遺言書が見つからないときの対応 あるかもしれない場合にすべきこと

相続手続を進めるうえで、まず確認すべきものの一つが「遺言書」です。
遺言書があるかどうかによって、相続人の構成や財産の分け方が大きく変わるため、相続の出発点ともいえる重要な資料です。

ところが、被相続人(亡くなった方)が遺言を残していたかどうかわからず、遺言書が見つからないまま時間だけが過ぎてしまうというケースが少なくありません。

この記事では、「遺言書があるかもしれないが見つからない」という状況に直面したときに取るべき対応について、東京都江東区・沖縄県那覇市を対象に、実務的な視点で解説します。


目次

1.遺言書が見つからないと相続はどう進む?

遺言書が存在しない(または見つからない)場合、相続は民法上の法定相続に従って進められます。つまり、法定相続人の間で相続分に応じて分けるか、話し合い(遺産分割協議)によって分配方法を決めることになります。

しかし、もし後になって遺言書が見つかった場合、すでに進めた手続が無効になることもあるため、相続を急ぐ前にまず「遺言書がある可能性」を十分に確認する必要があります。


2.まず確認すべき3つの遺言の種類

遺言書といっても、実は大きく分けて3つの形式があります。それぞれの探し方・確認方法が異なるため、まずは種類を理解しておきましょう。

(1)自筆証書遺言

被相続人が全文を手書きで作成した遺言です。法務局で保管されている場合もあります。

(2)公正証書遺言

公証人のもとで作成された公文書形式の遺言で、正確性・信頼性が高い形式です。全国の公証役場に記録が残っています。

(3)秘密証書遺言

本人が作成した遺言書を封書にして、公証人と証人の立ち会いのもとで「遺言書が存在すること」を証明してもらうもの。内容は他人に明かされません。


3.遺言書が見つからないときに探すべき場所

被相続人の自宅

もっとも基本的な探し方は、被相続人の自宅の中をくまなく確認することです。以下のような場所に注意しましょう。

  • 書斎の引き出しや書類棚
  • 金庫やロッカー
  • 本の間やファイルの裏側
  • 仏壇の引き出し
  • 冷蔵庫や冷凍庫(実際に保管されていた例もあります)

特に、自筆証書遺言の場合、身近なところにしまわれていることが多く、見落とされやすいのが特徴です。

法務局の「自筆証書遺言保管制度」の確認

2020年から始まった制度で、本人が法務局に自筆証書遺言を預けることができるようになりました。

この制度を利用しているかどうかは、全国どこの法務局でも照会できます
必要書類をそろえ、最寄りの法務局に「遺言書情報証明書の請求」をすることで確認が可能です。

公証役場での照会(公正証書遺言・秘密証書遺言)

公正証書遺言や秘密証書遺言については、「日本公証人連合会」のデータベースで管理されています。

相続人または利害関係人であれば、公証役場で次のような手順で照会ができます。

照会に必要なもの(一例)

  • 被相続人の死亡を証明する戸籍(除籍)謄本
  • 相続人であることがわかる戸籍
  • 照会申請書(公証役場で取得可能)
  • 本人確認書類(運転免許証など)

東京23区内であれば、【東京公証人会】、那覇市であれば【那覇公証役場】が管轄になります。


4.見つかってもすぐに開封してはいけない遺言書とは?

もし自宅などから封印された遺言書(封筒に封がされているもの)が見つかった場合、勝手に開けてはいけません。これは、自筆証書遺言や秘密証書遺言の可能性があるからです。

家庭裁判所での「検認」が必要

封印された遺言書を開けるには、まず家庭裁判所に「検認の申立て」をする必要があります。検認とは、遺言書が真正なものであるかどうか、開封時の状態を記録するための手続です。

無断で開けた場合のリスク

遺言書を家庭裁判所の検認前に開封すると、民法により5万円以下の過料の対象となることがあります。また、遺言の有効性に疑義が生じる恐れもあるため、慎重に対応すべきです。


5.どうしても見つからなかった場合はどうするか?

十分探しても、また法務局や公証役場でも確認できず、「遺言書が存在しない」と判断せざるを得ない場合は、以下の流れで相続手続を進めます。

法定相続による遺産分割協議

相続人全員で集まり、誰がどの財産を相続するかを話し合います。これを遺産分割協議といい、協議がまとまれば「遺産分割協議書」を作成し、署名・押印します。

この協議書をもとに、不動産の名義変更や預貯金の解約・払戻しなどが可能となります。


6.トラブル回避のためのアドバイス

「遺言があるかも」の話が出ていたら、慎重に動く

被相続人が生前に「遺言を書いた」などと話していた場合は、たとえ見つからなくても調査を尽くした証拠を残すことが大切です(照会の記録や捜索メモなど)。後日、第三者が「遺言書を持っている」と主張する可能性があるためです。

遺品整理のプロに依頼するのも手

財産の規模が大きい、または遠方での捜索が難しい場合は、遺品整理業者や専門家のサポートを受けるのも一つの方法です。実務に慣れている業者であれば、遺言書や重要書類の見つけ方にも習熟しています。


7.まとめ 遺言書が「ない」のか「見つからない」のかが重要

遺言書があるかどうかの確認は、相続手続を円滑に進めるうえで欠かせません。

  • 見つからない=存在しないとは限らない
  • 法務局や公証役場への照会は必ず行う
  • 自宅や金庫、思わぬ場所もくまなく確認
  • 封印された遺言書は絶対に開封せず家庭裁判所へ
  • 最終的に見つからなければ、法定相続により協議を行う

相続の手続には期限があるもの(例:相続放棄の3か月)もあるため、遺言書の有無に関わらず、できるだけ早く行動を開始することが大切です。

東京都江東区や沖縄県那覇市にお住まいで、「遺言書が見つからないが、どう進めればいいかわからない」とお悩みの方は、無理に自己判断せず、早めに専門家に相談されることをおすすめします。

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