
建設業許可の取得にあたっては、いくつかの要件を満たす必要がありますが、その中でも「財産的基礎」はとくに実務上の確認・対応が必要な項目です。本記事では、東京都江東区および沖縄県那覇市の建設業者の皆様向けに、財産的基礎を証明するための書類の収集・作成方法について、わかりやすく解説します。
1. 財産的基礎の要件とは?
建設業許可における「財産的基礎」とは、申請時点で一定の経済的体力があることを求める要件です。これは、建設工事が高額な契約を伴う性質上、資金力のある業者が参入することで発注者や下請業者の保護を図る目的があります。
財産的基礎の具体的な基準は、取得する許可の種類により異なります。
一般建設業の場合
次のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 直近5年間、継続して建設業許可を保持し営業していること
特定建設業の場合
以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと(欠損比率20%以下)
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上あること
- 自己資本が4,000万円以上あること
2. 自己資本を証明するための書類
最も一般的なのは「自己資本」での証明です。
2-1. 決算書の「貸借対照表」
企業の財務状況を確認するために、「直近の決算書」を提出します。とくに注目されるのは「貸借対照表(バランスシート)」です。
- 右下の「純資産の部」にある「純資産合計」が自己資本とみなされます。
- この「純資産合計」が500万円以上あれば、一般建設業の財産的基礎はクリアです。
- 特定建設業の場合は、これが4,000万円以上である必要があります。
2-2. 決算書の作成と注意点
税理士が作成した決算書を用意しますが、税務署提出用の決算書と、建設業許可用の書式は若干異なります。可能であれば、建設業用に調整された決算書の作成を依頼しましょう。
3. 資金調達能力を証明する方法
自己資本が基準に満たない場合でも、500万円以上の資金調達能力を証明すれば、許可申請は可能です。
3-1. 銀行残高証明書
- 自社の預金口座の残高証明書(500万円以上の残高があること)を取得します。
- 通常、銀行窓口に申請し、数日以内に発行されます。
- 発行日から3カ月以内のものが有効とされます。
3-2. 金融機関の融資証明書
- 銀行からの融資を受ける見込みがある場合、「融資内定通知書」「借入可能証明書」を取得します。
- 書式は各金融機関により異なりますので、取得前に申請先の建設業許可窓口へ相談しましょう。
- 融資金額が500万円以上であれば証明可能です。
3-3. 書類作成の注意点
- 銀行名・口座名義・発行日などが明記されていること。
- 複数口座を合算することも可能ですが、全ての証明書を添付する必要があります。
4. 継続的営業実績による証明
既に許可を受けており、過去5年間にわたり営業実績がある事業者は、原則として財産的基礎を有しているとみなされます。
4-1. 対象者
- 過去に建設業許可を取得しており、5年以上の期間、許可の更新を繰り返しながら営業してきた事業者。
- この場合、申請時の財産的基礎を一から証明する必要はありません。
4-2. 証明に必要な書類
- 過去の建設業許可通知書の写し
- 5年分の更新履歴や届出記録(提出日・受付印入り)
- 事業継続の証明として、過去の決算書類等が求められる場合もあります
5. 特定建設業のための財務要件書類
特定建設業許可を申請するには、以下の数値が直近の決算書に反映されていなければなりません。
要件 | 証明方法 |
資本金2,000万円以上 | 定款、登記簿謄本、決算書(資本金欄) |
自己資本4,000万円以上 | 決算書(貸借対照表の純資産) |
欠損比率20%以下 | 【(資本金-欠損金)÷資本金】で20%以上にならないこと |
流動比率75%以上 | 【流動資産÷流動負債】×100で75%以上 |
5-1. 財務指標の計算方法
- 欠損比率や流動比率の数値は、建設業法で明確に定められています。
- 誤った計算をすると不受理になる可能性がありますので、税理士と連携して算定してください。
6. まとめ 事前確認と専門家の協力がカギ
財産的基礎の証明は、建設業許可申請の成功可否を大きく左右する要素です。書類の収集や作成には、金融機関、税理士、行政書士などの協力が不可欠です。次のポイントを押さえながら、万全の準備を整えましょう。
- 最新の決算書を正確に用意する
- 資金調達の裏付けを確保する
- 申請先窓口の書類要件を確認する
- 不明点は行政書士に相談する
とくに東京都江東区や沖縄県那覇市では、地域により受付機関や対応の違いもあります。最新の情報を確認した上で、正確な手続きができるようにしましょう。