建設業許可を維持するための重要な手続き、決算変更届の概要と注意点

建設業許可を受けた事業者にとって、毎事業年度終了後4ヶ月以内に「決算内容の報告」を提出することは、建設業法に基づいた重要な義務です。この手続きは、地方整備局や都道府県によって名称が異なり、「決算変更届」「年次報告」「事業年度終了報告」などと呼ばれますが、いずれも同様の手続きです。

決算変更届とは?

決算変更届は、その名前から「決算期を変更した場合に提出するもの」と誤解されがちですが、実際には毎年必ず提出しなければならないものであり、ご自身または税理士が進める確定申告とは異なる手続きです。この報告は、事業者の財務状況や事業活動の透明性を確保するためのものであり、提出しない場合には重大な影響を及ぼす可能性があります。

決算変更届を提出しないリスク

決算変更届の提出を怠ると、次のような不利益を被る可能性があります。

1. 更新申請が受理されない

建設業許可の有効期間は5年間と定められており、許可を維持するには5年ごとに更新申請を行う必要があります。しかし、これまでの決算変更届がすべて提出されていない場合、更新申請は受理されず、許可が抹消される恐れがあります。許可の抹消は、事業の継続に深刻な影響を与えるため、期限内の提出が求められます。

2. 業種追加申請が受理されない

建設業許可の業種を追加したい場合でも、決算変更届が未提出であれば申請は受理されません。業種追加は事業拡大のために重要な手続きですが、過去の届出が完了していないと、その機会を失うことになります。

3. 経営事項審査を受けることができない

経営事項審査(通称:けいしん)は、公共工事入札に参加するために必要な手続きです。この審査では、建設業許可を受けた企業の経営規模や技術力、社会性などを数値化しますが、そのベースとなるのが決算変更届の内容です。未提出の届出がある場合、経審を受けることができず、公共工事の受注機会を失う可能性があります。

4. 閲覧者の信用を失う

決算変更届は、行政庁に保管されており、手数料を支払えば誰でも内容を閲覧することができます。取引先や調査会社に閲覧された際に、提出すべき決算変更届が未提出であると、それだけで信用を損なうリスクがあります。信用失墜は取引機会の喪失に直結するため、十分な注意が必要です。

5. 罰則が科される可能性がある

建設業法では、決算変更届を提出しない場合、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。現状では、数年分の提出が遅れても処分に至るケースは少ないですが、法的にはいつでも罰則が科される可能性があるため、遵守が求められます。

決算変更届の提出期限と必要書類

決算変更届は、法人と個人事業で提出期限が異なります。法人の場合、定款で定めた決算日から起算し、事業年度終了後4ヶ月以内に提出が必要です。例えば、3月決算の法人であれば7月末日までに提出しなければなりません。一方、個人事業の場合、事業年度が全員12月末日に終了するため、4月末日が提出期限となります。

法人の場合

  1. 変更届出書
  2. 工事経歴書
  3. 直前3年の工事施工金額
  4. 財務諸表
  5. 事業報告書(株式会社のみ)
  6. 使用人数
  7. 定款の写し
  8. 健康保険等の加入状況
  9. 納税証明書

個人事業の場合

  1. 変更届出書
  2. 工事経歴書
  3. 直前3年の工事施工金額
  4. 財務諸表
  5. 使用人数
  6. 健康保険等の加入状況
  7. 納税証明書

変更届出書は、行政庁により書類の名称が異なる場合があります。また、使用人数、定款の写し、健康保険等の加入状況は、変更が生じている場合のみ提出が必要です。

決算変更届の作成方法

決算変更届の作成には、建設業の会計ルールに基づいた財務諸表の作成が必要です。これは、税務署に提出する決算書や確定申告書のコピーではなく、建設業許可の特性を考慮した書類を提出しなければなりません。これらの書類の作成方法や書式は、国土交通省や各行政庁のホームページで確認できます。

決算変更届の提出をスムーズに進めるために

決算変更届の提出には、正確な準備と書類の整備が求められます。提出対象期の決算書一式や工事一覧表、これまでの建設業許可申請書・届出書の副本、法人実印(個人事業の場合は認印)などが必要です。特に工事一覧表がない場合は、注文書や請求書控えなどでも対応可能です。

まとめ

建設業許可を維持するためには、毎年の決算変更届の提出が不可欠です。この手続きを怠ると、許可の更新や業種追加申請、経営事項審査の受験ができなくなり、事業の信用を失うリスクもあります。決算変更届は、建設業法に基づいた義務であり、提出期限を守ることが重要です。

決算変更届の作成や提出に不安がある場合は、ぜひ専門家に相談してください。当職では、経験豊富な行政書士として、皆様の手続きがスムーズに進むようサポートいたします。提出に必要な書類の準備や作成方法についても丁寧にアドバイスいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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