
建設業許可を取得するうえで、実務経験に基づいて「専任技術者」や「経営業務管理責任者」の要件をクリアしようとする場合、必ず必要になるのが「実務経験証明書」です。
この証明書は、単なる様式への記入ではなく、「誰が・いつ・どこで・どのような内容の業務を行っていたか」を客観的に説明し、行政が「技術力や経営経験がある」と認定するための重要書類です。
この記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市の方々向けに、実務経験証明書の基本構造・記載方法・注意点・提出のコツを詳しく解説します。
1.実務経験証明書とは何か?
どんなときに必要?
以下のようなケースで、実務経験証明書の提出が求められます。
- 国家資格を持っていないが、10年以上の現場経験で専任技術者を目指す場合
- 指定学科卒業後に、所定年数の実務経験があるとき(5年・3年など)
- 経営業務管理責任者としての経営経験を証明する場合(法人役員・個人事業主を除く)
誰が証明するのか?
証明書を作成・署名するのは、次のような人物です。
- 元勤務先の代表取締役、役員、人事担当者
- 現勤務先の上司、責任者(法人代表が望ましい)
- 個人事業主の下で働いていた場合は、当該事業主本人
※原則として、証明者本人の「押印(実印または社判)」が必要です。
2.実務経験証明書の基本構成と記入様式
どんな様式を使うのか?
国土交通省および各都道府県が提供している「実務経験証明書」の指定書式があります。たとえば東京都の場合は、次のような構成です。
- 記載対象者の氏名・生年月日
- 勤務先名・所在地・代表者氏名
- 勤務期間(年・月単位)
- 従事した業種(例:とび・土工工事、内装仕上工事など)
- 職務内容(具体的に)
- 実務経験年数の算出
- 証明者の署名・押印
※複数の勤務先にまたがる場合は、それぞれ別様式で証明が必要です。
3.書き方の具体例と解説
例1:10年以上の現場経験がある職人(一般建設業・大工工事業)
【実務経験証明書】記入例
氏名: 山田 太郎
生年月日: 昭和50年4月1日
勤務先: 株式会社○○建設
勤務期間: 平成23年4月 ~ 令和5年3月
業種: 大工工事業
職務内容:
木造住宅の新築・増改築工事において、大工工として木工事の全般に従事。現場では柱・梁の組み立て、床・壁の下地施工、造作工事などを担当した。年間8~10件の現場に従事。
【ポイント解説】
- 業種名は建設業法に基づく29業種から選択(曖昧な職種名や現場名では不可)
- 職務内容は具体的に:「施工管理」「現場監督」など抽象語で済ませない
- 勤務期間は必ず年月で明示し、通算年数の計算ができるようにする
- 年途中の離職や休職がある場合は備考欄で説明すること
4.作成・提出時の注意点
(1)同一業種であることを証明する必要がある
実務経験は、取得予定の建設業許可の業種(とび・内装・管工事など)と一致していなければなりません。
例:塗装工事業の許可を取りたいのに、「土木工事」経験しかない場合、実務経験として認定されない可能性があります。
解決策
工事現場での従事内容が複数業種にまたがる場合、「主たる業種」を絞って証明書を作成し、補強資料(注文書や請求書)で具体性を補完することが有効です。
(2)証明者の在職証明や代表者印も必要
行政庁では、証明者本人の信ぴょう性も確認します。具体的には、
- 証明者がその法人に当時在職していたことを示す資料(登記簿謄本など)
- 押印された社印や個人印が「実在」することを証明できること(印鑑証明書など)
(3)工事書類との整合性を図る
行政庁によっては、以下のような工事関連資料の提出を求められることもあります。
- 工事契約書
- 請求書・領収書
- 工事写真・報告書
- 社会保険加入記録(厚生年金、雇用保険)
証明書だけでは足りないと判断された場合、これらの補足資料によって「客観的な裏付け」が求められることを覚えておきましょう。
5.証明が難しいときの対応策
廃業した会社に勤務していた場合
勤務先が廃業していると、証明書の取得が困難です。その場合は以下のような資料で代替します。
- 元同僚や上司からの「陳述書」(様式自由)
- 工事現場写真
- 工事現場の注文書・納品書・請求書など
- 雇用保険被保険者記録
自営・一人親方で活動していた場合
個人事業として活動していた場合は、「開業届の控え」「確定申告書」「工事請負契約書」「発注書」「請求書」などが実務経験の裏付けとなります。
6.まとめ 正確な証明書作成が許可取得の第一歩
「実務経験証明書」は、ただの形式書類ではなく、建設業者としての能力・実績を行政に証明するための重要資料です。
記載する内容は簡潔に、しかし具体的に。事実に基づいた記述と、関連する証拠資料の整合性を意識して作成しましょう。