
目次
1. はじめに
建設業許可申請では、経営業務の管理責任者(経管)の要件を満たしているかどうかを証明する必要があります。
その中でも「適切な経営体制」に関する確認資料は、申請書の中核を成す部分であり、不備があると申請が差し戻され、許可取得が遅れる大きな原因になります。
特に沖縄県那覇市や東京都江東区の事業者様は、地域ごとの審査の特徴や資料取得の方法に違いがあり、スムーズに揃えるためには事前準備が不可欠です。
この記事では、過去の役職歴や建設業経営経験を証明するための資料について、取得方法・注意点・地域特有のポイントを交えて詳しく解説します。
2. 「適切な経営体制」確認資料とは何か
建設業許可の経営業務の管理責任者の要件は、以下のいずれかを満たすことが必要です。
- 常勤役員のうち1人が、過去に取締役・理事・執行役員などの経営に関与する役職を務めた経験がある
- または経営業務の管理責任者を補佐する地位で、一定期間以上の経験がある
加えて、その役職に就いていた期間中に、建設業を営んでいたことを示す資料も必要です。
つまり、「役職歴」と「建設業経営経験」の両方を証明するセット資料を用意する必要があります。
3. 役職名等を確認するための資料
3-1. 取締役としての経験を証明する場合
提出書類の基本
- 履歴事項全部証明書(法人登記簿謄本)
- 閉鎖事項証明書(過去の法人や解散済法人の場合)
ポイント
- 履歴事項全部証明書には、通常、過去3年分の役員就任・退任歴が記載されます。
- 3年以上前の履歴や解散した法人の情報は、「閉鎖事項証明書」で確認します。
取得先
- 法務局(那覇地方法務局、江東区は東京法務局江東出張所が便利)
- 取得は窓口・郵送・オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)いずれも可能
注意点
- 法人名や代表者名が変更されている場合は、変更履歴も含めて取得
- 複数の会社で経験を積んだ場合は、すべての会社分を用意
3-2. 理事としての経験
一般社団法人や財団法人などでの理事経験も有効です。
必要資料
- 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 閉鎖事項証明書(法人が解散している場合)
留意点
- 建設業を営んでいた期間と役職期間が重なっているかを確認
- 理事名義であっても、実態として建設業の経営に関与していたことを証明できる書類(契約書や営業報告書等)が補足として有効
3-3. 執行役員としての経験
株式会社等の執行役員も対象になりますが、登記簿には役職名が記載されない場合があります。
必要資料の例
- 会社が発行した辞令・役員名簿・組織図
- 社内規程(執行役員の権限規程)
- 任命や解任に関する議事録
注意点
- 公的書類に記載がないため、証拠能力の高い社内資料を整備
- 辞令や人事記録は発行日・氏名・役職名・任命者が明記されているものが望ましい
3-4. 経営業務補佐の役職経験
経営業務の管理責任者を直接補佐する役職(工事部長、営業部長など)も、一定条件を満たせば対象となります。
必要資料の例
- 辞令、人事発令通知書
- 勤務期間が分かる出勤記録・給与台帳
- 工事契約書や請求書等、実際に業務を行っていた証拠
ポイント
- 単なる肩書ではなく、実質的に経営業務を補佐していたことがわかる証拠が必須
- 工事発注者や下請業者とのやり取り記録も有効
4. 建設業を営んでいた期間の証明資料
役職歴が確認できても、その期間中に建設業を行っていた事実を証明できなければ要件を満たせません。
主な証明資料
- 過去の建設業許可通知書や許可証写し
- 工事契約書、注文書、請書
- 工事請求書、入金記録
- 工事写真(契約と紐づくもの)
注意点
- 契約書と請求書は発注者・工事名・工期が一致していること
- 複数の工事を証明に使う場合は、時系列順に整理
- 社名変更や合併前の会社での工事は、商号履歴を添付して説明
5. 地域別の実務ポイント
那覇市(沖縄県)
- 郵送取得は日数に余裕を
→ 本土に比べ郵送日数が長く、資料取得は早めに着手 - 県庁窓口相談の活用
→ 沖縄県土木建築部 技術・建設業課で事前相談が可能 - 閉鎖事項証明書の取得に注意
→ 過去に内地法人で経験がある場合、沖縄県外の法務局から取り寄せが必要
江東区(東京都)
- コンビニ交付の活用
→ 一部の登記簿はマイナンバーカードで即日取得可能 - 都の審査基準は詳細
→ 東京都都市整備局の手引きでは、証明資料の記載方法や添付範囲が細かく指定 - 社会保険加入との紐づけ
→ 役職経験者が常勤であることを社会保険資料で裏付ける傾向が強い
6. よくある不備事例
- 履歴事項全部証明書の期間が足りない
- 役職歴はあるが、建設業経営の証拠が添付されていない
- 執行役員の証明が社内文書だけで公的証拠がない
- 複数社で経験を積んだ場合、通算期間の計算ミス
- 工事契約書と請求書で会社名や住所が異なる(移転や社名変更時の説明不足)
7. 行政書士に依頼するメリット
- 資料の抜け漏れを防げる
- 閉鎖事項証明書などの取得ルートを熟知
- 地域ごとの審査傾向に合わせた資料整備が可能
- 役職歴と建設業経験を証明する組み合わせを的確に選定
8. まとめ
「適切な経営体制」の確認資料は、役職歴と建設業経営経験の両輪で成り立ちます。
- 取締役・理事経験は登記簿で証明
- 執行役員・補佐役職は社内資料で補完
- 期間中の建設業活動を契約書・請求書で裏付け
那覇市では取得期間を考慮した早めの準備、江東区では書類形式の精密さが成否を分けます。
どちらの地域でも、証明書類は複数種類を組み合わせて確実性を高めることが重要です。