特定の財産を特定の人に遺贈(特定遺贈)するときの注意点について

目次

~相続トラブルを避けるための実務ポイントとは~

遺言書を作成する際、「自宅の土地と建物は長男に、預金は次男に」「長年お世話になった知人に100万円を」といったように、特定の財産を特定の人に渡す内容を盛り込むことがあります。このような形の遺贈は「特定遺贈」と呼ばれ、遺言者の意思を明確に反映できるというメリットがあります。

しかし、特定遺贈にはいくつかの落とし穴があり、注意しないと相続人間のトラブルを引き起こす可能性もあるため、慎重な対応が必要です。

本記事では、江東区や那覇市などで相続手続きを検討されている方に向けて、「特定遺贈」の概要、よくある注意点、実務での対処法について、わかりやすく解説いたします。

1.特定遺贈とは?

特定遺贈とは、被相続人が遺言で「特定の財産」を「特定の人」に遺贈することをいいます。

具体例

  • 「那覇市〇〇町の土地を長男〇〇に相続させる」
  • 「江東区〇〇のマンションを姪〇〇に遺贈する」
  • 「〇〇銀行の定期預金100万円を親友〇〇に贈る」

このように、財産の内容が明確に指定されているものが「特定遺贈」です。

※これに対して、相続財産の一定割合を指定して遺贈する場合は「包括遺贈」といいます(例:「全財産の2分の1を〇〇に遺贈する」)。

2.特定遺贈の注意点①

実在しない・処分済みの財産は無効

遺言書に「那覇市の土地を遺贈する」と記載していても、被相続人が生前にその土地を売却していた場合、遺贈は無効になります。これは、遺言の対象財産が存在していなければ実行できないためです。

対策

財産の変動があることを見越して、遺言書の定期的な見直しを行うことが大切です。特に不動産を対象とした遺贈は、売却や相続税対策で動かす可能性があるため、状況が変わった際には必ず内容の見直しを検討しましょう。

3.特定遺贈の注意点②

登記や名義変更に実務的手間がかかる

特定遺贈を受けた人(受遺者)は、その財産を取得するために、法務局への登記申請や銀行での手続きを行う必要があります。その際、相続人全員の協力や書類提出が必要になるケースもあり、実務的に煩雑です。

特に不動産の名義変更登記には、以下の書類が必要です。

  • 被相続人の戸籍一式(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍
  • 受遺者の住民票
  • 遺言書(公正証書または検認済の自筆証書)
  • 遺言執行者の就任証明書(任意)

対策

登記や名義変更などの手続きに不安がある場合は、行政書士や司法書士のサポートを受けることが有効です。また、遺言執行者を事前に指定しておけば、手続きを一任でき、受遺者や相続人の負担を軽減できます。

4.特定遺贈の注意点③

遺留分を侵害していないか要確認

遺言によって財産の大部分を他人や特定の相続人に遺贈した場合、法定相続人の「遺留分(いりゅうぶん)」を侵害している可能性があります。

たとえば、遺言書に「すべての財産を知人〇〇に遺贈する」とあっても、配偶者や子などの遺留分権利者がいる場合、遺留分侵害額請求が発生する可能性があります。

遺留分とは

民法で保障されている最低限の相続分で、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められています。

  • 配偶者・子:遺留分あり
  • 親:遺留分あり
  • 兄弟姉妹:遺留分なし

対策

  • 特定遺贈を行う際には、遺留分を侵害していないかの確認を。
  • 財産の分配割合や、受遺者・相続人の関係性を考慮した上での設計が必要。
  • 不安がある場合は、遺留分への配慮を含めた公正証書遺言の作成がおすすめです。

5.特定遺贈の注意点④

負担付き遺贈には明確な条件設定を

たとえば、「〇〇を遺贈する代わりに、私の墓の管理をお願いしたい」など、遺贈と引き換えに何らかの義務を課す「負担付き遺贈」をするケースがあります。

しかし、条件が曖昧だと、トラブルや履行困難の原因になります。

対策

  • 「何を・いつまでに・どうやって」行うのか、条件を明確に記載する
  • 管理費用などもあらかじめ考慮する。
  • 条件を監督する遺言執行者を必ず指定しておく。

6.特定遺贈を成功させるための実務的ポイント

特定の財産を特定の人に確実に遺贈するためには、次のような実務ポイントを押さえることが大切です。

公正証書遺言の活用

自筆証書遺言では形式不備による無効のリスクや、検認が必要になる不便さがあります。公証人が関与する公正証書遺言なら、形式のミスを防げ、遺言の信用性・実行性も高まります。

遺言執行者の指定

遺贈の実行をスムーズに進めるためには、専門家を遺言執行者として指定しておくことを推奨します。登記や金融機関対応も一括で任せることができます。

財産の最新状況を把握

遺言作成時点と実際の相続時点で、財産の状況が大きく変わっていることがあります。少なくとも数年に一度は遺言書を見直す習慣を持つと安心です。

7.まとめ

特定の財産を特定の人に遺贈する「特定遺贈」は、被相続人の意思を明確に反映できる方法ですが、実務上のリスクや注意点を踏まえて設計することが大切です。

【特定遺贈の主な注意点まとめ】

  • 財産が現存しているかの確認
  • 名義変更等の手続きの準備
  • 遺留分への配慮
  • 条件付き遺贈の明確化
  • 専門家によるサポート体制の整備

東京都江東区や沖縄県那覇市で、相続や遺言に関する具体的な設計を考えている方は、状況に応じて行政書士などの専門家と相談しながら、納得のいく遺言作成を進めることが安心です。

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