
建設業許可の取得を検討している事業者様にとって、避けて通れないのが「専任技術者」の要件です。東京都江東区や沖縄県那覇市で新規に建設業を始めようとする中小事業者様からも、「専任技術者の基準がわかりにくい」「どのように実務経験を証明すればいいのか」といったご相談をいただくことが少なくありません。
この記事では、建設業法に基づく専任技術者の定義から、資格・実務経験による要件の詳細まで、わかりやすく丁寧にご説明いたします。
1. 専任技術者とは?営業所に常駐する技術的責任者
建設業許可を取得するには、営業所ごとに1名以上の「専任技術者」を配置する必要があります。これは、許可を取得する事業者が技術的にも一定の水準を備えていることを示すための要件です。
専任技術者は、その営業所において常勤でなければなりません。つまり、以下のようなケースは認められません。
- 他社の従業員と兼務している
- 別の営業所でも専任技術者を務めている
- 実際には出勤していない非常勤勤務者である
東京都江東区や沖縄県那覇市では、建設業の営業所として認められるために、専任技術者が実際にその場にいて日常業務に従事していることが必須です。
2. 専任技術者の要件は、一般建設業と特定建設業で異なる
専任技術者の基準は、「一般建設業」と「特定建設業」とで異なります。
一般建設業の場合
一般建設業の専任技術者になるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
a. 国家資格などを取得している者
建設業法に定められた「技術職員資格区分表」に記載されている資格を有している方は、その資格だけで専任技術者の要件を満たします。たとえば以下のような資格が該当します。
- 一級・二級建築士
- 一級・二級施工管理技士(建築、電気工事、土木など)
- 技術士(建設部門など)
注意点として、民間資格や職長教育などは対象外です。たとえ実務に役立つ資格であっても、法律上の要件を満たすものではないため、申請に使うことはできません。
b. 実務経験10年以上
資格がない場合でも、該当する工事業種について10年以上の実務経験があれば専任技術者になれます。
ここでの「実務経験」とは、現場での施工管理や作業指導、図面作成などの技術的業務を行ってきた経験を指します。単なる肉体労働では要件を満たしません。
c. 高校等(1年制専門学校・中等教育学校含む)の指定学科卒業後、5年以上の実務経験
高等学校や1年制の専門学校などで、建設業法に定められた指定学科(建築、土木、電気など)を卒業していれば、5年の実務経験で要件を満たせます。
この場合、卒業証明書だけでなく、履修科目証明書の提出も必要です。科目名や授業内容によっては「指定学科と見なされない」可能性があるため、申請前に確認が必要です。
d. 大学等(2年制専門学校含む)の指定学科卒業後、3年以上の実務経験
2年制以上の専門学校や大学等を卒業している場合は、3年の実務経験で足ります。短大・高専・旧専門学校も対象です。
学歴が高くなるほど、必要な実務経験年数が短くなるのが特徴です。
e. 旧実業学校・旧専門学校の卒業程度検定合格者
実際に卒業していなくても、相当の学力があると認められる卒業程度検定に合格し、一定の実務経験があれば専任技術者となることができます。
- 実業学校卒業程度検定合格後 → 5年以上の実務経験
- 専門学校卒業程度検定合格後 → 3年以上の実務経験
f. 国土交通大臣が個別に認定した者
これは非常に例外的な制度であり、実務的にはほとんど使われていません。特殊なケースとして位置づけられています。
3. 特定建設業の場合の専任技術者要件
特定建設業は、下請契約の総額が4500万円以上になるような大規模工事を元請として請け負う場合に必要な許可です。その分、専任技術者の要件も厳しくなっています。
a. 特定建設業用の国家資格者であること
建設業法に定められた表に掲載された特定建設業対応の国家資格者であることが条件です。一般建設業よりも高度な資格が求められる点に注意してください。
b. 一般建設業の実務経験者であり、元請としての指導監督的実務経験が2年以上ある者
国家資格がない場合でも、以下の条件を満たせば特定建設業の専任技術者になれます。
- 一般建設業の専任技術者としての要件(b~e)を満たしている
- 4500万円以上の元請工事において、工事現場の指導監督を2年以上経験している
なお、金額の要件は時代により変動しており、以下のような区分があります。
工事の時期 | 必要な元請金額 |
昭和59年9月以前 | 1500万円以上 |
昭和59年10月~平成6年12月 | 3000万円以上 |
平成7年1月以降 | 4500万円以上 |
指導監督的実務経験とは、単なる作業員ではなく、現場の責任者として技術指導や工程管理を担った経験のことです。証明書類としては、工事経歴書、注文書・請書、現場写真などを添付する必要があります。
c. 国土交通大臣の個別認定
こちらも非常に稀なケースであり、ほとんどの事業者様には関係ありません。
4. 実務経験の証明方法と注意点
実務経験を要件として専任技術者になろうとする場合、その経験を証明する書類が不可欠です。以下のような資料が代表例です。
- 工事契約書・注文書・請書
- 請求書や領収書
- 施工体制台帳・安全衛生協議会議事録
- 雇用契約書・給与明細・社会保険証明
- 工事現場の写真(本人が写っているもの)
書類に不備があると、審査が長引いたり、不許可となることもあるため、準備には細心の注意を払う必要があります。
5. 専任技術者の選任をスムーズに進めるために
東京都江東区や沖縄県那覇市では、地元の中小建設事業者が家族経営など少人数体制であることも多く、専任技術者の確保が最大のハードルになるケースもあります。
次のような点を押さえて、対応を検討することをお勧めします。
- 社内に国家資格を保有する技術者がいないか再確認する
- 実務経験10年以上の職人がいないか洗い出す
- 指定学科の卒業者がいないかを卒業証明書で確認する
- 実務経験を証明できる資料が揃っているかチェックする
まとめ
建設業許可申請における「専任技術者」は、制度の根幹をなす存在です。資格を持っていない方でも、実務経験を証明すれば許可取得が可能となるケースも少なくありません。とはいえ、実務経験を「証明する」には手間と工夫が求められます。
東京都江東区・沖縄県那覇市の事業者様にとっても、専任技術者の確保と証明資料の整理は、許可取得への第一歩です。適切な確認と準備を行い、建設業のさらなる発展を目指していきましょう。