公正証書遺言の作成手続とは?遺言書を確実に残すために必要なこと

相続に関するトラブルを未然に防ぐためには、「遺言書」の作成が非常に有効です。
なかでも最も確実で法的にも強い効力を持つのが『公正証書遺言』です。

しかし、「どうやって作るのか分からない」「公証役場って何をするの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市の方々に向けて、公正証書遺言の作成手順・必要書類・費用・注意点を具体的にわかりやすく解説します。


1. 公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証人(法律の専門家)が作成する正式な遺言書のことです。
民法第969条に基づき、遺言者の意思を聴き取りながら、法的に無効とならないよう整えられます。

公正証書遺言の主なメリット

  • 家庭裁判所の「検認手続」が不要
  • 公証人が法的にチェックするため無効リスクが極めて低い
  • 公証役場が原本を保管するため紛失や改ざんの心配がない
  • 認知症対策として有効(作成時の判断能力が確認される)

特に高齢者や不動産をお持ちの方にとっては、トラブル防止の観点から最も推奨される遺言形式です。


2. 公正証書遺言作成の基本的な流れ

【ステップ1】内容の検討・構想

まず、遺言者ご自身で「誰に」「どの財産を」相続させたいかを考えます。

例:

  • 長男に自宅を相続させたい
  • 長女には預貯金を、次男には株式を渡したい
  • 相続人以外の世話になった人にも遺贈したい

※配分の自由はありますが、遺留分(法定相続人に保障された最小限の取り分)には配慮が必要です。

この段階で行政書士などの専門家に相談するとスムーズです。


【ステップ2】必要書類の準備

公正証書遺言を作成するには、以下の書類が必要です:

共通書類

  • 遺言者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 戸籍謄本(家族関係を証明するため)
  • 財産に関する資料
    • 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
    • 預貯金の通帳コピー
    • 株式の明細・証券会社の報告書 など
  • 受遺者(財産を受け取る人)の氏名・住所・生年月日がわかる資料(住民票の写しなど)

証人に関する書類

  • 証人2名分の氏名・住所・生年月日・職業

※証人には未成年者や推定相続人、受遺者はなれません。行政書士等が証人を手配することも可能です。


【ステップ3】公証役場との打合せ・日程調整

書類が揃ったら、公証役場に事前相談を行い、遺言内容の草案を公証人と調整します。
このやりとりは、遺言者本人または代理人(行政書士等)を通じて行われることが一般的です。

公証役場は全国にあり、江東区なら「錦糸町公証役場」、那覇市なら「那覇公証センター」などが利用できます。


【ステップ4】公証役場または出張での作成・署名押印

公正証書遺言の作成当日は、公証役場または病院・施設などへの出張先で以下の手順により行います:

  1. 公証人が遺言者に遺言の内容を読み上げる
  2. 遺言者が内容に間違いがないか確認
  3. 遺言者・証人が署名押印
  4. 公証人が作成した旨を記載して署名押印

※遺言者が話せない場合でも筆談やうなずき等による意思表示があれば作成可能です。


【ステップ5】完成・保管・謄本交付

作成された遺言書は次のように扱われます:

  • 原本:公証役場で厳重に保管されます(遺言者死亡後も破棄されない)
  • 正本・謄本:遺言者本人に交付されます

相続発生後は、この謄本を用いて速やかに相続手続きを進めることが可能です。


3. 証人の選び方と注意点

公正証書遺言では証人2名の立会いが法律上必須です。

証人になれない人

  • 推定相続人(配偶者・子・親など)
  • 受遺者(遺言で財産をもらう人)
  • 未成年者
  • 成年後見人など被後見人に関与している人

信頼できる第三者を選ぶのが原則ですが、実務上は行政書士や弁護士が証人を務めることが一般的です。


4. 費用の目安

公正証書遺言の作成には、公証人手数料および証人謝礼などが発生します。

公証人手数料(財産額に応じて変動)

財産の価格手数料の目安(税込)
100万円以下5,000円
500万円以下11,000円
1,000万円以下17,000円
3,000万円以下23,000円
1億円以下43,000円

※相続財産の種類や人数に応じて、加算されることもあります。

その他費用

  • 証人報酬:5,000〜10,000円/人程度
  • 行政書士・司法書士等への依頼報酬(相場:3〜10万円)

5. よくある質問(Q&A)

Q1:認知症の母に遺言書を書かせたいのですが可能ですか?

A:認知症でも軽度であれば作成可能な場合があります。ただし、公証人が遺言能力(判断能力)を確認しますので、心配な場合は医師の診断書を用意するのがおすすめです。


Q2:遺言の内容を変更したいときは?

A:公正証書遺言は何度でも書き直しが可能です。
後から新しい遺言を作成すれば、前の遺言は無効になります。


Q3:遠方の家に来てもらうことはできますか?

A:はい、公証人が出張してくれる「出張作成」も可能です。
那覇市の病院や江東区内の高齢者施設などへの訪問も行われています(別途日当・交通費がかかります)。


6. まとめ:安心の遺言書を残すなら公正証書遺言を

人生の終盤を安心して過ごすために、「誰にどんな思いで財産を遺したいか」をしっかりと形にすることが大切です。
公正証書遺言はその想いを法的に確実な形で残せる最良の手段
です。

特に不動産・預貯金・事業資産などが関わる相続では、きちんとした遺言があるかどうかで家族関係の行方や財産承継のスムーズさが大きく変わってきます

江東区や那覇市で遺言を考えている方は、一度専門家に相談しながら公証役場の手続きを進めてみてはいかがでしょうか。
あなたの想いを、しっかりと「未来」に残す第一歩となるはずです。

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