なぜクルド人を強制送還できなかったのか? 改正入管法施行後の課題と展望

日本での外国人の在留管理において、「難民認定申請」の仕組みが悪用され、長期間にわたる不法滞在を許してしまう問題が顕在化しています。今年の入管難民法改正は、この問題の根本的な解決を目指して実施されました。本記事では、主にクルド人を例に、これまでの制度の課題、改正法による新たな対応、そして今後の課題について解説します。

なぜ強制送還が難しかったのか?

1. 難民申請の制度的な抜け穴
過去の法律では、難民申請を行っている間は強制送還が停止される規定がありました。これにより、不法滞在状態の外国人が繰り返し難民申請を行うことで、長期間にわたり日本国内に滞在できる状況が生まれました。

例として、多いケースでは8回もの難民申請を行い、結果的に30年近く不法滞在を続けた事例も報告されています。この抜け穴が悪用され、入管当局が強制送還を実行できない状況が続いていました。

2. 仮放免者の管理の限界
難民申請中の外国人の多くは、入管施設への収容が一時的に解除される「仮放免」の措置を受けています。しかし、この仮放免者が実際には不法滞在の状態であり、所在不明になるケースや地域住民との摩擦が問題視されています。埼玉県川口市では、仮放免者の多くがトルコ国籍のクルド人であり、地域社会との軋轢が深刻化しています。

3. 実際の強制送還の困難
送還が決定しても、実際に帰国便に乗せることが難しい場合があります。入管の関係者によると、あるケースでは、送還対象者が航空機の搭乗時に暴れたり大声を上げるなどの妨害行為を行い、機長に搭乗を拒否された事例もありました。このようなケースでは、再試行の手間やコストがかかり、迅速な対応が難しくなっています。

改正入管法のポイント

改正入管難民法は、これらの課題を解決するために次のような新たな措置を講じています。

1. 難民申請の回数制限
改正法では、2回目までの難民申請については従来通り強制送還が停止されますが、3回目以降の申請には「相当な理由がある資料」の提示が必要となりました。この条件を満たさない場合、強制送還が可能となります。

2. 送還妨害行為への罰則導入
送還の妨害行為に対しては、1年以下の懲役または20万円以下の罰金、もしくはその両方が科される罰則規定が新設されました。これにより、送還妨害行為の抑止を目指します。

3. 自発的帰国の促進
自発的に帰国する場合、再入国禁止期間が5年から1年に短縮されました。ただし、この再入国が認められるには、将来の在留資格の条件を満たすことが求められます。これにより、不法滞在者に自発的な帰国を促す仕組みが強化されました。

現実的な課題と今後の展望

改正法が施行されても、すべての課題が解決されるわけではありません。以下は、今後の入管行政が直面する主要な課題です。

1. 難民審査の迅速化
入管庁が掲げる難民審査の目標期間は6カ月ですが、現状では平均2年以上かかっています。この遅延は、膨大な申請数と限られた人員が原因です。特に昨年は1万3823件もの申請があり、担当の難民調査官は約400人しかいない状況です。迅速な審査を実現するためには、人員の増員や通訳の確保、審査プロセスの効率化が急務です。

2. 地域社会との摩擦
埼玉県川口市の例に見るように、仮放免者の存在は地域社会との摩擦を引き起こす可能性があります。地域住民への情報提供や、仮放免者の生活支援体制の整備が必要です。

3. 国際的な人権問題への配慮
難民認定制度は、本来迫害から逃れてきた人々を保護するためのものであり、真の難民が不利益を被ることがあってはなりません。改正法の運用においては、人権に十分配慮した対応が求められます。

行政書士ができるサポート

改正入管法の施行により、外国人の在留手続きはさらに複雑化しています。行政書士は、以下のようなサポートを提供できます。

  • 難民認定申請に必要な書類作成とアドバイス
  • 仮放免者の在留管理や再入国手続きの支援
  • 地域社会との調整や情報提供のサポート

沖縄県那覇市や東京都江東区で在留手続きや改正入管法に関するご相談がある場合は、ぜひ信頼できる行政書士にご相談ください。

改正入管法は、日本社会にとって重要な一歩ですが、その運用が適切に行われることが、外国人と日本人双方にとっての良好な共生の鍵となります。行政書士として、皆さまの安心な生活のために全力でサポートいたします。

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