認知症対策型の家族信託とは?~那覇市・江東区で相続や遺言を考える方へ~

沖縄県那覇市でも東京都江東区でも、高齢化が進む中で「親がもし認知症になったらどうしよう」というご相談を受ける機会が増えています。特に、相続手続や遺言に関連する財産の大半が「自宅不動産」であるご家庭では、認知症によって不動産が売却できなくなるリスクが非常に大きな問題となります。

このような不安に対して注目されているのが、「認知症対策型の家族信託」です。本記事では、成年後見制度との違いや、実際にどう活用できるのかをわかりやすくご紹介します。

目次

1. 認知症と不動産売却の問題点

成年後見制度を使う場合

親が認知症になり、不動産の売却が必要になったとします。

例えば、

  • 施設入所費用を捻出するため
  • 空き家を維持できず処分したい場合

しかし、この場合、本人には売買契約を結ぶ能力がなくなるため、成年後見制度を利用しなければ売却できません

後見制度を利用すると、家庭裁判所が選任した後見人が代理で売却手続きを行えますが、次のような制約があります。

  • 不動産売却には家庭裁判所の許可が必要
  • 売却の「必要性」を証明する必要あり
  • 弁護士や司法書士などの専門職が後見人の場合、報酬が高額になりがち

また、成年後見制度の申立手続き自体も複雑で、数か月かかることも珍しくありません。

問題の本質

つまり、「いざ売却したい」と思ったときには、もう手遅れになっているケースが多いのです。

2. 家族信託でできる「認知症対策」

そこで登場するのが、家族信託という仕組みです。

基本的な仕組み

  • 親(委託者)が元気なうちに、信頼できる子(受託者)と信託契約を結ぶ。
  • 自宅不動産を信託財産として子に託す。
  • 親は引き続き自宅に住み続ける権利を保持。
  • 売却が必要になった場合は、子が受託者として売却手続きを行える。
  • 売却代金は信託財産として管理され、親の生活費や施設費用に充てられる。

これにより、認知症による財産凍結リスクを回避し、円滑に資産を活用できるのです。

3. 認知症対策型家族信託のメリット

  1. 成年後見制度を利用せずに済む
    → 裁判所の関与を避け、スムーズに不動産処分が可能。
  2. 売却資金を本人の生活に充てられる
    → 施設費用、医療費、生活費に柔軟に対応できる。
  3. 親は住み続ける権利を確保できる
    → 信託契約で「居住権」を定めれば、売却されるまで安心して生活できる。
  4. 将来の相続設計にもつながる
    → 売却後の資金を誰にどのように承継するかも契約で決めておける。

4. 成年後見制度との比較

項目成年後見制度家族信託(認知症対策型)
利用開始時期判断能力低下後判断能力があるうち
不動産売却裁判所の許可が必要受託者が契約で可能
費用申立費用+後見人報酬(年24万~70万程度)契約時の専門家費用(30万~80万程度)+登記費用
柔軟性投資や相続税対策は不可売却、運用、承継設計も可能
本人の生活支援身上監護ありなし(別途任意後見を併用可能)

5. 具体的な利用事例

事例① 那覇市のケース

  • 80代女性、那覇市内に自宅不動産(評価額1,800万円)のみ所有。
  • 施設入所を検討中。
  • 子と家族信託を締結し、自宅を信託財産に設定。
  • 受託者である子が将来必要に応じて売却し、施設費用に充当できる。

→ 成年後見制度を使う場合に比べ、迅速かつ低コストで対応可能。

事例② 江東区のケース

  • 70代男性、江東区の自宅マンション(評価額4,000万円)と預金500万円所有。
  • 将来、妻が一人で残る可能性があり、生活費確保が不安。
  • 子を受託者とする家族信託を締結。
  • マンション売却後の資金を妻の生活費に使えるよう設計。

→ 不動産価格が高い江東区では、売却益を生活費に回す設計が特に有効。

6. 注意点・デメリット

  1. 身上監護はできない
    → 介護契約や医療同意は後見制度や任意後見と併用が必要。
  2. 契約締結には判断能力が必要
    → 認知症が進行しすぎると信託契約は不可能。早めの準備が重要。
  3. 税務上の注意
    → 信託内容によっては贈与税が発生する可能性があるため、専門家のチェックが必要。
  4. 専門家費用がかかる
    → 契約書作成、公証役場手数料、不動産登記費用などが必要。

7. 那覇市・江東区での実務ポイント

  • 那覇市:地縁関係が強く、親族受託者を前提とするケースが多い。専門職による信託監督人を設けると安心感が増す。
  • 江東区:不動産価値が高く、相続税対策を兼ねた家族信託の需要が大きい。売却益の運用も視野に入れた設計が必要。
  • いずれの地域でも、公証役場や登記所の手続きは混み合うため、スケジュール管理が重要。

まとめ

  • 認知症によって不動産が売却できなくなるリスクは、沖縄でも東京でも共通の課題です。
  • 成年後見制度は有効な制度ですが、制約や費用面の負担も大きいのが実情です。
  • 認知症対策型の家族信託を活用すれば、財産凍結を回避し、安心して老後を迎えることができます。
  • ただし、信託契約には判断能力が必要であるため、「まだ元気なうち」に準備することが最大のポイントです。

那覇市や江東区で「親の財産管理をどうしたらいいか」「将来の相続や遺言も含めて早めに準備したい」と考えている方は、一度専門家にご相談されることをおすすめします。

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