相続人同士で評価額が食い違う?不動産の評価方法とその影響について

相続財産に不動産が含まれている場合、相続人同士で「この不動産はいくらの価値があるのか」という意見が食い違うことは少なくありません。

現金や預貯金とは異なり、不動産には明確な市場価格がないため、評価方法によって価値が変動します。特に那覇市や東京都江東区など、地価が高めのエリアでは、不動産の評価が相続に与える影響も大きくなります。

この記事では、遺産分割協議における不動産の評価方法の違いと、相続税計算上の評価との違い、さらには実務で起こりがちなトラブルとその回避方法について詳しく解説します。

目次

1.なぜ不動産の評価で揉めるのか

不動産の価値は「誰が、どの方法で評価するか」によって異なります。相続人が複数いる場合、それぞれの立場や目的によって希望する評価方法が違い、結果として遺産分割協議がまとまらない原因となることがあります。

例えば、ある相続人は「相続税評価額で分けたい」と主張し、別の相続人は「実際に売ったらもっと高いのではないか」と反論するといった具合です。

こうした意見の食い違いを解消するためにも、評価方法の種類と特徴を理解することが重要です。

2.遺産分割協議における不動産評価の4つの方法

相続税の申告とは異なり、遺産分割協議では評価方法の法的な決まりはありません。相続人間の合意によって自由に評価方法を選ぶことができます。

ここでは、実務上よく使われる4つの評価方法を紹介します。

1.固定資産税評価額による評価

もっとも一般的な評価方法で、多くの自治体から毎年送られてくる納税通知書に記載されている評価額を基準とする方法です。

評価額が比較的低く設定されているため、相続人間で大きな争いがない場合に採用されやすい傾向があります。建物も土地も一貫してこの評価方法で判断できる点が実務上の利点です。

2.路線価による評価(相続税評価額)

国税庁が定める路線価をもとに土地の価値を評価する方法で、相続税の申告時に使われる基準です。

土地については路線価、建物については固定資産税評価額を使うのが一般的です。固定資産税評価額よりもやや高めになる傾向があります。

将来の税務申告を見据えて「公平性のある評価方法」として選ばれることが多いですが、土地の形状や接道状況などで評価が大きく変わることもあります。

3.公示地価(地価公示価格)による評価

国土交通省が毎年発表している「標準的な土地の価格」です。路線価よりもさらに高く設定されることが多く、市場価格に近いと言われています。

とはいえ、あくまで基準地の価格なので、個々の不動産の実情を完全には反映しないため、実際の売却価格とは差が出る場合もあります。

4.実勢価格(実際の売却可能価格)による評価

不動産会社や不動産鑑定士が査定し、現在の市場で実際に売れるであろう価格を基準とする方法です。

もっとも現実的な価格ですが、相続人が不動産の売却を望まない場合や、査定の依頼先によって評価にばらつきが出ることもあります。場合によっては複数の査定を取る必要があります。

3.評価方法による価格差の実例

仮に、江東区の土地付き住宅を評価する場合で見てみましょう。

  • 固定資産税評価額:3,000万円
  • 路線価による評価:3,600万円
  • 公示価格:4,000万円
  • 実勢価格:4,500万円

このように、同じ不動産であっても評価方法が異なるだけで1,500万円もの差が生じることがあります。評価額に差が出るということは、相続人ごとに取得する財産の価値にも差が出るということです。

遺産分割協議では「公平性」や「納得感」が重要になるため、評価方法の選定は慎重に行う必要があります。

4.相続税の計算で用いる評価方法

相続税の申告をする際には、評価方法が法律で定められており、自由に選ぶことはできません。

  • 土地:路線価(または倍率方式)による評価
  • 建物:固定資産税評価額による評価

このように、相続税評価は税法上のルールに基づいて一律の基準で評価されるため、遺産分割協議上での評価と差が出ることが多くなります。

たとえば、協議では実勢価格に基づいて分割したが、相続税の申告では路線価で評価するため、取得した財産の評価額に不均衡が生じ、納税額に差が出るケースもあります。

5.実務でよくあるトラブルとその対応策

評価方法をめぐる相続人間の対立

ある相続人が「実勢価格で評価すべきだ」と主張し、別の相続人は「固定資産税評価額で十分」と考えるといったケースは非常に多く見られます。

このような場合、第三者的な専門家(不動産鑑定士や行政書士)を交えて協議を進めることで、客観性を確保しやすくなります。

相続税負担の不公平

相続人ごとに取得する不動産と金融資産のバランスによって、相続税額が不公平になることもあります。

このような場合には「代償分割」という方法を検討します。不動産を取得した相続人が、他の相続人に対して金銭を支払うことで公平性を保つ方法です。

相続税評価よりも協議上の評価が高くて損をしたと感じる

相続税申告では路線価で3,000万円の評価だった土地を、協議上は実勢価格4,000万円で分割した場合、実際に現金でその差額分を渡した側が「損をした」と感じることがあります。

こうした感情的なすれ違いを避けるためにも、「相続税評価を基準にする」か「実勢価格を参考に査定書を取り交わす」などの工夫が有効です。

6.評価方法をどう決めるべきか

どの評価方法を採用するかは、相続人間の関係性や今後の財産活用(売却・賃貸・共有など)によって判断されます。

一般的な判断基準としては、次のとおりです。

  • 相続人間で争いがない場合:固定資産税評価額や路線価評価で円満に協議
  • 不動産の売却を予定している場合:実勢価格での査定を重視
  • 遺産の平等分配を強く求める場合:複数の評価方法を併用し調整

不動産の評価は専門性が高いため、協議が難航しそうな場合は、行政書士や不動産鑑定士に早い段階で相談することが有効です。

まとめ

不動産の評価は、相続手続きの中でもとくに慎重な取り扱いが求められる項目です。評価方法によって数百万円から数千万円単位の差が生じることがあり、これが相続人間の不公平感や感情的な対立を招く原因になります。

相続税の申告に使う評価方法と、遺産分割協議で使う評価方法が異なることも多いため、両者を明確に分けて理解することが必要です。

那覇市や江東区など不動産価格の高い地域では、少しの評価差が大きな納税額や相続争いにつながることもあります。評価に悩んだら、まずは相続に強い専門家にご相談ください。

当事務所では、不動産の評価方法のご提案から遺産分割協議書の作成、相続税評価に基づく財産目録の作成まで、相続手続き全般をサポートしております。

那覇市や江東区などの地域特性を踏まえた評価・分割のご提案も可能です。相続人同士での意見の食い違いに悩まれている方も、どうぞお気軽にご相談ください。

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