

(2)入札資格審査や経審に影響する

公共工事の入札参加を希望する場合、「経営事項審査(経審)」を受けることになります。
経審の申請にも、決算変更届の提出が完了していることが条件です。

提出が遅れていると、経審を受けられず、入札参加資格を失う可能性があります。
特に東京都や沖縄県のように年度ごとの更新管理が厳格な自治体では、提出遅延がそのまま入札資格喪失につながるケースも少なくありません。

(3)監督官庁からの行政指導・指摘を受けることも

提出が長期間滞っていると、監督官庁(東京都の場合は都庁の建設業課、沖縄の場合は県土木建築部など)から「提出の督促」や「行政指導」を受けることがあります。
場合によっては、建設業法第29条第1項第4号に基づき、指示処分が下される可能性もあります。

(4)信用の低下・金融機関対応への影響

決算変更届の未提出は、取引先や金融機関からもネガティブに見られることがあります。
建設業者としての「コンプライアンス意識」に疑問を持たれ、融資審査や協力業者との契約面で不利になる場合もあります。

3. 提出を忘れてしまったときの対応策

では、うっかり提出を忘れてしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
焦る必要はありません。期限を過ぎても、きちんと対応すれば問題を最小限に抑えることができます。

(1)すぐに過年度分をまとめて提出する

決算変更届は、期限を過ぎていても受け付けてもらえます。
そのため、過去に未提出の年度があれば、まずは直近から順に提出していきましょう。

たとえば3期分提出していない場合は、3年分の財務諸表や工事経歴書などを作成・添付する必要があります。
提出年度が多いほど作業量は増えるため、行政書士など専門家に依頼するのも有効です。

(2)届出内容の整合性を確認する

決算変更届の内容と、登記簿謄本や許可情報に食い違いがあると、受理されないことがあります。
特に注意すべきは以下の点です。

  • 商号や資本金の変更をしているのに、変更届を出していない
  • 役員が変わっているのに、届出が反映されていない
  • 決算期を変更したが、書類が旧年度のままになっている

このような場合は、決算変更届の前に変更届を出す必要があります。
順序を誤ると、書類の再提出を求められることがあります。

(3)今後忘れないようにスケジュール管理を徹底する

建設業許可を維持するための提出書類は多岐にわたります。
決算変更届は毎年の恒例業務として、社内で明確にスケジュール化しておくことが大切です。

おすすめは以下のような管理方法です。

  • 会計事務所や行政書士と連携し、毎年決算終了後に自動的に届出作成を進める
  • 決算月の翌月に「届出準備チェックリスト」を作成する
  • 提出期限の2か月前にリマインダーを設定しておく

このようにルーティン化することで、提出漏れを防ぐことができます。

4. 専門家に依頼するメリット

決算変更届の作成自体は、形式的には難しいものではありません。
しかし実際には、財務諸表の様式や業種ごとの工事経歴書の書き方など、細かいルールが多数存在します。
特に「特定建設業」や「複数業種許可」を持つ会社の場合、誤りがあると修正対応に手間取るケースが多く見られます。

東京都や沖縄県では、提出方法や必要書類も若干異なります。

  • 東京都江東区の事業者の場合:東京都庁への郵送提出も可能だが、書類の不備があると再提出が必要
  • 沖縄県那覇市の事業者の場合:県庁の窓口での提出が基本で、年度によって様式改訂があるため注意

行政書士に依頼すれば、最新の様式・提出方法に基づいて正確に作成・提出が可能です。
さらに、過年度分の未提出対応や、今後のスケジュール管理の仕組みづくりもサポートしてもらえます。

5. まとめ 届出を忘れず、安定した許可維持を

建設業許可を持つということは、それ自体が「社会的信用」を意味します。
しかし、決算変更届を怠ると、その信用が一瞬で揺らいでしまう可能性があります。

提出を忘れてしまっても、早期に対応すればリスクは軽減できます。
重要なのは、「毎年確実に届出を行う仕組みを作ること」。
それが、建設業を安定して継続するための第一歩です。

東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む皆様も、
決算変更届を単なる義務としてではなく、
自社の経営状態を見直す良い機会と捉えて、確実に対応していきましょう。

建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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