建設業許可が不要な「軽微工事」とは?請負契約で注意すべき実務ポイント

建設業を営む上で、「自分の工事は建設業許可が必要なのか?」「軽微工事に該当するのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。
建設業許可は原則としてすべての建設工事を行う際に必要ですが、一定の範囲の軽微な工事については許可が不要とされています。

しかし、この「軽微工事」という概念を誤解したまま契約を結んでしまうと、無許可営業に該当するリスク契約トラブルを招くおそれがあります。

この記事では、建設業許可制度における軽微工事の定義と、請負契約を締結する際に注意すべきポイントを、東京都江東区および沖縄県那覇市の実務事情を踏まえて詳しく解説します。

目次

1. 「軽微工事」とは建設業法上の許可不要工事

建設業法では、すべての建設工事を請け負うには原則として建設業許可が必要です。
ただし、次のような一定の小規模な工事(軽微な工事)については、例外的に許可を受けずに行うことができます。

(1) 建築一式工事の場合

以下のいずれかに該当する工事は軽微工事とされます。

  • 1件の請負代金が**1,500万円未満(税込)**の工事(ただし、建築一式工事に該当するもの)
  • 延べ面積が150㎡未満の木造住宅の新築工事

つまり、住宅のリフォームや小規模な増改築、内装改修などであれば、請負金額が1,500万円未満であれば許可が不要な場合もあります。

(2) 建築一式工事以外の工事(専門工事)の場合

建築一式工事以外の専門工事(例:電気工事、塗装工事、内装仕上工事など)については、次の基準で軽微工事とされています。

  • 1件の請負代金が**500万円未満(税込)**の工事

この500万円には、材料費もすべて含まれます。
たとえば、工事代金が450万円でも、材料費込みで総額520万円になる場合は軽微工事ではなくなり、許可が必要です。

2. 軽微工事でも注意すべき実務上のポイント

「軽微工事だから許可が不要」とはいえ、すべての面で制限がないわけではありません。
請負契約を結ぶ際には、以下のような点に十分注意する必要があります。

(1) 金額の見積もり方法に注意

工事代金が軽微工事の上限を超えるかどうかは、「1件あたりの請負金額」で判断されます。
このため、複数の契約に分けて上限を下回るように見せかける行為は、建設業法違反に該当する可能性があります。

たとえば、同じ建物の外壁塗装を2回に分けて契約し、それぞれ250万円に設定しても、実質的に1件の工事であれば500万円を超えるとみなされ、無許可営業と判断されるおそれがあります。

(2) 元請業者との関係

軽微工事を請け負う下請業者が許可を持っていない場合、元請業者が許可業者であっても、発注金額が500万円を超える工事を発注することはできません。

元請業者が無許可業者に500万円以上の工事を発注した場合も、発注者側が法令違反を問われるリスクがあるため、元請・下請双方が許可の要否を正確に判断する必要があります。

(3) 請負契約書の作成は必須

軽微工事であっても、建設業法第19条に基づき、請負契約書を作成することが求められます。
特に、契約金額が少額であっても、工期、仕様、支払条件などを明確化しておくことが後のトラブル防止につながります。

口頭契約や簡易的な見積書だけで工事を行うと、工事内容や瑕疵の有無をめぐるトラブルに発展するリスクがあります。
東京都や沖縄県では、消費者トラブルの相談件数の中でも「リフォーム契約」に関するものが多く、契約書の不備が原因になるケースも少なくありません。

(4) 請負代金に「消費税」「材料費」「人件費」を含めて判断

軽微工事の判断基準である500万円・1,500万円には、
消費税、材料費、運搬費、外注費など、工事にかかる一切の費用が含まれる点に注意が必要です。

たとえば、工事費450万円、材料費80万円、消費税が含まれていない場合、総額で500万円を超えることになります。
そのため、契約時には「税込総額」で判断することが重要です。

3. 軽微工事と請負契約に関するよくあるトラブル事例

軽微工事に関しては、許可不要という気軽さから安易に契約を進めてしまい、後にトラブルとなるケースが少なくありません。
代表的な事例をいくつか見てみましょう。

事例1:金額の誤認による無許可営業

東京都内で塗装工事を請け負った個人事業主が、材料費を別会計にして請負金額を480万円として契約。
実際の総額は530万円だったため、行政から「無許可営業」に該当すると指摘を受けたケースがあります。

軽微工事の金額は「総額」で判断されるため、請負金額の見積もり段階で慎重な計算が必要です。

事例2:契約書未作成による支払いトラブル

沖縄県那覇市で内装改修工事を請け負った業者が、口頭で契約を締結。
完了後に「追加工事は頼んでいない」と発注者に支払いを拒否され、法的手続きに発展した事例があります。

軽微工事でも必ず書面契約を行うことで、工事範囲や支払条件を明確にし、トラブルを防ぐことができます。

事例3:下請発注時の許可要否の誤認

元請業者が、軽微工事と誤解して許可を持たない下請に520万円の外構工事を発注。
結果的に発注者側も行政指導を受けた例があります。

→ 元請・下請の双方で、請負金額の判断基準を正しく理解しておくことが不可欠です。

4. 軽微工事でも適用される法令・安全管理義務

軽微工事は建設業許可が不要なだけであり、
その他の法令(労働安全衛生法、建築基準法、道路占用法など)が免除されるわけではありません。

特に、現場で労働者を使用する場合には、
安全管理体制や労災保険の加入義務が課せられます。

また、軽微工事であっても工事内容によっては施工管理技士などの資格者配置が求められる場合があり、
許可不要だからといって完全に自由ではない点に注意が必要です。

5. 東京都・沖縄県での軽微工事の実務的注意点

東京都や沖縄県では、建設業許可に関する相談窓口で「自社の工事が軽微工事に該当するか」を確認できる場合があります。

  • 東京都:東京都都市整備局 建設業課(新宿区)
  • 沖縄県:土木建築部 技術・建設業課(那覇市泉崎)

特に、県外業者が沖縄で工事を行う場合、
工事規模や工期の考え方に地域差があるため、事前相談を行うことでリスクを回避できます。

6. まとめ  軽微工事でも「契約と法令順守」は必須

軽微工事は、建設業許可を持たない個人事業者や小規模工事業者にとって、重要な活動範囲です。
しかし、許可が不要である一方、請負金額の誤認や契約書の不備によって法令違反やトラブルに発展することもあります。

したがって、

  • 工事金額の総額を正確に把握する
  • 必ず書面による契約を交わす
  • 元請・下請双方で許可の要否を確認する
    といった基本を徹底することが大切です。

東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む皆様においても、軽微工事を行う際は、
「小さな工事だから大丈夫」と油断せず、法令を遵守した適正な契約・施工を心がけることが、信頼される事業経営につながります。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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