工事経歴書の元データ、整理できていますか?~スムーズな申請のための情報管理術~

建設業許可申請や決算変更届(事業年度終了報告)の提出時に求められる「工事経歴書」。この書類は、過去1年間の完成工事を一覧にまとめる非常に重要な資料であり、行政庁による審査でも重点的に確認されるポイントです。

しかし、いざ書類を作成しようとした際に、「どの工事が該当するのか分からない」「現場ごとの請負金額や完了日があいまい」など、情報の把握に手間取ることも少なくありません。

この記事では、工事経歴書を正確に効率よく作成するための「元データ整理のコツ」について、実務経験に基づいて詳しく解説します。

目次

1. なぜ元データの整理が必要か?

工事経歴書の記載には、以下のような項目が求められます。

  • 注文者(施主・元請名)
  • 元請または下請の別
  • 工事名
  • 工事現場の所在地(市区町村)
  • 工期(着工日・完成日)
  • 請負金額(税抜)

これらは、工事台帳や請負契約書、請求書、完成報告書などをもとに集約される情報です。
しかし、工事完了後に適切に情報が整理されていないと、これらの情報を一つ一つ探し出すことになり、工事経歴書の作成に非常に時間がかかってしまいます

そのため、日頃からデータを整理し、必要なときにすぐ取り出せる状態にしておくことが、書類作成の負担を減らす大きな鍵になります。

2. 情報整理の基本方針 ~「誰が見ても分かる」状態を目指す~

建設業の現場では、複数の担当者や協力業者が関わり、情報が属人的になりやすいのが実情です。
そのため、整理のキーワードは「標準化」と「時系列管理」です。

情報整理の3原則

  • 一現場=一フォルダ(紙または電子)
    • 各工事ごとに専用のファイルやフォルダを作成
    • フォルダ内には契約書、請求書、写真、納品書、完成報告書などを格納
  • フォルダ名に「工事名+完了日」を明記
    • 例:内装改修工事(R6.02.15完了)
    • 完了日を明示しておくと対象年度の特定が容易に
  • データは表形式で一元管理
    • ExcelやGoogleスプレッドシートを活用し、「工事一覧表」を作成
    • 後述する「管理表フォーマット」に沿って記録

3. 工事経歴書のための管理表フォーマット(おすすめ項目)

以下は、日常的に記録しておくと工事経歴書作成時に非常に役立つ項目です。
Excelやスプレッドシートで列を作成し、日々更新していきましょう。

管理項目内容・入力例
工事番号001、002など(重複しないように)
工事名○○改修工事、外構工事 など
元請・下請の別元、下
注文者名〇〇不動産株式会社、××工務店など
現場所在地江東区○○、那覇市△△
契約日契約締結日
着工日工事開始日
完了日検査完了日や引渡日
契約金額(税抜)2,800,000円 など
JVの有無JVあり/なし
備考写真の有無、書類の所在など

この管理表を1年間分、毎月更新しておけば、年度末に工事経歴書を作成する際も迷わず記入が可能です。

4. 情報の集め方と書類の所在確認

工事完了後すぐに記録する

「完了したらすぐに記録する」ルールを作ることで、記憶が曖昧になる前に情報を残せます。
現場監督や営業担当者が責任をもってExcel表に記載するように社内で運用ルールを明確にしましょう。

書類の所在を明確にする

契約書や請求書が社長の手元、写真は現場PCの中など、バラバラに保管されていると収集に時間がかかります。
クラウドストレージ(Dropbox、Google Driveなど)を活用し、「社内共有フォルダ」に全資料を集約する体制を整えることが理想です。

5. 実績なしの業種の管理も忘れずに

工事経歴書では、「実績のなかった業種」も様式を提出し、「実績なし」と明記する必要があります。
そのため、1年間の工事一覧から「どの業種がゼロだったか」も把握できるように、工事ごとに業種を紐づけておくと便利です。

工事名該当業種
○○施設電気工事電気工事業
××公園植栽工事造園工事業
△△外壁補修工事左官工事業

このように分類しておくと、「今年は塗装工事がなかった」とすぐに判断でき、誤って空欄で提出してしまうリスクを防げます

6. まとめ 日々の記録が、申請時の負担を軽減する

工事経歴書の作成をスムーズに行うには、日々の情報の記録と整理が何より大切です。
「忙しくて後回しにしがち」「記憶に頼って記入していた」という方ほど、元データの整理ができていないことで毎年の申請に苦労しているはずです。

情報整理は“地味だけど確実な業務改善”です。
社内のルール化、共有フォルダの整備、そして管理表の活用で、「いつでも出せる、迷わず書ける」体制を整えましょう。

目次