決算変更届の工事経歴書、正しく書けていますか?~東京都・沖縄県の実務に即した記入方法と注意点~

建設業を営むうえで避けて通れない「決算変更届(事業年度終了報告)」ですが、中でも多くの事業者が戸惑いやすいのが「工事経歴書」の作成です。
決算変更届は、建設業許可を受けている事業者が毎年提出しなければならない定期書類であり、その中でも工事経歴書は、1年間の事業実績を報告する重要な項目の一つとなります。

本記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市における実務を意識しながら、決算変更届に添付する工事経歴書の正しい書き方と注意点をわかりやすく解説します。

目次

1. 工事経歴書とは何か?~その役割と重要性~

工事経歴書とは、直近の決算期間中に完成した建設工事の内容を一覧表にまとめた書類です。建設業許可の要件の一つである「誠実性」「財産的基礎」「技術力」などを、実績の側面から示すもので、毎年の提出が求められます。

以下のような目的で提出されます。

  • 許可を受けている業種での実績確認
  • 経営事項審査(経審)との整合性の確認
  • 元請工事・下請工事の実態把握
  • 公共工事や元請業者との取引での信頼確保

2. 工事経歴書に記載する工事の範囲と対象年度

工事経歴書には、決算が確定している直前の1年間で完成した工事を記載します。

対象となる工事

  • 決算期間内に完成した工事(完了ベース)
  • 元請・下請を問わない(両方記載可)
  • 許可を受けている業種に該当する工事のみ

対象外となる工事

  • 決算期間中に着工したが未完成の工事(次年度対象)
  • 許可を受けていない業種に該当する工事

※完成の定義は、引渡しや検査完了など、契約書や請求書で確認できる日付を基準にします。

3. 工事経歴書の構成と記載様式

決算変更届に使用する工事経歴書は、「様式第二号の二 工事経歴書(変更届用)」という標準フォーマットが用意されています。

記載内容は以下の通りです。

項目内容
工事の種類申請する業種ごとに1枚ずつ作成(とび・土工、内装仕上など)
注文者元請の場合は施主、下請の場合は元請業者の名称
元請・下請の別工事を請け負った立場を記入(「元」または「下」)
JVの別JV方式であれば「JV」と明記、なければ空欄
工事名実際に請け負った工事の正式名称
工事現場の所在地市町村名までを記載(例:江東区、那覇市など)
工期着工日~完成日(工事契約書・請求書から確認)
請負金額消費税抜きの契約金額、千円単位で記入

4. 実際の記載例(内装仕上工事業)

注文者元・下JVの別工事名現場所在地工期金額(千円)
株式会社ABC○○オフィス内装改修工事東京都江東区令和6年5月1日~7月10日3,200

※複数件ある場合は上から金額順、または工期順に並べるのが一般的です。

5. 実績がない業種の対応

許可を受けているものの、対象年度にその業種での工事実績がなかった場合も、書類は提出する必要があります。その場合は、以下のように記載します。

注文者元・下JVの別工事名現場所在地工期金額(千円)
実績なし

「空欄」で提出すると、書類不備と見なされる場合がありますので、「実績なし」などと明確に記載して作成しましょう。

6. 記載にあたってのチェックリスト

工事経歴書の記載にあたって、以下の点を確認しましょう。

  • 工事の完了日が決算期間に含まれているか
  • 工事の金額は税抜で記載されているか
  • 工事の名称が契約書や請求書と一致しているか
  • JV欄が適切に記載されているか(不要な空欄チェック)
  • 「元請」または「下請」の別が明確か
  • 業種ごとの様式を分けているか
  • 実績なし業種も様式を作成して提出しているか

7. よくある誤りとその対策

誤り原因対策
工事名が曖昧(例:「内装工事一式」など)契約書と一致していない契約・請求書の正式名称を転記
請負金額が税込みで記載されている見積書の合計金額をそのまま記載税抜金額に訂正(税区分に注意)
工期が曖昧、または記載ミス完成日ベースで記載していない引渡日・完成検査日を確認して記載
「実績なし」の記載漏れ空欄のまま提出明確に「実績なし」と記入した様式を作成

8. 提出期限と未提出のリスク

決算変更届(事業年度終了報告書)は、事業年度終了後4か月以内に提出しなければなりません。
提出が遅れたり、記載内容に誤りがある場合、以下のようなリスクが生じます。

  • 許可更新時に不利益(最悪の場合、更新不可)
  • 経営事項審査(経審)の申請ができない
  • 建設業者情報公開制度における「未提出業者」として公開

9. まとめ 毎年のルーチンだからこそ、正確に・早めに準備を

決算変更届は毎年の義務であるがゆえに、つい軽視されがちですが、「工事経歴書」だけは疎かにできません。
東京都や沖縄県など、地域によって運用や審査の厳しさが異なるため、全国一律の方法ではなく、地元の行政庁に即した記載方法が重要です。

特に、新規許可取得後はじめて提出する場合や、業種追加・経審申請を予定している事業者は、工事経歴書の整合性が後々大きく影響してきます

書き方に不安がある場合は、専門家に依頼することも検討し、早めの準備と確実な書類作成を心がけましょう。

ご不明な点や具体的な記載方法でお困りの場合には、東京都江東区・沖縄県那覇市に対応可能な行政書士が丁寧にサポートいたします。早めのご相談で、スムーズな申請を目指しましょう。

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