遺言執行者の役割とは、その業務内容や遺言執行者の選び方について

遺言執行者とは、被相続人が遺した遺言をもとに、その内容を実行する立場にある人を指します。遺言がスムーズに実行されるためには、遺言執行者の存在が役立ちますが、実際のところ、遺言執行者にはどのような役割が求められるのでしょうか。また、遺言執行者が必要な場合やその選任方法についても疑問を持たれる方が多いかと思います。本記事では、遺言執行者が担う業務内容やその選び方、依頼すべきかどうかなど、詳しく解説します。

1. 遺言執行者とは?その必要性について

遺言執行者とは、遺言の内容を相続人に代わって執行するために選任される人のことを言います。遺言において財産の分配方法や相続人の範囲が定められている場合、その内容が確実に実行されるように管理・調整を行う重要な役割です。
必ずしも全ての遺言で遺言執行者を設ける必要はありませんが、特定の条件を満たす場合は、遺言執行者を選任することが法的に求められます。例えば、財産分配だけでなく、遺産の管理が求められる場合や未成年の相続人がいる場合などが該当します。

2. 遺言執行者の選任方法

遺言執行者は主に以下の方法で選任されます。

  1. 遺言者が指定する
    被相続人が遺言の中で執行者を明確に指定することができます。指定された人が遺言執行者として就任する場合、遺言内容に沿ってその職務を遂行します。
  2. 相続人間の合意により選任する
    遺言に執行者の指定がない場合、相続人同士で話し合い、遺言執行者を選任することが可能です。この合意は家庭裁判所の許可を経て正式に執行者としての資格が付与されます。
  3. 家庭裁判所の選任
    必要に応じて家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合もあります。この場合、家庭裁判所への申請手続きが必要です。選任される遺言執行者は、弁護士や司法書士などの専門家が務めることが多く、相続手続きが円滑に進むメリットがあります。

3. 遺言執行者の権利と義務

遺言執行者には、遺言内容を確実に実行するために必要な権利と義務が法律で認められています。

民法による権利義務の規定

民法第1012条では、遺言執行者が「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為」を行う権利があるとされています。この権利には、以下のような具体的な行為が含まれます。

  • 銀行口座の名義変更:遺産に含まれる銀行口座の名義変更や解約手続きを行います。
  • 不動産の名義変更:被相続人が所有していた不動産の名義を相続人に変更する手続きを行います。
  • 株式や証券の名義変更:株式や証券が遺産に含まれている場合、名義変更や譲渡手続きを行います。

また、遺言執行者は、相続財産の管理に必要な範囲で他者に権利を譲渡することはできません。遺言内容の全てを完了させる義務があり、途中で辞任する場合は正当な理由が必要です。

4. 遺言執行者の具体的な業務内容

遺言執行者の業務は、大まかに以下のステップで進行します。

(1)就任通知書の作成・交付

遺言執行者に指定された場合、まず承諾するかどうかを検討します。承諾する場合は就任通知書を作成し、相続人に通知します。通知書には、遺言執行者が承諾した旨やその就任日が記載されます。

(2)相続財産の調査

被相続人が遺した財産の内容を把握するため、預金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて調査します。相続人間でのトラブルを防ぐためにも、徹底した調査が欠かせません。

(3)相続人の調査

相続財産の調査と並行して、相続人の確認も行います。戸籍謄本や住民票を収集し、相続人が誰であるかを特定しなければなりません。遺言執行者として相続人を把握することは、遺言内容を正確に実行するための基礎となります。

(4)財産目録の作成・交付

相続財産の調査と相続人の特定が完了したら、財産目録を作成します。財産目録には、被相続人が遺したすべての財産が記載され、遺言書の写しと共に相続人へ交付します。

(5)遺言内容の実行

財産目録の交付後、遺言の内容に従って財産の引き渡しや名義変更を行います。これにより、遺産分配が円滑に進みます。

(6)任務完了後の報告

遺言執行者としての任務が完了したら、任務完了報告書を作成し、相続人に通知します。報告書には、遺言の内容をすべて実行した旨や相続財産の最終的な状況が記載されます。

5. 専門家への依頼を検討するべきか?

遺言執行者の業務は多岐にわたり、各種書類の作成や名義変更手続きなど多くの手間がかかります。そのため、指定された人が時間的余裕を持てない場合や業務遂行が難しいと感じる場合は、専門家に依頼することも一つの選択肢です。弁護士や司法書士、行政書士に依頼することで、専門知識と手続きを生かして確実かつ迅速に相続手続きが行えます。特に遺産相続に利害関係のない専門家が遺言執行者として関わることで、相続人間の対立を避ける効果も期待できます。

ただし、専門家に依頼する際には報酬が発生しますので、遺言者が生前に報酬の支払い方法を明記しておくことが望ましいです。報酬額についても事前に相続人と協議しておくと、後々のトラブルを防ぐことができます。

6. まとめ 遺言執行者としての準備と判断が重要

遺言執行者の業務は多岐にわたりますが、相続手続きを円滑に進めるためには重要な役割を担います。財産調査や名義変更、遺言内容の実行など、相続人にとってもメリットが多いですが、業務量が多いため自身で執行が難しい場合は専門家への依頼も検討すると良いでしょう。

沖縄県那覇市や東京都江東区にお住まいの方も、遺言や相続に関するご不安があれば、専門家に相談することで安心して相続手続きを進めることができます。

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