建設業許可における経営業務の管理責任者とは、その資格要件について

建設業許可を取得・維持するために欠かせない要件の一つが、「経営業務管理責任者の常勤性」です。経営業務管理責任者とは、適切な経営管理ができる能力を持つ人物であり、建設業許可制度の根幹とも言える発注者の保護を目的とした存在です。この記事では、那覇市と江東区で建設業に携わる方々に向け、経営業務管理責任者の役割、常勤性の証明方法、最近の要件緩和についてわかりやすく解説します。

経営業務管理責任者の役割と求められる能力

経営業務管理責任者には以下の3つの能力が求められます。

  1. 適正な財務管理能力:会社が倒産することなく資金調達、資材購入、請負契約を行い、工事を完遂させる力です。例えば、工事の予算管理や資金繰り、支払いや収支の管理が含まれます。
  2. 適正な労務管理能力:工事現場で働く技術者や技能者を適切に確保し、配置・管理できる能力です。労務の適正管理がなければ、工事の安全性や品質が損なわれ、発注者にリスクを与える可能性があります。
  3. 不良不適格業者の排除:暴力団関係者や施工能力のない事業者など、発注者に損害を与える可能性のある業者の排除を適切に行う能力です。適正な業者と協力関係を築くための判断力も必要とされます。

これらの役割を担う経営業務管理責任者は、建設業の業務を総合的に管理する役割を持ち、発注者の信頼を守るための重要な立場にあります。

常勤性の要件とその証明方法

経営業務管理責任者としての要件には、「常勤性」が必要です。常勤性のある経営業務管理責任者は、許可申請事業者の役員などとして主たる営業所に毎日出勤し、業務に従事している状態が求められます。以下に具体的な要件と証明方法を解説します。

常勤性の証明方法:健康保険証

経営業務管理責任者の常勤性を証明するためには、健康保険証が一般的な証明書類として用いられます。具体的には、申請者が加入する健康保険証(個人事業の場合は確定申告書と国民健康保険証)を提出することで、常勤であることが証明されます。常勤とは、休祝日を除き毎日所定の時間、申請会社で勤務していることを意味します。

常勤性が認められないケース

常勤性が否定されるケースもあります。次に挙げる条件に該当する場合、健康保険証の提出があっても常勤性が認められない場合があります。

  • 遠距離に住み通勤が不可能な場合:営業所から遠く離れた場所に住んでいると、毎日の通勤が実質的に困難と判断されます。
  • 他に個人事業を営んでいる場合:副業として別の個人事業を営んでいると、常勤性が疑われます。
  • 他社の代表取締役や社員として在籍している場合:他社の役職に就いていると、その会社での常勤性が優先されるため、申請事業所での常勤性は認められません。ただし、共同代表であって他社に非常勤としての在籍であれば常勤性が認められるケースもあります。

これらの条件を確認してから申請することで、審査でのトラブルを回避しやすくなります。

経営業務管理責任者の要件と経験条件

経営業務管理責任者になるには、一定の経験が求められます。具体的には、申請者が法人であれば常勤の役員の一人が、個人事業主であれば本人または支配人のうちの一人が、以下のいずれかに該当していることが必要です。

  1. 建設業での役員等としての経験が5年以上あること
    • 建設業における役員経験が5年以上あれば、経営業務管理責任者の資格要件を満たします。
    • 証明には登記事項証明書や確定申告書、変更届出書の副本などが用いられます。
  2. 経営業務執行の委任を受け5年以上経営業務を管理・執行した経験があること
    • 取締役会で決議され、具体的な権限委譲を受けた役員で5年以上の経歴があれば、要件を満たします。
    • 取締役会議事録などの書類で、役員としての実績が証明されます。
  3. 経営業務管理責任者の補助業務を6年以上経験したこと
    • 経営業務管理責任者に準ずる立場で6年以上従事した場合も要件を満たします。
    • この場合の証明は、組織図や定款、稟議書などを使用し、行政庁との協議が必要です。

経営体制としての要件緩和と改正点

2020年10月1日の建設業法改正により、経営業務管理責任者の要件は緩和され、組織体制としての経営能力が認められるようになりました。この改正により、必ずしも個人の実績だけでなく、企業全体の体制としての経営能力も評価されるようになり、特に以下の変更が行われました。

  • 29業種ごとの建設業経験が求められていたものが、建設業全般での経験に統一されました。
  • 建設業に関する経営体制を有する者として、財務管理・労務管理・運営業務の経験がそれぞれ5年以上ある補佐役を任命すれば、経営業務管理責任者としての要件を満たすことができるようになりました。

この変更は、新規参入を後押しする目的で行われ、建設業界での人手不足問題に対応するためでもあります。

他社での経験者を迎え入れる方法

他社で経営業務管理責任者としての経験を積んだ人材を取締役として迎え入れることも可能です。こうすることで、経営業務管理責任者の経験不足を補うことができます。さらに、外国企業での役員経験も、国土交通大臣の認定を受けることで国内での経験と同様に扱うことが可能です。外国企業での役員経験が認められるには、公証済みの書類と翻訳書類を揃える必要があり、申請には数ヶ月を要する場合がありますので早めの準備が推奨されます。

経営業務管理責任者に必要な継続的な体制の維持

経営業務管理責任者は許可取得時だけでなく、許可の維持のためにも欠かせない要件です。以下の点に注意して、体制を整えましょう。

  1. 継続的に要件を満たす人材の確保
    予備候補者を用意し、育成しておくと、要件を満たす人が不在になった場合のリスクを軽減できます。
  2. 社内の役割分担の見直し
    特に財務・労務・運営業務に精通する人材を育成し、必要に応じて体制を強化することが重要です。

許可申請や体制維持に対するアドバイス

経営業務管理責任者の役割や常勤性、要件の緩和について解説しましたが、実際の申請や証明には、行政庁や専門家の協力が必要です。那覇市や江東区で建設業許可を目指す場合には、ぜひ専門家に相談し、確実に許可取得・維持を行うようにしましょう。

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