建設業許可を廃業した後に再取得するには?手続きと注意点を詳しく解説

建設業を続けていると、事業の縮小や一時的な活動休止などの理由で「建設業許可を廃業したい」という場面に直面することがあります。
しかし、その後に再び事業を拡大したり、元請業者から「許可がないと取引ができない」と言われたりして、「再度許可を取りたい」と考える方も少なくありません。

この記事では、一度廃業届を出した後に建設業許可を再取得する際の具体的な流れや注意点を、東京都江東区および沖縄県那覇市の事業者の方々に向けてわかりやすく説明します。

目次

1. 「廃業」と「一時休業」の違いを正しく理解する

まず押さえておくべきなのは、「廃業届を出す」という行為の意味です。
建設業許可における「廃業」とは、許可自体を完全に失効させる手続きを指します。

つまり、建設業としての事業を一時的に停止するのではなく、行政庁(東京都なら東京都都市整備局、沖縄県なら土木建築部 技術・建設業課)に対して「許可を辞退します」と正式に届け出ることになります。

廃業届を出すと、その許可番号や許可業種は失効し、以後の建設業許可申請は新規扱いになります。
「いつでも再開できる」と思って安易に提出してしまうと、後で大きな手間になることもあるため注意が必要です。

もし事業そのものをやめるのではなく、しばらく活動を休止するだけであれば、「廃業届」ではなく「営業実績なし」として決算変更届を提出するなど、許可を維持する方法も検討する価値があります。

2. 廃業後に再取得が必要になる典型的なケース

建設業許可の再取得が必要になるケースとして、以下のようなものがよくあります。

  1. 一時的に廃業したが、再び工事を受注することになった
  2. 個人事業から法人化の際に、個人許可を廃業して法人として新規許可を取りたい
  3. 経営業務管理責任者が退任・死亡したため一時的に廃業した
  4. 経営者交代や事業承継の過程で許可を一旦整理した

このように、「事業を完全にやめた」場合だけでなく、「組織変更」「人の入れ替わり」「経営再建」など、経営の転換点で廃業届を出すケースも少なくありません。

しかし、どのケースでも再び許可を得るには新規許可申請と同等の審査を受ける必要があります。

3. 再取得は「新規申請」として行う

建設業許可を廃業した場合、その許可は失効します。
そのため、再び許可を取得する際は「更新」ではなく新規申請として扱われます。

この点が多くの方が誤解されるポイントです。
廃業前に許可を持っていたとしても、再取得の際には経営業務管理責任者、専任技術者、財産要件、欠格要件など、すべての基準を再度満たす必要があります。

なお、審査基準そのものは通常の新規申請と同様ですが、廃業からの期間が短い場合、以前の許可情報や実績をもとに書類が簡略化できる場合もあります。
とはいえ、基本的には一から許可を取り直すつもりで準備を進めるのが安全です。

4. 再取得までの手続きの流れ

廃業後に建設業許可を再取得する際の主な流れは、以下のようになります。

  1. 廃業届の確認
    まず、以前提出した廃業届の控えを確認します。廃業日や当時の許可業種を把握しておくことで、再申請時の参考になります。
  2. 要件の確認
    再申請に必要な4つの要件(経営業務管理責任者、専任技術者、財産的基礎、欠格要件)を満たしているか確認します。
    経営者や役員が変わった場合には、実務経験や資格証明を新たに提出する必要があります。
  3. 書類の準備
    登記簿謄本、納税証明書、経営管理責任者・専任技術者に関する証明書類、財務書類などを揃えます。
    東京都では「東京都都市整備局建設業課」、沖縄県では「土木建築部 技術・建設業課」へ提出します。
  4. 申請書の作成と提出
    新規許可申請書を作成し、各種添付書類を付けて提出します。
    通常、提出から許可までにはおおよそ30~45日程度かかります。
  5. 許可通知の受領
    許可が下りると、許可通知書と許可番号が交付されます。
    以前の番号とは異なる、新しい許可番号が付与されます。

5. 再取得の際に注意すべきポイント

再取得をスムーズに行うためには、以下の点に注意する必要があります。

(1) 廃業理由の整理

再取得時には、前回廃業の理由を問われることがあります。
「経営不振」「代表者の病気」「事業転換」など、合理的な理由があれば問題ありませんが、行政処分による取消や欠格要件に該当する場合は再取得が難しくなることがあります。

(2) 経営業務管理責任者の要件

経営業務管理責任者として認められるには、過去に建設業の経営に関与していた実績が必要です。
廃業期間が長いと実績の継続性が認められない場合があるため、証明資料(役員在任証明、決算書、契約書など)を丁寧に揃えることが重要です。

(3) 専任技術者の確保

許可業種ごとに専任技術者を置く必要があります。
以前の技術者が退職している場合、新たに資格を持つ社員を採用するか、経歴を証明できる社員を選定します。

(4) 財務要件

個人事業主から法人に変更した場合など、資本金や純資産要件が変わることがあります。
貸借対照表の内容を確認し、自己資本要件(500万円以上)が満たされているか事前にチェックしておきましょう。

6. 東京都・沖縄県での申請窓口

再取得申請を行う際の提出先は以下のとおりです。

  • 東京都の場合
    東京都都市整備局 建設業課(新宿区西新宿)
    都知事許可に関する各種手続きを担当しています。
  • 沖縄県の場合
    沖縄県 土木建築部 技術・建設業課(那覇市泉崎)
    沖縄県知事許可に関する新規・変更・廃業届の受付を行っています。

提出書類や様式は、各自治体の公式サイトからダウンロード可能です。
また、申請前に書類の事前相談を受け付けている場合もあるため、早めの確認が推奨されます。

7. 再取得を円滑に進めるための実務的アドバイス

建設業許可を再取得する場合、最も多いトラブルは「要件不足」と「書類不備」です。
廃業前と同じ条件であっても、現在の法令基準が改正されていることがあるため、最新の要件を再確認することが非常に重要です。

また、過去に申請した書類を保管していない場合、再度すべての証明資料を集め直す必要があり、時間がかかります。
可能であれば、廃業届を出す前に将来の再取得も視野に入れて書類を整理しておくとよいでしょう。

8. まとめ

一度建設業許可を廃業しても、再取得は可能です。
ただし、廃業届を提出した時点で許可は完全に失効するため、再取得は「新規申請」と同様の手続きになります。

経営業務管理責任者や専任技術者の確保、財務要件の確認など、事前準備をしっかり行うことでスムーズに再取得が進められます。
特に東京都や沖縄県では、窓口での事前相談制度を活用すれば、無駄な時間や労力を大幅に減らすことができます。

もし、廃業から再取得までの流れや書類準備に不安がある場合は、建設業許可申請に精通した行政書士に相談することをおすすめします。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。

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