
~江東区・那覇市で遺言・相続を考えている方へ~
相続の場面では、「誰が財産を引き継ぐのか」が最も大きな関心事になります。そして、相続に関するルールのなかで、ときに見過ごされがちなのが「受遺者(じゅいしゃ)」という存在です。
「相続人じゃないのに財産をもらえるの?」
「遺言があれば、家族以外にも財産を残せるって本当?」
こういった疑問にお答えするために、この記事では、受遺者とは何か、受遺者になるとどうなるのか、遺言との関係や注意点などを、東京都江東区・沖縄県那覇市の皆さまに向けて、わかりやすく解説していきます。
1. 受遺者とは?相続人とは違うの?
相続において、財産を引き継ぐ人には、大きく分けて「相続人」と「受遺者」の2種類がいます。
● 相続人とは?
被相続人(亡くなった人)の財産を、法律に基づいて当然に引き継ぐ人のことをいいます。主に以下のような人たちが該当します。
- 配偶者(常に相続人)
- 子(子が死亡している場合は孫)
- 親(子がいない場合)
- 兄弟姉妹(子も親もいない場合)
これらの人たちは、遺言がなかったとしても、法律の規定に従って法定相続分で財産を受け取る権利があります。
● 受遺者とは?
一方で受遺者とは、被相続人の遺言書によって財産を譲り受ける人のことです。
ポイントは以下の通りです:
- 相続人ではない人(赤の他人も含む)が対象になる
- 遺言書に基づいて財産を取得する
- 個人だけでなく法人も対象になる
つまり、遺言書さえあれば、家族でない人や団体、会社などにも財産を遺すことができるのです。
2. 遺贈と受遺者の関係
遺言によって財産を譲ることを「遺贈(いぞう)」といいます。
この遺贈を受ける人が、すなわち「受遺者」です。
● 遺贈の具体例
例えば、こんな内容の遺言があったとします。
「私の友人である山田一郎に、所有する江東区の土地を遺贈する」
「私の財産のうち300万円を、沖縄県那覇市にあるNPO法人○○へ寄付する」
このような場合、山田一郎さんやNPO法人○○が受遺者になります。
● 相続人に遺贈した場合はどうなる?
法律上の相続人(たとえば子ども)に対して「〇〇を遺贈する」と書かれていることもありますが、この場合は形式的には受遺者ではなく相続人としての扱いになります。
遺贈は基本的に「相続人以外の者に財産を与える場合」に使われる用語です。
3. 受遺者は誰でもなれる?法人もOK?
● 受遺者になれるのはどんな人?
法律上、受遺者になれる人の範囲はとても広く、誰でも(法人も含めて)なることができます。
受遺者になれる例:
- 友人、知人
- 内縁の配偶者
- お世話になった看護師さん
- ボランティア団体、NPO法人、宗教法人、地方自治体 など
一方で、制限される場合もあります。
たとえば、遺言能力のない子どもや、遺言を代筆した人物などに対しての遺贈は、無効となるケースもあります。
● 江東区や那覇市での実例
- 江東区在住の一人暮らしの高齢者が、近隣で世話をしてくれた人に財産を遺贈したいと遺言
- 那覇市の住民が、地元の動物保護団体へ財産の一部を寄付する遺言を作成
このようなケースでは、遺言書によって指定された相手が受遺者となります。
4. 受遺者として財産をもらうために必要なこと
受遺者になっても、すぐに自動的に財産を取得できるわけではありません。
一定の手続きや条件をクリアする必要があります。
● 遺言書の有効性の確認
まず、遺言書が法律に沿って有効に作成されたものかを確認する必要があります。
- 自筆証書遺言:家庭裁判所での「検認」が必要
- 公正証書遺言:すぐに効力発生(検認不要)
● 遺贈の種類
遺贈には2つの種類があり、それによって手続きが変わります。
包括遺贈(ほうかついぞう)
「財産の2分の1を遺贈する」など、割合で指定されているもの
→ 相続人とほぼ同じ立場になる。債務も引き継ぐ可能性あり
特定遺贈(とくていいぞう)
「この不動産を遺贈する」「現金500万円を遺贈する」など、特定の財産を指定
→ 指定されたものだけを受け取れる。債務は基本的に引き継がない
● 相続人の同意が必要なこともある
- 登記が必要な不動産を受け取る場合、登記手続きが必要になります。
- 相続人と受遺者でトラブルにならないよう、円満な遺贈には相続人の理解が重要です。
5. 相続人との関係|「遺留分」に注意
受遺者に遺贈を行う場合、注意しなければならないのが「遺留分(いりゅうぶん)」の存在です。
● 遺留分とは?
法律上の相続人に最低限保障されている取り分(権利)のことです。
配偶者や子、親などには、被相続人の意思にかかわらず、一定の財産を受け取る権利があります。
もし遺言によって全財産が第三者に遺贈されてしまった場合、相続人は「遺留分侵害額請求」を行って、取り戻すことができます。
遺留分を持つ相続人
- 配偶者
- 子
- 親(直系尊属)
遺留分がない相続人
- 兄弟姉妹
たとえば、相続人である子どもを無視して全財産を第三者に遺贈する遺言があったとしても、子どもは「遺留分侵害額請求」によって法的に取り戻すことが可能です。
6. まとめ 遺言と受遺者の活用で「想い」を形に
相続は「争族」にならないように進めることが大切です。そのなかで、遺言書と受遺者の制度を上手に活用することが、想いのある相続・財産承継の第一歩となります。
【今回のまとめ】
- 受遺者とは、遺言によって財産をもらう人(相続人以外が基本)
- 誰でも受遺者になれる(法人もOK)
- 遺贈の内容に応じて手続きや対応が異なる
- 相続人には遺留分があるため、バランスに配慮が必要
- 遺言書の作成や内容の確認が非常に重要
江東区や那覇市でも、少子高齢化が進むなかで、家族以外の人へ財産を託したい、寄付をしたいという方が増えています。遺言や受遺者の制度は、そうした想いを法的に確実に実現するためのツールです。