
建設業を続けていると、「新しい業種も手がけたい」「今の業種に関連する工事を自社で請け負いたい」と考える場面が少なくありません。
このようなときに必要となるのが、建設業許可の「業種追加」申請です。
たとえば、内装仕上工事業の許可を受けている会社が、塗装工事や防水工事も請け負いたい場合、これらを「業種追加」として申請します。
逆に、もう行わなくなった業種を削除する場合は「一部廃業届」を提出します。
この記事では、複数業種の追加を効率的に行うための手続きの流れ、要件、注意点を、東京都江東区および沖縄県那覇市での実務に即して詳しく解説します。
1. 業種追加とは ― 「別の業種を新たに許可申請する」手続き
建設業許可は、「建設業法で定められた29業種」ごとに区分されています。
1つの許可を持っていても、その業種以外の工事を請け負うには、別の業種の許可を取得しなければなりません。
たとえば、次のようなケースです。
- 「建築一式工事業」の許可を持つが、「電気工事業」も始めたい
- 「とび・土工工事業」から「舗装工事業」「解体工事業」も追加したい
- 「塗装工事業」と「防水工事業」を併せて請け負いたい
これがいわゆる「業種追加」です。
新規許可申請と似ていますが、すでに一度許可を受けている分、申請手続きの一部が省略できる点が特徴です。
2. 業種追加のメリット ― 許可業者としての成長戦略
業種を追加することで、次のような実務上のメリットがあります。
(1) 受注の幅が広がる
元請・下請のいずれでも、対応できる工事の範囲が拡大します。
たとえば、リフォーム業者が「内装仕上工事業」に加えて「電気工事業」や「管工事業」を取得すれば、ワンストップで受注できる体制を整えられます。
(2) 下請としての競争力が高まる
元請から「複数業種の許可を持っているか」を確認されることがあります。
業種が多いほど、信頼性・対応力の面で高く評価される傾向にあります。
(3) 社内技術者のスキル活用
既に資格を持つ社員や、実務経験豊富な職員がいる場合、その人材を活かして追加許可を取得することが可能です。
3. 業種追加に必要な要件 ― 新規申請と同じ基準で審査される
業種追加では、「経営業務の管理責任者(経管)」や「専任技術者(専技)」に関して、追加業種ごとに要件を満たしているかが再度確認されます。
つまり、業種追加は新規許可申請と同じ審査を受けるということです。
主な要件は次の5点です。
(1) 経営業務の管理責任者(経管)
すでに建設業の経営経験があるため、基本的には既存の経管を引き続き使用できます。
ただし、追加する業種が全く異なる分野(例:建築から電気)である場合、その業種に関連する経営経験が求められることがあります。
(2) 専任技術者(専技)
追加業種ごとに、資格者または実務経験者が必要です。
たとえば、塗装工事を追加する場合、「一級塗装技能士」や「10年以上の塗装工事実務経験者」が該当します。
専任技術者は営業所ごとに常勤である必要があるため、同じ人物を複数業種の専技に兼任させることは原則できません。
(例外的に、同一営業所で資格に重複がある場合は可)
(3) 財産的基礎
新規許可と同様に、自己資本500万円以上または残高証明書での立証が必要です。
決算内容に問題がある場合、資金調達や預金残高で補うことも検討します。
(4) 誠実性・欠格要件
過去に法令違反や税金未納がないか確認されます。
特に、決算変更届の未提出があると受理されないケースがあるため、事前に提出状況を確認しておくことが重要です。
4. 効率的に業種追加するための実務手順
① 現状の許可内容と追加希望業種を整理
まず、自社が現在持っている業種を確認します。
その上で、追加したい業種が「建築一式工事」「土木一式工事」なのか、それ以外の「専門工事業」なのかを明確にします。
29業種のうち、似ていても異なる業種が多いため、どの業種で許可を取るべきかを慎重に選定する必要があります。
② 専任技術者の資格・実務経験を確認
追加業種に対応できる資格者が社内にいるかを確認します。
資格がない場合は、過去10年以上の実務経験を証明できる資料(請負契約書・注文書・請求書など)を用意します。
③ 決算変更届の提出を確認
直近の決算変更届(毎年提出)が未提出の場合、追加申請を受理してもらえません。
提出後、反映まで数日かかることもあるため、追加申請前に必ず完了させておきましょう。
④ 必要書類の準備
追加業種分の技術者証明書類、財務書類、役員・営業所の証明資料などを揃えます。
登記簿謄本や納税証明書は、発行から3か月以内のものを使用します。
⑤ 申請書類の作成・提出
申請先は、
- 東京都の場合:東京都都市整備局 建設業課
- 沖縄県の場合:土木建築部 技術・建設業課
です。
いずれも窓口申請が原則ですが、事前相談を行うと修正の手間が減ります。
⑥ 許可の交付
業種追加の場合も、審査期間はおおむね1~2か月程度です。
許可が下りると、「許可通知書」に追加業種が明記されます。
5. 複数業種を同時に追加する場合の効率的な進め方
業種を1つずつ申請するよりも、複数業種をまとめて申請する方が効率的です。
同時申請のメリットは以下の通りです。
- 書類の共通部分(役員証明書・営業所証明など)を1回で提出できる
- 手数料が1件分で済む(業種数に関係なく)
- 審査期間が一度で完了する
ただし、複数業種を同時に申請する際は、それぞれの業種ごとに専任技術者証明を用意する必要があるため、事前の準備量は増えます。
また、資格証や実務証明の整合性を確認する作業が多くなるため、専門家にチェックを依頼するのが安全です。
6. 業種追加後の届出・維持管理も忘れずに
業種追加後は、新たに許可を受けた業種についても、次のような定期報告義務が生じます。
- 決算変更届(追加業種分を含む)を毎年提出
- 許可更新申請(5年ごと)では全業種をまとめて更新
- 技術者・役員・営業所の変更時には30日以内に変更届出
特に業種を増やすと、営業所の体制管理や書類の保管が複雑になるため、許可管理の仕組みを整えておくことが重要です。
7. 東京都・沖縄県の申請における実務的な違い
東京都江東区の事業者
東京都は業者数が全国最多であり、審査基準も非常に厳格です。
申請書の記載ミスや証明資料の不足により、受理まで数回の修正を求められるケースも珍しくありません。
事前相談制度を活用し、受付担当者に確認してから正式提出するのが確実です。
沖縄県那覇市の事業者
沖縄県の建設業許可は、土木建築部 技術・建設業課が所管しています。
那覇市にある本庁の窓口での申請が基本ですが、離島地域の事業者向けには郵送対応も一部認められています。
ただし、添付書類の原本確認が必要な場合は、事前調整が必要です。
8. まとめ ― 効率的な業種追加で事業を拡大するために
業種追加は、建設業許可を取得した後の次の成長ステップです。
しかし、「追加」とはいえ新規申請と同様の要件審査を受けるため、準備不足ではスムーズに進みません。
効率的に申請を進めるためには、
- 現状の許可と希望業種を整理する
- 専任技術者・経管の要件を早めに確認する
- 決算変更届を事前に提出しておく
- 複数業種はまとめて申請して時間と費用を節約する
- 申請書類は正確に整えて提出する
という5つの手順を意識することが大切です。
東京都江東区・沖縄県那覇市いずれの事業者でも、適切な準備を行えば、業種追加は事業拡大の大きなチャンスになります。
今後の受注体制を見据えて、早めに業種追加の検討を始めてみてはいかがでしょうか。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所へお気軽にご相談下さい。

