遺産を相続人以外の人、あるいは学校や福祉法人に譲渡したい場合、遺言を作成することで実現することができます。遺言による財産の譲渡を「遺贈」と呼びます。遺贈には、相続人でない第三者や法人を含めて、広く受け取ることができるという特徴があります。ここでは、遺贈の方法と注意点について詳しく解説します。
遺贈の基本—特定遺贈と包括遺贈
遺贈には、「特定遺贈」と「包括遺贈」の2つの種類があります。
特定遺贈とは、特定の財産を指定して遺贈する方法です。たとえば、「○○銀行の預金〇〇万円」や「○○市の土地100㎡」など、具体的な財産を指定して遺贈します。この方法では、遺贈される財産が明確に特定されているため、受遺者がその財産を確実に受け取ることができます。
包括遺贈とは、遺産の一定割合を指定して遺贈する方法です。たとえば、「遺産の1/3」などのように、遺産全体の中から一定の割合を指定します。この方法では、具体的な財産が特定されていないため、遺産がどのように分配されるかに応じて受遺者の取得する財産の内容が決まります。
遺贈は、受遺者の承諾なしに行うことができます。事前に受遺者との合意は必要ありませんが、受遺者は遺贈を放棄することが可能です。
特定遺贈と包括遺贈の放棄手続き
特定遺贈の場合、受遺者は家庭裁判所に申し立てることなく自由に放棄ができます。しかし、相続人が相続財産を特定できないおそれもあるため、受遺者に対して遺贈の放棄を催促することができます。
包括遺贈の場合、受遺者は相続人と同じ立場に立つため、遺贈を受けることを知った時から3カ月以内に家庭裁判所に手続きをしなければなりません。この期間内に手続きをしないと、遺贈を放棄することができなくなります。
遺贈する場合の注意点
遺贈には自由な意志で財産を処分する権利がありますが、以下の点に注意する必要があります。
- 遺留分の侵害: 配偶者や子などの法定相続人には、遺留分という一定の割合について相続する権利があります。遺贈によりこの権利が侵害される場合、侵害された相続人は遺留分侵害額請求が可能です。したがって、遺言を作成する際には、遺留分を考慮して遺贈の内容を決める必要があります。
- 公序良俗に反する遺贈: 遺言で行う遺贈は、公序良俗に反してはなりません。例えば、愛人関係にある者に対する遺贈などは、判例で無効とされています。このような遺贈は法的に認められません。
- 負担付き贈与: 遺贈には、一定の義務や負担を付けることができます。たとえば、「母の面倒を生涯看ることを条件に、土地家屋を長女に相続させる」という形です。遺贈された者が義務を怠った場合、他の相続人から遺言の取消しを家庭裁判所に請求される可能性があります。
具体的な手続き—江東区と那覇市の例
江東区や那覇市にお住まいの方が遺贈を検討する際、地域の公証役場や法務局に相談することをお勧めします。これにより、地域の法的要件や手続きについて具体的なアドバイスを受けることができます。例えば、江東区では行政書士会の無料相談で相続や遺言に関する相談が可能ですし、那覇市でも同様な専門的なサポートを受けることができます。
遺言を通じて相続人以外の人に遺産を譲渡することは、あなたの意志を確実に反映させる有効な方法です。特定遺贈や包括遺贈の方法を用い、遺贈に際しての注意点を踏まえた上で、適切な遺言を作成することが大切です。江東区や那覇市にお住まいの方々には、地域の専門家や公証役場に相談しながら、安心して遺言を作成し、希望通りの遺産譲渡を実現してください。