
2019年の民法改正により導入された「特別寄与料」制度。
相続人以外の親族が被相続人に対して特別な貢献をした場合に、相続人に金銭請求できるこの仕組みは、まだ比較的新しいため、実際にどのような場合に、どの程度認められるのかイメージしにくい方も多いでしょう。
そこで今回は、東京都江東区・沖縄県那覇市にお住まいの方にも参考にしていただけるよう、特別寄与料に関する具体的な家庭裁判所の審判例をいくつか紹介しながら、ポイントを解説していきます。
特別寄与料の審判例紹介
1. 【東京家庭裁判所】長男の妻による10年以上の介護が認められた例
事案概要
被相続人(義母)が要介護状態となった後、長男の妻(申立人)が約10年間にわたり、
自宅で日常生活全般の介護を行った。
介護サービスを一部利用していたが、申立人が中心となって療養看護を提供していた。
審判結果
家庭裁判所は、申立人の貢献の程度と期間、
被相続人の資産状況(遺産総額約5000万円)を考慮し、
特別寄与料として300万円を認めた。
ポイント解説
- 長期間かつ中心的な介護が重視された
- 介護サービス利用の有無は、必ずしもマイナス要素ではなかった
- 遺産総額とのバランスも考慮され、過大な金額ではない適正範囲で認められた
2. 【大阪家庭裁判所】孫による療養看護の一部が認められた例
事案概要
被相続人(祖父)が入院中、孫(申立人)が頻繁に病院に付き添い、
洗濯物の受け取りや食事介助などを行っていた。
期間は約2年間、週2〜3回程度だった。
審判結果
裁判所は、孫の行為が単なる親族の範囲を超える特別な貢献とまではいえないものの、
一定の療養看護にあたると認め、
特別寄与料として50万円を相続人に支払うよう命じた。
ポイント解説
- 親族的な範囲内の行動かどうかが争点となった
- 頻度や内容が一定のレベルを超えていたことがポイントに
- 高額ではないものの、療養看護の事実が認められたことに意義がある
3. 【名古屋家庭裁判所】介護日誌が評価され、高額特別寄与料が認められた例
事案概要
被相続人(父親)を義理の娘が自宅で15年間介護。
介護の記録(日誌)を毎日つけており、医療機関の診断書や近隣住民の証言もあった。
審判結果
家庭裁判所は、申立人の無償での療養看護行為を高く評価し、
特別寄与料として500万円を認めた。
ポイント解説
- 詳細な介護記録(日誌)が証拠として非常に高く評価された
- 第三者の証言が証拠補強として重要視された
- 長期間にわたる無償労務が、金額面でもしっかり反映された
4. 【福岡家庭裁判所】特別寄与料請求が棄却された例
事案概要
被相続人(母)の生活支援を娘の夫(申立人)が行ったと主張。
しかし、具体的な内容や頻度を裏付ける証拠がほとんどなかった。
審判結果
家庭裁判所は、申立人の主張する労務提供の事実について十分な立証がされなかったとして、
特別寄与料請求を棄却した。
ポイント解説
- 証拠不十分では、貢献があったとしても認められないリスクが高い
- 申立人自身の供述だけでは足りず、客観的資料が不可欠
- 介護記録や医療関係資料の重要性を改めて確認できる事案
審判例から学べる特別寄与料請求のポイント
審判例を整理すると、特別寄与料請求を成功させるためには、
次のような点が極めて重要であることがわかります。
1. 日々の記録を残す
- 介護日誌や訪問記録など、日常の支援行為を具体的に記録
- できれば第三者(ヘルパー、医師、近隣住民など)による証明も得ておく
2. できるだけ客観的証拠をそろえる
- 医療機関の診断書
- 介護認定に関する書類
- 被相続人とのメール・手紙・メモなど
「感覚」や「印象」ではなく、書類や記録による裏付けが求められます。
3. 特別な貢献であることを示す
- 他の親族とは一線を画すレベルの療養看護・労務提供であること
- 通常の親族関係に期待される程度を超えていることを説明できるようにする
4. 遺産総額とのバランスを考慮する
- 特別寄与料は遺産総額を超えるような金額には通常なりません
- 現実的な金額で請求することが、協議や調停成立への近道です
特別寄与料請求を考える方へのアドバイス
特別寄与料制度は、介護や療養看護に尽力した親族の貢献を報いるために設けられた重要な制度です。
ただし、審判例からも明らかなように、
「やったはず」ではなく「やったことを証明する」ことが求められる点に十分注意が必要です。
また、請求には6か月または1年以内という短い期限もあります。
早めに行動を起こし、必要な資料を集め、場合によっては専門家のサポートを受けることをおすすめします。
まとめ 審判例からわかる特別寄与料請求成功の鍵
この記事では、特別寄与料に関する具体的な審判例を紹介し、
そこから読み取れる成功・失敗のポイントを整理しました。
江東区・那覇市にお住まいで、
「被相続人への介護・療養支援に尽力してきたけれど、特別寄与料を請求できるのか悩んでいる」
という方は、ぜひこれらの実例を参考に、
準備すべき資料や、今後の対応方針を検討してみてください。