第三者後見人とは?家庭裁判所が選任する基準と実務のポイントについて

高齢者の判断能力が低下したときに、代わりに財産管理や契約行為などを行う「成年後見制度」。その中でも、本人の親族ではなく、弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者が後見人となる「第三者後見」が注目されています。

本記事では、第三者後見が選ばれる背景や、家庭裁判所による選任基準、実務における注意点を、東京都江東区および沖縄県那覇市の皆さま向けに詳しく解説します。

目次

1. 成年後見制度の概要

まず、成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない方(以下、「本人」といいます)を支援するための制度です。

家庭裁判所が選任した「成年後見人」が、本人に代わって以下のような行為を行います。

  • 預貯金の管理
  • 年金の受け取り
  • 医療・介護契約の締結
  • 不動産の管理・処分 など

この制度には3つの類型があります。

  • 後見(判断能力がない)
  • 保佐(判断能力が著しく不十分)
  • 補助(判断能力が一部不十分)

後見人は、親族がなることもありますが、近年は「第三者後見人」が選ばれる事例が増加しています

2. 第三者後見人とは?

第三者後見人とは、本人の親族以外で、家庭裁判所が選任する専門職後見人のことをいいます。主に以下のような方が選任されます。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会福祉士
  • 行政書士(実務経験が豊富な場合)など

これらの第三者は、家庭裁判所が登録している「成年後見人候補者名簿」などをもとに、適任者として選任される仕組みになっています。

3. なぜ第三者後見人が選ばれるのか?

以前は後見人と言えば、本人の配偶者や子などの親族が担うことが一般的でしたが、現在では全体の約4割が第三者後見人です。

その理由は次のようなものです。

(1)親族間にトラブルのリスクがある

親族同士で財産を巡るトラブルが発生している、もしくは将来的に起きる可能性が高い場合、家庭裁判所は中立な第三者を選任する傾向にあります。

(2)適任者がいない

本人に配偶者や子がいなかったり、高齢で後見人の業務ができる親族がいないときは、第三者が選ばれます。

(3)財産が高額または複雑

本人が高額な金融資産を持っていたり、不動産や事業用資産などの処分や管理が必要な場合は、法務・税務に精通した専門職の後見人が適任とされます。

4. 家庭裁判所による第三者後見人の選任基準

家庭裁判所は、後見申立てがなされると、以下の要素を総合的に判断し、第三者後見人を選任します。

(1)本人の利益の保護が最優先

成年後見制度はあくまでも「本人のため」の制度です。家庭裁判所は「本人の心身の状態、生活環境、財産状況、支援の必要性」などを慎重に見極め、最も本人の利益を図れる人を後見人に選任します。

(2)専門性・信頼性・公正性

第三者後見人には以下のような点が重視されます。

  • 財産管理や法律、福祉に関する専門知識
  • 後見業務に関する経験
  • 利害関係のなさ(中立性)
  • 信頼できる人物であるかどうか(過去の懲戒歴の有無など)

第三者後見人として登録されていても、具体的な申立事案に応じて裁判所がふさわしい人物を個別に判断します。

(3)家庭裁判所による面談・事情聴取

申立ての際、裁判所調査官による事情聴取が行われ、申立人の意向や本人の健康状態・希望なども確認されます。第三者後見人の選任は、こうした事情を総合的に加味して決定されるため、希望通りにいかないこともあります。

5. 第三者後見人の役割と報酬

【役割】

  • 預貯金の管理・支払い
  • 公的給付の受給手続き
  • 医療・介護サービスの契約
  • 不動産の維持管理、売却(裁判所の許可が必要)
  • 年1回以上、家庭裁判所への業務報告

【報酬】

第三者後見人には、本人の財産から裁判所が決定した報酬(月額2万円〜6万円程度)が支払われます。財産が多い、業務が複雑な場合は報酬額も高くなります。

6. 第三者後見の実務上の注意点

(1)本人や家族の意思とのずれ

後見人は法律に従って職務を遂行するため、本人や家族の希望とは異なる判断をすることもあります。特に「資産を孫に贈与したい」「不動産を早く売ってほしい」といった希望があっても、後見人は安易には実行できません。

(2)柔軟な対応が難しい

後見制度は「原則、財産を守る」制度です。将来にわたる財産活用や税務対策などには対応が難しく、柔軟な設計ができる家族信託などの制度とは一線を画します。

(3)費用面の負担

報酬が発生することに加えて、家庭裁判所に年1回以上の報告が義務づけられているため、そのための資料作成なども必要です。信託契約や任意後見契約などと比較しても、コストは一定程度かかるといえます。

7. よくある質問(東京都江東区・那覇市の事例から)

Q1:親族が反対しても第三者後見人になることはある?

はい、あります。 本人にとって不利益になる可能性がある場合や、親族間の利害が対立している場合は、家庭裁判所が職権で第三者後見人を選任します。

Q2:家族信託と併用できますか?

可能です。 家族信託で管理できない財産(たとえば年金受給など)は後見制度を併用する形が取られることがあります。

Q3:報酬を払えない場合はどうなる?

→ 本人に財産がなければ、後見人には無報酬での選任がされることがありますが、多くの場合は家庭裁判所が候補者選定を難航させる要因になります

8. まとめ 信頼できる第三者による後見が必要な時代へ

超高齢社会の現代において、本人の財産や生活を守る制度として「第三者後見人」の果たす役割はますます大きくなっています。

  • 信頼できる親族がいない
  • 財産が複雑で専門性が必要
  • 家族間の利害調整が困難

こういったケースでは、公平・中立な第三者後見人の選任が、本人と家族の双方の安心につながります

制度の特性を理解し、必要に応じて「家族信託」や「任意後見制度」といった他の制度との比較・併用を検討することが大切です。

江東区や那覇市で成年後見制度の利用をお考えの方は、後見申立ての準備段階から専門家に相談されることをおすすめします。

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