生前贈与の落とし穴?相続税対策の新ルールと成功する贈与のコツ

相続対策の一環として注目される「生前贈与」。財産を円満に引き継ぐためには、計画的な贈与が重要です。2023年の民法改正では、婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与が特例の対象となるなど、より柔軟な活用が可能になりました。本記事では、生前贈与の基本、贈与税との関係、相続に与える影響について詳しく解説します。

目次

1. 生前贈与とは?その基本を理解する

生前贈与とは、被相続人が生前に財産を譲ることで、相続開始後の財産分割をスムーズにする手段の一つです。親から子どもへの資産承継や、夫婦間での不動産の移転などが一般的です。

生前贈与の主な目的として、次のような点が挙げられます。

  • 相続税の軽減
  • 遺産分割時のトラブル回避
  • 財産を意図した人に確実に引き継ぐ

ただし、贈与税が高額になる可能性があるため、税制上の特例を活用しながら進めることが重要です。

2. 生前贈与が相続に与える影響

生前贈与を受けた相続人は、遺産分割時に「すでに財産を受け取っている」とみなされる可能性があります。これは「特別受益」という考え方によるもので、他の相続人との公平性を保つための仕組みです。

例えば、相続財産が3,000万円あり、生前に長男が1,000万円の贈与を受けていた場合、長男はすでに1,000万円を取得済みと見なされ、残りの2,000万円を基準に遺産分割が行われることがあります。

特別受益に該当するかどうかはケースによって異なり、相続時にトラブルの原因となることもあります。贈与の際は、遺言書を作成するなど、将来の争いを避ける工夫が必要です。

3. 2023年の民法改正と配偶者への生前贈与の特例

これまで、夫婦間の生前贈与は、相続時に遺産の一部として考慮されることが一般的でした。しかし、2023年の民法改正により、特定の条件を満たす場合には相続財産から除外されることになりました。

適用条件

  • 婚姻期間が20年以上であること
  • 居住用不動産(自宅)を贈与または遺贈すること

この改正により、夫が生前に妻へ自宅を贈与した場合、相続時に「前渡し財産」とみなされず、遺産分割協議や遺留分の計算から除外することが可能になりました。

この特例を活用することで、相続時に生存配偶者の生活基盤が守られ、長年住み慣れた自宅に安心して暮らせるようになります。

4. 生前贈与の具体的な活用方法

生前贈与を効果的に活用するためには、税制上の特例を適切に利用することが重要です。

贈与税の特例を活用する

生前贈与には、贈与税がかかることが一般的ですが、以下の特例を利用すれば税負担を軽減できます。

  • 暦年贈与制度(年間110万円まで非課税)
  • 相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税)

特に、子や孫への計画的な資産承継を考える場合は、暦年贈与制度を活用することで税負担を抑えることが可能です。

遺言書の作成を検討する

生前贈与を行う場合でも、後の相続トラブルを避けるために遺言書を作成することが望ましいです。公正証書遺言を作成することで、遺産分割に関する意向を明確に残すことができます。

配偶者居住権の活用

2020年に導入された「配偶者居住権」を利用すれば、配偶者が自宅に住み続ける権利を確保しながら、遺産の分割方法を柔軟に決めることができます。

これらの制度を組み合わせることで、より円滑な相続対策が可能となります。

5. まとめ 計画的な生前贈与で相続対策を

生前贈与は、相続税の負担軽減や、相続トラブルの防止に役立つ手段ですが、適切な方法で行わなければ、かえって税負担が増えたり、遺産分割時の混乱を招いたりすることもあります。

2023年の民法改正により、婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与は、相続時に考慮しなくてよいという特例が設けられました。この制度を活用することで、配偶者の生活を守りながら、円滑な相続を実現することが可能です。

生前贈与を検討する際は、税制や法改正の内容を把握し、適切な手続きを進めることが大切です。

東京都江東区・沖縄県那覇市での生前贈与・相続対策のご相談について

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