
1. 相続は誰にでも訪れる身近な出来事
みなさんは、日本で1年間にどれくらいの相続が発生しているかご存じでしょうか。
最新の統計によると、年間でおよそ 137万件 の相続が発生しています。これは、毎日全国で約3,700件以上の相続が起きている計算です。
人は誰しも人生の最期を迎える以上、どのご家庭においても「相続」という問題に直面することになります。仮に一人の被相続人に相続人が平均2名いるとすれば、年間に 274万人 もの人々が相続を経験していることになります。
実際に行政書士としてご相談を受けていると、多くの方が次のようなお悩みを抱えています。
- どの手続きから始めればよいかわからない
- 銀行や不動産の名義変更はどう進めるのか不安
- 戸籍の集め方や遺産分割協議書の作り方がわからない
相続の手続きは普段の生活ではなじみが薄く、初めて経験する方がほとんどです。そのため、多くの方が戸惑いながら進めざるを得ないのが実情です。
2. 増加する遺言書の利用
高齢社会の進展とともに、生前に遺言を作成する方は年々増加しています。
家庭裁判所に持ち込まれる 自筆証書遺言の検認件数は年間約17,000件。亡くなられた方の約100人に1人が自筆証書遺言を残している計算です。
一方で、公証役場で作成される 公正証書遺言は年間約11万件 に達しており、確実性の高さから利用が拡大しています。特に、江東区のように複数の不動産をお持ちの方や、那覇市のように土地の権利関係が複雑になりやすい地域では、公正証書遺言を選ぶケースが増えています。
遺言を作成しておくことで、相続発生後の争いを未然に防ぎ、残されたご家族の負担を大幅に軽減することができます。
3. 相続にまつわる地域的な特徴
相続の課題は地域によっても異なります。
- 東京都江東区の場合
江東区は再開発が進む一方で、古くからの戸建住宅やマンションも多く、相続財産の中で「不動産の割合が高い」傾向にあります。共有名義での不動産相続が増えると、売却や管理で意見が分かれやすく、紛争につながりやすいのが特徴です。 - 沖縄県那覇市の場合
沖縄は戦後の復興過程で土地の権利関係が複雑化している地域が少なくありません。そのため、相続で土地を受け継いだものの「名義変更が終わっていない」「地図と現況が一致しない」といった問題が頻発します。加えて、本土と比べて親族関係が広いため、相続人の人数が多くなるケースも目立ちます。
いずれの地域においても、相続手続を放置すればするほど、次世代に問題が先送りされてしまいます。早めの準備が重要です。
4. 民事信託(家族信託)の広がり
近年注目を集めているのが 民事信託(家族信託) です。これは、信頼できる家族に財産の管理や承継方法を託す仕組みです。
例えば、次のような場面で活用できます。
- 親が認知症になったときに備え、子どもに財産管理を任せたい
- 不動産を長男、その収益は次男に承継させたいなど、柔軟な承継を希望する場合
- 遺言と同様に、将来の相続を見据えた資産承継設計をしたい場合
成年後見制度と比べて自由度が高く、遺言と比べても生前から効力を発揮する点が魅力です。ただし、信託法の仕組みは複雑で、契約内容の工夫によって結果が大きく変わります。実務経験のある専門家の関与が欠かせません。
5. 相続・遺言・信託を総合的に考える必要性
相続は「発生してから対応する」ものではなく、「生前から備えておく」ことが理想です。
- 遺言は「争いを防ぐための備え」
- 家族信託は「財産を柔軟に管理・承継する仕組み」
- 成年後見制度は「判断能力を失った後の法的保護」
これらを単独で考えるのではなく、複数を組み合わせて総合的に設計することが、これからの相続対策のスタンダードになりつつあります。
江東区や那覇市といった都市部では、不動産の評価額が高くなる傾向があるため、相続税対策の視点も必要です。生前贈与や信託の活用によって、円滑に資産を引き継げる仕組みを早めに整えておくことが望ましいでしょう。
6. まとめ
相続は毎年137万件も発生しており、誰にとっても他人事ではありません。遺言や信託を活用した備えが徐々に広がっていますが、まだまだ十分に普及しているとは言えません。
江東区にお住まいの方は不動産の共有や相続税の課題、那覇市にお住まいの方は土地の権利関係や相続人の多さといった課題に直面しやすいのが現状です。
相続の実態を正しく理解し、生前から計画的に準備しておくことで、将来のトラブルを大きく減らすことができます。遺言や家族信託といった制度は、複雑に見えても実務の工夫次第で大きな効果を発揮します。専門家とともに、自分と家族に最も合った方法を選び、安心できる相続対策を進めていきましょう。
行政書士見山事務所は、遺言作成及び相続手続に精通している事務所です。ぜひお気軽にご相談下さい。