
相続手続を進めるうえで、多くの方が最初に直面する壁が「戸籍の収集」です。
特に、被相続人(亡くなった方)の本籍地が複数回変更されていたり、相続人が全国に散らばっていたりする場合、戸籍集めは一筋縄ではいきません。
「戸籍って何通必要なの?」「どこに請求すればいいの?」「本籍地が全国バラバラなんだけど……」
こうした疑問や不安をお持ちの方に向けて、今回は相続手続に必要な戸籍の集め方について、わかりやすく解説します。
1.なぜ相続手続に戸籍が必要なのか?
相続が発生したとき、銀行や法務局などの各種手続においては、「誰が法定相続人なのか」を証明する必要があります。そのために使われるのが戸籍です。
戸籍を通じて、以下のような事実を証明します。
- 被相続人が亡くなったこと(死亡の事実)
- 誰がその子・配偶者・兄弟姉妹であるか(法定相続人の特定)
- すでに亡くなっている相続人がいないか(代襲相続の有無)
そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍すべて、および相続人全員の現在の戸籍が必要になります。
2.集めるべき戸籍の具体例
戸籍と一口にいっても、実際に必要な書類にはいくつか種類があります。
● 被相続人について必要なもの
種類 | 内容 |
戸籍謄本(現在戸籍) | 亡くなった時点での最新の戸籍。死亡の記載あり。 |
除籍謄本 | 結婚や死亡などにより戸籍から除かれた際の記録。 |
改製原戸籍 | 戸籍制度の変更により作成された古い形式の戸籍(特に昭和・平成の改製時)。 |
ポイントは、「出生から死亡までの連続した戸籍」をすべて揃えること。空白があると、「本当に他に相続人がいないのか」が証明できなくなります。
● 相続人について必要なもの
- 現在の戸籍謄本(被相続人との続柄を証明するため)
- 代襲相続がある場合、その該当者の戸籍(死亡や親子関係を証明)
3.本籍地がバラバラな場合の対応方法
被相続人が転籍(本籍地の変更)を繰り返していた場合、その都度別の自治体に戸籍が保存されていることになります。これが、「戸籍がバラバラで面倒」といわれる理由です。
● 例:本籍が変更されたケース
被相続人の人生の中で、本籍が以下のように変わっていた場合
- 昭和40年:沖縄県那覇市
- 昭和55年:東京都江東区
- 平成10年:千葉県市川市
- 令和元年:東京都江東区
この場合、それぞれの自治体に戸籍が保管されている可能性があり、4か所すべてに請求が必要になることもあります。
4.戸籍の取り寄せ方法|窓口・郵送・オンライン
戸籍は、以下のいずれかの方法で取り寄せることができます。
(1)役所の窓口で直接取得
該当する市区町村役所の戸籍課で請求できます。必要書類と手数料を持参しましょう。
必要なもの(一例)
- 請求者の本人確認書類(運転免許証など)
- 委任状(代理人が請求する場合)
- 相続関係がわかる書類(被相続人との関係性を証明)
(2)郵送での請求
遠方の場合は郵送請求が便利です。
封入するもの
- 請求書(各自治体で様式あり)
- 本人確認書類のコピー
- 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)
- 返信用封筒(切手貼付・住所記載)
(3)オンライン請求(※一部自治体のみ)
令和6年時点では、マイナンバーカードを使ったオンライン請求も一部で可能になっています。ただし、利用可能な自治体は限定的です。
※江東区・那覇市については、最新の対応状況を各自治体ホームページでご確認ください。
5.戸籍収集の際の注意点
● 「一筆申請」で前籍をたどる
最新の戸籍には「前籍地・除籍年月日」が記載されています。その情報を元に、次の自治体へ請求を出す……という流れで、出生まで遡ることが可能です。
● 古い戸籍は読みづらい
改製原戸籍(昭和以前の戸籍)は手書きで、読みづらい上に、旧漢字や旧住所が使われていることもあります。内容を読み解くには、ある程度の知識が必要です。
● 相続人が遠方・高齢の場合は専門家に任せるのも選択肢
複数の自治体にまたがる戸籍の収集は、時間も手間もかかります。こうした場合、行政書士などの専門家に戸籍収集を依頼することで、スムーズかつ正確に進めることができます。
6.江東区・那覇市での実務的な戸籍収集ポイント
【東京都江東区】
- 窓口:江東区役所 区民課 戸籍係(本庁舎)
- 郵送請求先:〒135-8383 東京都江東区東陽4-11-28 江東区役所 区民課戸籍係 宛
- オンライン請求:2025年時点で対応準備中(マイナポータル要確認)
【沖縄県那覇市】
- 窓口:那覇市役所 ハイサイ市民課(本庁舎)
- 郵送請求先:〒900-8585 沖縄県那覇市泉崎1-1-1 那覇市役所 ハイサイ市民課 宛
- オンライン請求:限定的に開始済(マイナポータルまたは那覇市HPをご確認ください)
7.まとめ 戸籍の集め方は「根気」と「戦略」が必要
戸籍の収集は、相続の出発点として極めて重要な作業です。正確に、そして効率よく行うために、以下のポイントを押さえておきましょう。
● この記事のまとめ
- 相続では「被相続人の出生から死亡までの戸籍」と「相続人全員の現在戸籍」が必要
- 本籍地が変更されている場合は、各自治体に請求を行う
- 戸籍の請求は、窓口・郵送・一部オンラインで対応可能
- 改製原戸籍などは読みづらいため注意
- 江東区・那覇市それぞれに郵送請求窓口あり
- 面倒な場合は行政書士などの専門家に依頼するのも有効
相続の戸籍集めは「思った以上に時間がかかる」と感じる方が多い分野です。早めに着手し、ミスなく集めることが、その後の相続手続全体をスムーズに進めるカギとなります。