
建設業許可申請を検討する際、多くの方が気にする要件の一つが「財産的基礎」です。
これは、事業を安定的に運営するための「経済的な裏付け」があるかどうかを確認する制度であり、申請時点で一定以上の財産状況が求められます。
この記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業許可の取得を目指す方に向けて、「一般建設業」と「特定建設業」で求められる財産要件の違い、必要書類の具体例、注意点などを詳しく解説します。
1.財産的基礎とは何か?
建設業許可には5つの主要な要件があります。
- 経営業務の管理責任者がいること
- 専任技術者がいること
- 誠実性があること
- 財産的基礎があること
- 欠格要件に該当しないこと
このうち「財産的基礎」は、他の要件のように許可取得後も継続的に求められるものではなく、「申請時点」での経済的条件を問うものである点が特徴です。
2.一般建設業における財産的基礎
2-1.基本要件は「500万円以上の資産があること」
一般建設業の許可を取得するには、主に以下のいずれかを満たしている必要があります。
a.自己資本が500万円以上あること
ここでの「自己資本」とは、決算書の「貸借対照表」に記載されている「純資産合計」を指します。
確認方法は以下の通りです。
- 決算書の貸借対照表を開く
- 「純資産の部」を探す
- 「純資産合計」の金額が500万円以上であればOK
注意すべきなのは、「資本金が500万円以上必要」と誤解されるケースが多いことです。
資本金ではなく、純資産(=会社としての総合的な体力)で判断される点に注意しましょう。
b.500万円以上の資金調達能力があること
直近の決算書で自己資本が500万円に満たない場合でも、金融機関からの融資証明書や預金残高証明書によって、500万円以上の資金調達能力を証明できればOKです。
たとえば
- 銀行から「融資承認書」「借入予定証明書」を取り付ける
- 法人口座の「残高証明書」を取得する(提出日から1週間以内のものが推奨されます)
ただし、この証明方法は都道府県ごとに運用が異なるため、申請先(東京都や沖縄県)の窓口に事前確認が必要です。
c.直近5年間継続して許可を受けていたこと
すでに過去に建設業許可を取得していて、直近5年間無事故で許可を維持していた場合は、これ自体が財産的基礎の証明として認められるケースがあります。
3.特定建設業における財産的基礎
特定建設業では、元請業者として下請け業者に対する支払い責任があるため、より厳しい財務条件が設けられています。
3-1.求められる4つの基準
以下すべてを満たしていることが必要です。
- 資本金が2,000万円以上
- 自己資本が4,000万円以上
- 欠損比率が20%以下
- 流動比率が75%以上
それぞれの指標について解説します。
a.資本金が2,000万円以上
会社の登記簿謄本に記載されている「資本金の額」です。資本金増資をすることで対応できますが、登記手続きや税務処理が必要になります。
b.自己資本が4,000万円以上
こちらも貸借対照表の「純資産合計」を確認します。必要があれば、増資または借入によって純資産を増やす調整が求められる場合もあります。
c.欠損比率が20%以下であること
欠損比率とは、資本金に対してどれだけ損失があるかの指標です。
- 欠損比率=(欠損額 ÷ 資本金)×100
- 例えば資本金2,000万円に対して欠損額300万円であれば、欠損比率は15% → 合格
d.流動比率が75%以上であること
流動比率とは、短期的な支払能力の指標です。
- 流動比率=(流動資産 ÷ 流動負債)×100
- たとえば流動資産が1,500万円、流動負債が1,000万円なら、流動比率は150% → 合格
このように、特定建設業では複数の財務指標をすべて満たす必要があります。財務諸表の分析や事前の財務戦略が重要です。
4.注意点と実務アドバイス
4-1.決算書の整合性が重要
建設業許可の審査では、直近の決算書の信頼性が問われます。過去の決算書と齟齬がないか、適正な会計処理がなされているかを見直しましょう。
特に
- 税理士が関与しているか
- 金融機関との整合性が取れているか
- 貸借対照表と残高証明の数値に矛盾がないか
といった点がチェックされます。
4-2.増資や借入は早めに準備
特定建設業の申請には増資や借入による資産強化が必要になることもあります。その際、登記や金融機関との手続きに時間を要するため、少なくとも申請の2~3ヶ月前から準備を始めるのが理想です。
5.まとめ 財産的基礎は「戦略的な準備」がカギ
建設業許可における「財産的基礎」の要件は、会社の実態を証明する重要なステップです。要件を満たしていないからといって諦める必要はなく、自己資本の増強、資金調達の証明、過去の実績の活用など、さまざまな方法でクリアすることが可能です。
特に東京都江東区や沖縄県那覇市のように、許可行政庁ごとに書類の様式や運用実態が異なる地域では、申請前の事前相談や専門家との連携が非常に重要です。
ご相談の多いケース
- 「直近の決算で赤字だったが許可申請できるか?」
- 「自己資本が足りない場合の資金調達方法とは?」
- 「資本金の増資手続きはどう進めるのか?」
これらは、個別具体的に丁寧に対応する必要があります。財務書類や金融機関との交渉など、慣れない手続きでお困りの際は、建設業許可に精通した専門家のサポートを受けることをおすすめします。