
親や祖父母が住んでいた実家を相続したものの、現在は誰も住んでおらず「空き家」状態。
このようなケースは、近年、東京都江東区や沖縄県那覇市を含め、全国的に増加しています。
一見すると「思い出の家だからそのまま残しておこう」と考えがちですが、空き家を放置すると、税金・維持管理・近隣トラブル・行政からの指導といった深刻な問題につながる可能性があります。
この記事では、実家を相続して空き家となった場合の注意点と具体的な対処法を、法律的・実務的な観点から詳しく解説します。
1.空き家を相続したら、まず確認すべき3つのこと
1-1.不動産の名義は誰のものか?
被相続人(亡くなった方)名義のままでは、売却や活用、解体などができません。
まずは相続登記を行い、法務局で名義変更をしましょう。
2024年4月からは、相続登記が義務化されており、3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
1-2.建物の老朽化や管理状況はどうか?
長期間放置された家屋は、以下のようなリスクがあります。
- 屋根の崩壊や外壁の落下
- 雨漏り・白アリ被害
- 不法侵入・火災の恐れ
近隣住民とのトラブルや行政指導に発展する前に、状態確認と最低限の管理を行いましょう。
1-3.固定資産税や都市計画税の負担は?
相続した建物や土地には、毎年課税される固定資産税・都市計画税があります。
建物が倒壊寸前でも課税対象となるため、相続放棄や売却を視野に入れることも重要です。
2.空き家にまつわる法律上の注意点
2-1.空家等対策特別措置法とは?
2015年に施行された「空家等対策特別措置法」により、危険な空き家を放置すると、行政から指導や命令を受ける可能性があります。
さらに、行政が「特定空き家」に指定した場合には、固定資産税の住宅用地特例(6分の1)が解除され、税負担が一気に増えることになります。
【特定空き家に該当する例】
- 倒壊の恐れがある
- ごみや不法投棄が著しい
- 景観を著しく損なっている
2-2.共有名義の場合の注意点
兄弟姉妹などと共有で相続した場合、空き家の管理や売却・解体の判断には、共有者全員の合意が必要です。
- 1人でも反対すると売却できない
- 管理費用の負担割合で揉めやすい
できる限り、遺産分割協議で1人に集約するか、合意形成のルールを決めておくことが望ましいです。
3.空き家を放置するリスクとは?
空き家の放置には以下のような具体的リスクがあります。
3-1.維持費がかさむ
- 固定資産税・都市計画税:年額10万円以上になることも
- 管理費用(水道・電気の基本料金、防犯・清掃など)
使用しないのに毎年数十万円の出費が続く場合、生活への影響も少なくありません。
3-2.近隣トラブルの可能性
- ゴミの不法投棄
- 子どもの立ち入り・遊び場になる
- 火災・犯罪・害獣の発生
いずれも近所から苦情が入りやすく、地域コミュニティとの信頼関係が壊れることもあります。
3-3.売却や解体が困難に
- 老朽化した空き家は買い手がつかない
- 解体費用が数百万円単位に
- 地元にいないと現地対応ができない
いざ売却・処分しようと思っても、タイミングを逃すと資産価値が急減します。
4.空き家への具体的な対処法
4-1.管理する(維持・保全)
家を残したい場合には、定期的な管理が必要です。
- 定期的な換気・通水・清掃
- 外構(庭・塀)の整備
- 防犯対策(センサーライト、ポストの清掃)
遠方にお住まいの場合、空き家管理サービスを利用するのも一つの方法です。
4-2.売却を検討する
築年数が古くても、土地に価値がある場合は更地にして売却することが可能です。
- 解体後に売却:解体費用は150〜300万円程度が目安
- 建物付きで売却:現状渡しで負担軽減
- 不動産業者の買取も選択肢
江東区では再開発エリアや利便性の高い土地が多く、資産価値が高い可能性もあります。
4-3.利活用する
空き家を活用して収益化する方法もあります。
- リフォームして賃貸に出す
- 民泊・ゲストハウスとして活用
- 地域コミュニティ施設・事務所として貸す
沖縄県那覇市では観光需要があり、空き家の活用モデルとして民泊利用も増加しています。
4-4.解体して駐車場や家庭菜園に
更地にして、月極駐車場・家庭菜園として活用するケースもあります。
ただし、住宅用地特例の対象から外れると固定資産税が増加するため、税金とのバランスに注意が必要です。
5.空き家相続に関する支援制度と相談先
5-1.空き家活用補助制度(自治体支援)
江東区・那覇市では、空き家のリフォーム・解体・活用に対して補助金を出す制度が用意されていることがあります。
- 耐震改修費用の一部補助
- 空き家利活用への助成
- 民間事業者とのマッチング制度
【例】那覇市 空き家バンク制度、江東区 老朽建築物除却助成 など
5-2.専門家に相談する
- 行政書士:相続登記・遺産分割協議書の作成、戸籍調査など
- 不動産業者:売却査定・解体見積もり
- 税理士:固定資産税・譲渡所得税の相談
- 司法書士:登記手続の代理
複数の専門家が連携してサポートする体制を選ぶと、手続きの一元化ができて安心です。
6.まとめ 空き家を「相続しただけ」で終わらせない
空き家は「思い出」だけでなく、責任と負担のある不動産資産です。
適切な管理・活用・処分を行わなければ、金銭的・法的なリスクが次々と降りかかってきます。
東京都江東区や沖縄県那覇市でも、都市部特有の課題や地方特有の相続問題が交錯しています。
放置しない勇気と、早めの判断が空き家相続を成功に導くカギです。
空き家を相続された方は、現地の事情を理解した専門家に相談し、早期に最適な方法を見極めましょう。