
近年、空撮や測量、点検、農薬散布など、さまざまな分野で活用されているドローン。特に東京都江東区のような都市部や、沖縄県那覇市のような観光・自然豊かな地域では、業務目的のドローン飛行のニーズが高まっています。
しかし、人口集中地区や空港周辺などの「飛行禁止空域」や、人や建物に近接して飛行する「飛行方法」に該当する場合には、国土交通省への「飛行許可・承認申請」が必要です。
この記事では、飛行許可の「目的別の種類」と、許可が適用される「飛行範囲」について、行政手続きの専門家として丁寧に解説します。
1.ドローン飛行の「目的」は4種類に分類
国土交通省のドローン飛行許可申請では、飛行目的によって申請の取り扱いが変わってきます。目的は主に以下の4つに分類されます。
(1)業務目的
建築物の点検、イベントの空撮、測量、インフラ設備の確認、農薬散布など、報酬が発生する仕事としての飛行です。申請の多くはこの「業務目的」に該当します。
- 包括申請が可能:日本全国を対象に、広範囲かつ反復的な飛行が認められる。
- 最大1年間の許可取得も可能。
(2)趣味・レジャー(業務外)
いわゆる「ホビー飛行」と呼ばれるもので、個人の趣味や遊びのために飛ばす飛行です。
- 包括申請はできません。
- 都度、飛行場所を指定した個別申請が必要になります。
(3)訓練目的(業務上)
企業内やドローンスクールなどでの操作訓練・技量向上のための飛行です。
- 飛行範囲・期間を指定して申請します。
- 実務を見据えた訓練である必要があります。
(4)研究開発・実験
新しいドローンの機体開発や飛行実験など、技術開発を目的とした飛行です。
- 試験飛行や屋外実証などが含まれます。
- 試験内容や場所に応じて、具体的な飛行計画の提出が求められます。
2.包括申請と個別申請の違い
◆ 包括申請とは?
「業務目的」の場合に限り申請できる特別な申請方法で、一定の条件を満たせば、日本全国を対象に、繰り返し行う飛行について一括して許可を取得することができます。
- よくある例:建物点検業務や空撮業務を全国で行う会社。
- ドローンの運用効率が大幅に向上します。
◆ 個別申請とは?
「趣味」や「研究目的」の場合、または特定の場所・内容に限られる飛行では、個別の計画に基づいた申請が必要になります。
- 具体的な飛行場所、日時、機体、操縦者を明記。
- 補助者の配置や周囲環境への配慮が必要。
3.許可される「飛行期間」について
飛行許可の有効期間は、原則として3ヵ月以内とされていますが、実際の運用においては、以下のような取り扱いがあります。
◆ 原則は「3ヵ月」
単発的・短期的な飛行の場合、飛行日が決まっている案件などでは3ヵ月以内で許可されます。
◆ 最大「1年間」の許可も可能
継続的な業務利用が見込まれる場合(例:定期的な点検、複数の現場での使用)には、最大1年間の包括許可が出ることもあります。
- 申請時に「年間スケジュール」「業務内容の継続性」が判断材料になります。
- 年度単位での許可更新が一般的です。
4.飛行範囲の設定について
申請における「飛行範囲」の設定は、飛行の自由度や許可の取り扱いに大きく影響します。大きく分けて以下の2通りがあります。
(1)飛行経路を特定しない場合(全国包括許可)
- 業務目的の包括申請に限り選択可能。
- 最大で「日本全国」の空域が飛行許可対象となります。
- 市区町村単位や都道府県単位でも申請可能ですが、範囲を絞るメリットはほとんどありません。
→ 例:沖縄全域で空撮事業を行う業者、東京都内で建物調査を行う業者など。
(2)飛行経路を特定する場合(個別許可)
- 趣味目的や研究開発飛行などでは、飛行場所の地図・座標などを添付し、具体的な範囲を指定する必要があります。
- 関係各所の調整や補助者の配置など、より厳密な運用が求められます。
→ 例:江東区内の特定ビル上空での研究飛行、那覇市内の公園上空での趣味飛行など。
5.東京都江東区・沖縄県那覇市で注意すべきポイント
◆ 江東区の場合
- 人口密集地(DID)に該当する地域が多く、ほとんどの場所で「飛行禁止空域」にあたるため、飛行許可が必須となります。
- 高層建築物が多く、建物との距離を十分確保する必要あり。
- 公園や河川敷はドローン禁止の場所もあるため、都や区の管理者への事前確認が不可欠です。
◆ 那覇市の場合
- 空港周辺の規制が厳しく、那覇空港の進入路付近では飛行禁止。
- 海岸部での飛行も、観光客や釣り人が多く、第三者との距離確保が重要。
- 自然保護区に該当するエリアでは、別途環境省などへの許可が必要なこともあります。
まとめ
ドローンを飛ばすには、目的と飛行範囲に応じて、適切な申請方法を選ぶことが重要です。
- 「業務目的」であれば、包括申請で全国許可を取得するのが効率的。
- 「趣味」や「訓練」「研究開発」では、飛行場所を特定した個別申請が必要。
- 飛行期間は最大1年間まで可能なので、長期運用を予定している場合は申請時にしっかりと説明を行いましょう。
- 江東区・那覇市ともに、人口密集地や空港周辺などの規制が多いため、事前確認と慎重な計画が不可欠です。
行政書士として、正確な申請と安全な運用体制の構築をサポートしています。ドローンの飛行許可申請について不安がある方は、制度をよく理解し、正しい手続きを踏んで、安全に空の利活用を進めていきましょう。