
1.「昔から無許可でやっているから大丈夫」という考えの落とし穴
建設業の現場では、今でも
「昔からの付き合いがあるから」
「元請が仕事を回してくれるから」
「今まで何も言われたことがないから」
という理由で、建設業許可を取得せずに営業を続けている事業者が少なくありません。
実際に私が関与したケースでも、
「建設業許可は持っていないが、長年の取引先がいるので特に困っていない」
「無許可でも仕事が回ってくるから、あえて取る必要を感じない」
と話されていた事業者がいました。
しかし、そのような状態が続くのは、あくまで「たまたま問題が表面化していないだけ」に過ぎません。
建設業法では、一定額以上の工事を請け負う場合、建設業許可を取得していなければならないと定められています。
そして、役所は「知らなかった」「昔からやっている」という事情を理由に、違反を見逃してくれるわけではありません。
2.ある日突然来る「建設業法違反の調査連絡」
その事業者も、長年特に問題なく営業を続けていました。
ところが、ある日突然、地域を管轄する建設業者の監督部署から一本の連絡が入ります。
内容は
「建設業法違反の疑いがあるため、調査を行いたい」
というものでした。
東京都江東区であれば東京都の担当部署、
沖縄県那覇市であれば沖縄県の土木建築部 技術・建設業課といった、
建設業を監督する行政機関が窓口になります。
この時点で、多くの事業者は強い不安を感じます。
「なぜうちが?」
「今まで問題なかったのに」
「罰金や営業停止になるのではないか」
といった心配が一気に押し寄せるからです。
3.役所は定期的に建設業者をチェックしている
建設業者の監督部署は、日常的に何もしていないわけではありません。
各地域において、建設業法違反がないかを確認するため、定期的に事業者の状況を把握しています。
チェックのきっかけは様々です。
例えば
・発注者や元請業者からの情報提供
・同業他社からの通報
・公共工事や補助金申請の過程での発覚
・現場の掲示物や契約関係書類の確認
など、意外なところから無許可営業が判明することもあります。
特に最近では、コンプライアンス意識の高まりから、
「無許可業者と取引すること自体がリスク」
と考える元請業者や発注者が増えています。
その結果、行政へ情報が入るケースも珍しくありません。
4.調査で何が確認されるのか
役所の調査では、主に次のような点が確認されます。
・過去に請け負った工事の内容
・工事金額が建設業許可を要する金額に該当していないか
・請負契約書、請求書、入金履歴の有無
・継続的に建設業を営んでいるかどうか
ここで重要なのは、
「建設業許可を持っていないこと自体」だけでなく、
「許可が必要な工事を実際に行っていたかどうか」
が判断材料になる点です。
無許可であっても、500万円未満の軽微な工事のみを行っていたのであれば、
違反に該当しない場合もあります。
しかし、金額を超えていれば、意図していなくても建設業法違反となってしまいます。
5.指導で済む場合と、重い処分になる場合の違い
建設業法違反が確認された場合、処分の内容は一律ではありません。
違反の程度が軽い場合
・口頭による指導
・文書による指導や注意
で終わることもあります。
一方で、
・明らかに許可が必要な工事を繰り返し行っていた
・悪質性が高い
・是正指導に従わない
といったケースでは、指示処分や営業停止、最悪の場合は刑事罰が科される可能性もあります。
実際に、毎年のように
「建設業法違反(無許可営業)で書類送検」
といったニュースが報道されています。
6.今回のケースは「運が良かった」だけ
今回ご紹介しているケースでは、
調査の結果、近年は建設業許可が必要となる金額の工事を受注していなかったことが確認されました。
そのため、処分としては
口頭による指導のみ
で終わることになりました。
しかし、これは決して
「無許可でも問題なかった」
という話ではありません。
たまたま条件が重ならず、
たまたま重い処分に至らなかっただけです。
もし一件でも基準を超える工事が確認されていれば、結果は大きく変わっていた可能性があります。
7.指導をきっかけに、すぐ建設業許可を取得
口頭指導を受けた後、その事業者は強い危機感を持たれました。
「次に同じことがあれば、もう言い訳は通用しない」
「今後の取引にも影響が出る」
そう判断され、すぐに建設業許可の取得を決断されました。
私が行政書士として申請をサポートし、要件を一つ一つ確認しながら、無事に建設業許可を取得することができました。
許可取得後は
・元請業者からの信頼が高まった
・堂々と営業できるようになった
・将来的な事業拡大を考えやすくなった
と、精神的にも経営的にも大きなメリットを感じておられます。
8.東京都江東区・沖縄県那覇市の事業者の方へ
東京都江東区や沖縄県那覇市は、住宅工事、改修工事、公共工事など、建設需要が安定している地域です。
それだけに、行政のチェックも決して甘くありません。
「今まで何もなかったから大丈夫」
「知り合いの紹介だけで仕事をしているから問題ない」
そう考えているうちに、ある日突然、調査の連絡が入る可能性は十分にあります。
9.まとめ 調査が来てからでは遅い
建設業許可は、問題が起きてから慌てて取るものではありません。
無許可営業が発覚した後では、選択肢が大きく狭まることもあります。
今回のケースは、
「たまたま指導で済んだ」
というだけで、非常に綱渡りの状態でした。
もし少しでも
・将来の事業継続に不安がある
・工事金額が基準を超えそう
・元請から許可取得を求められている
と感じているのであれば、早めに建設業許可の取得を検討することが、事業を守る一番の近道です。
東京都江東区、沖縄県那覇市で建設業を営む皆さまが、安心して事業を続けられるよう、正しい知識を持ち、適切なタイミングで許可を取得することを強くおすすめします。

