
不動産を相続する際、「登記されていない建物(未登記家屋)」が含まれているケースは少なくありません。被相続人が自分で建築した家屋や古い木造住宅など、そもそも登記されていなかった、あるいは建て替え時に登記を忘れていたという事情も多く見られます。
こうした未登記の家屋をそのまま放置しておくと、名義人の確認ができず、売却や相続登記、固定資産税の対応が困難になり、相続人間のトラブルにもつながりかねません。
この記事では、「未登記家屋とは何か」「相続発生後にとるべき対応」「実務的な手続きの流れ」「注意点」などを、江東区・那覇市でよくある実例も交えて解説します。
1. 未登記家屋とは何か?
「未登記家屋」とは、法務局に建物の登記がされていない建物をいいます。建物は原則として、新築時や取得時に登記をすることが法的に求められていますが、実際にはさまざまな理由で未登記のまま使用されている建物が存在します。
よくある未登記家屋のケース
- 昭和以前に建築された木造住宅(古民家等)
- 増改築したが変更登記をしていない場合
- 借地上に建てた建物(借地権建物)
- 建築後すぐに亡くなったため登記が間に合わなかった
なお、未登記であっても市区町村は「固定資産税」の課税対象として認識しており、税務上は把握されているが登記はされていないというケースが多いのが現実です。
2. 登記がされていないと何が問題になるのか?
未登記家屋を相続した際、そのままにしておくと次のようなトラブルが生じる可能性があります。
2-1. 売却や担保にできない
登記がされていない建物は、不動産としての権利関係が明確でないため、売却や担保設定(住宅ローンなど)ができません。 将来的に資産として活用しようと考えたときに大きな制約となります。
2-2. 他の相続人とのトラブルに発展する
登記されていない建物は「誰が所有者か」が登記簿上で確認できないため、相続人間で所有権の認識にズレが生じ、遺産分割で争いになることがあります。
2-3. 将来的な相続で負担が増す
未登記のまま次の世代に相続されると、過去の所有者を遡って登記し直す必要があり、戸籍や遺産分割協議書の取り寄せが困難になるケースがあります。時間も費用も余分にかかります。
3. まずは固定資産税納税通知書と評価証明書を確認
未登記かどうかを確認するには、市区町村から届く固定資産税の納税通知書を確認しましょう。
未登記の家屋であっても、固定資産税の課税対象として市町村に登録されており、通常は毎年「○○家屋に対する課税明細書」が送付されています。
また、固定資産評価証明書を取得することで、家屋の所在地・構造・面積などを確認できます。
4. 建物表題登記でまず登記簿を作る
未登記の家屋については、まず建物表題登記(登記簿の新設)を行う必要があります。これは土地家屋調査士が担当する業務です。
表題登記の主な流れ
- 現地調査・測量
- 建物構造や面積の確認
- 必要書類(建築確認済証、住民票など)を収集
- 法務局に表題登記申請
建物が古くて資料がない場合でも、実測や現況調査を行い、登記することが可能です。ただし、状況によっては補足書類が増えるため、土地家屋調査士と連携して進めることが肝要です。
5. 所有権登記は相続登記と同時に行う
表題登記が完了すると、次に行うのが相続による所有権移転登記です。これは司法書士の業務となります。
建物の名義を被相続人から相続人へと正式に移す手続きであり、以下の書類が必要になります。
必要書類(一例)
- 被相続人の戸籍一式(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍・住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書または遺言書
- 登記原因証明情報
なお、2024年4月からは相続登記の申請が義務化されており、相続発生から3年以内に登記申請を行わなければならないことになっています。
違反すると10万円以下の過料が科される可能性があるため、未登記家屋であっても速やかに表題登記と相続登記を済ませておく必要があります。
6. 江東区・那覇市の未登記家屋に関する地域的傾向
東京都江東区
江東区は再開発地域も多く、築年数の古い住宅が取り壊されてマンション化される傾向があります。そのため、古くからの一戸建てが未登記だった場合、売却時にトラブルになる可能性が高いといえます。
また、江東区では相続人が都外にいるケースも多く、書類のやり取りや調整に時間を要する場合が見られます。
沖縄県那覇市
那覇市では、親族が建てた家屋をそのまま使用しているケースや、借地上の建物で未登記のまま引き継がれているケースが多く存在します。
沖縄独自の土地利用慣習(例:親族間の口約束による使用など)が根強く、登記されていないまま代々使用されてきた物件も少なくありません。放置されてきた未登記建物の整理が急務といえる地域です。
7. よくある質問(Q&A)
Q:未登記でも相続税の対象になりますか?
→ はい、未登記家屋も課税対象です。固定資産評価額をもとに評価され、相続税の申告が必要な場合もあります。
Q:登記費用はどれくらいかかりますか?
→ 表題登記で5万〜15万円程度、所有権移転登記で5万〜10万円程度が目安です(建物の規模や地域による)。
Q:登記しないとどうなる?
→ 相続登記義務違反となり、3年以内に登記しないと過料の対象になります。また、将来的な売却や名義整理に大きな支障が出ます。
8. まとめ 未登記家屋の相続は「早めの対処」がカギ
未登記の家屋を相続することは決して珍しいことではありません。しかし、登記がされていないことで権利関係が不明確になり、相続人間のトラブルや売却の障害になるリスクが生じます。
特に2024年からは相続登記が義務化されたため、「登記をしないで済ませる」ことは法的に許されない時代になりました。
対応すべきことは多いですが、
- 表題登記を行って登記簿を新設する
- 所有権の相続登記を行って名義を整理する
- 不動産全体の相続手続きを並行して進める
といった流れをきちんと踏めば、相続人間の協力のもと、未登記家屋の整理も可能です。
ご自身だけで進めるのが難しい場合は、土地家屋調査士・司法書士・行政書士と連携して対応することで、トラブルのない相続を実現できます。