寄与分と遺留分の関係とは?わかりやすく解説【江東区・那覇市の方へ】

相続手続きや遺言に関わる中で、「寄与分(きよぶん)」や「遺留分(いりゅうぶん)」という言葉を耳にすることがあるかと思います。
これらはどちらも相続財産の分け方に深く関係していますが、それぞれ意味も役割も異なります。
そして、実際の遺産分割では「寄与分」と「遺留分」が複雑に絡み合い、トラブルの原因になることも少なくありません。

この記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市にお住まいの方に向けて、
「寄与分」と「遺留分」の基本的な仕組み、そしてその両者がどのような関係にあるのかについて、詳しく、わかりやすく解説していきます。


目次

まずは「寄与分」と「遺留分」の基本を押さえよう

寄与分とは?

寄与分とは、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、
他の相続人よりも多く相続財産を受け取ることができる制度です。

たとえば、

  • 長年にわたって親の介護をしてきた
  • 親の事業を無給または低賃金で支えた
  • 親の借金返済を肩代わりして財産を守った

といった場合に、本人の努力がなければ被相続人の財産は維持・増加しなかったと考えられるため、通常の相続分より上乗せされることが認められるわけです。

ただし、単なる親族間の通常の扶養義務(例:たまに病院に連れて行く、食事を作る程度)では寄与分は認められず、
財産上の効果が明確に認められる「特別の寄与」であることが必要です。

遺留分とは?

一方、遺留分とは、法律上、一定の相続人に最低限保証されている相続財産の取り分のことです。

対象となる相続人は、主に

  • 子ども
  • 配偶者
  • 直系尊属(親や祖父母)

です。兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

たとえば、被相続人が「全財産を第三者に譲る」という遺言を残していたとしても、
一定の相続人(子どもや配偶者など)は、自分の遺留分を侵害された場合に、「遺留分侵害額請求」という手続きを通じて取り戻すことができます。


寄与分と遺留分はどう関係しているの?

ここからが本題です。
寄与分と遺留分は、それぞれ別個に存在する制度ですが、実際の相続では密接に関係してきます。

簡単にまとめると、
寄与分は相続分の調整、遺留分は最低限の保障
という役割を持っています。

具体的に見ていきましょう。

遺産の分け方における寄与分の影響

遺産分割において、寄与分が認められる場合には、まず寄与分を相続財産から控除して考えます。
寄与分にあたる部分は、貢献した相続人があらかじめ取得する扱いになるのです。

【例】
被相続人の遺産:3000万円
相続人:子A(被相続人の介護を10年以上担当)、子B(ほとんど関与なし)
寄与分として子Aに500万円が認められた場合

まず、遺産総額3000万円から寄与分500万円を引きます。
→残り2500万円を、相続分(仮に1/2ずつ)で分ける。

つまり、

  • 子A:寄与分500万円+相続分1250万円=合計1750万円
  • 子B:相続分1250万円

となります。

遺留分計算における寄与分の扱い

では、遺留分を考える場合はどうでしょうか?

実は、寄与分は遺留分算定の際には考慮されません
遺留分は、被相続人の遺言や生前贈与などを含めた「本来の財産額」を基に計算されるため、
寄与分を差し引かずに、あくまでも相続開始時点での財産全体から割り出すのです。

つまり、寄与分はあくまで「相続人間の配分の調整」であり、
「遺留分」という最低保証には影響を与えないということです。

【注意点】
遺留分を侵害しているかどうかを判断する際は、寄与分を考慮しないため、
寄与分を取得した相続人でも、他の相続人から遺留分侵害額請求をされるリスクはあります。


寄与分と遺留分が衝突するケースとは?

実務上、寄与分と遺留分の関係でトラブルになる代表例を紹介します。

寄与分を多く主張したら、他の相続人から遺留分侵害額請求された

たとえば、親の介護を長年担った子が「寄与分」として多く遺産を取得した結果、
他の子が「自分の遺留分が侵害された」として請求してくるケースです。

寄与分が正当だと思っていても、他の相続人から遺留分侵害額請求がなされれば、
その請求に応じるか、家庭裁判所で争うことになります。

遺言によって特定の相続人に全財産を遺贈→他の相続人が遺留分を主張

被相続人が「介護してくれた子に全財産を渡す」といった遺言を残していた場合でも、
他の相続人には遺留分が保障されています。

このため、たとえ寄与分があっても、遺留分を無視する遺言内容だと、
遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。


まとめ 寄与分と遺留分、両方を意識した相続対策を

寄与分と遺留分は、いずれも相続人の公平や被相続人の意志を実現するための大切な制度です。
しかし、その趣旨や役割が異なるため、実際の遺産分割では思わぬトラブルに発展することもあります。

特に、

  • 介護や生前の支援をしてきた相続人がいる場合
  • 特定の相続人に財産を集中させたい場合 には、寄与分と遺留分の両方を意識した遺言や生前対策を行うことが重要です。

また、遺産分割協議において寄与分が認められない、遺留分侵害額請求を受けたといった場合には、
家庭裁判所への調停申立ても視野に入れて冷静に対応することが求められます。


当事務所(行政書士見山事務所)では、東京都江東区・沖縄県那覇市を中心に、相続手続き・遺言書作成・寄与分や遺留分問題に関するご相談を承っております。
将来のトラブルを未然に防ぐためにも、早めのご相談・準備をおすすめします。

(※この記事は一般的な解説です。個別の事案については専門家にご相談ください。)

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