単身赴任時の建設業許可申請の注意点~東京都江東区・沖縄県那覇市の事業者の皆様へ~

建設業を営むにあたり、営業所ごとに「経営業務の管理責任者」「専任技術者」「令3条の使用人」を常勤で配置することは、建設業許可を取得するための必須条件です。
しかし実務の現場では、これらの役職者が単身赴任しているケースが少なくありません。特に東京都江東区や沖縄県那覇市は、大都市圏や地方拠点として全国から人材が集まる地域であるため、単身赴任の形で営業所に常勤するという状況は珍しくありません。

一方で、単身赴任者が関わる建設業許可申請では、「本当にその営業所に常勤しているのか」という点について、役所から厳しく確認されることがあります。この記事では、単身赴任時の建設業許可申請における注意点を詳しく解説し、トラブルを回避するための実務的なポイントをお伝えします。

目次

1. 建設業許可における「常勤性」とは

まず前提として、「常勤」とはどういう状態を指すのでしょうか。
建設業許可申請における常勤性は、単にその営業所で働いていることを意味するのではなく、その営業所を主たる勤務先として日常的に勤務し、その仕事で生計を立てていることを指します。

したがって、単身赴任であっても営業所の近隣に居住し、日常的に勤務しているのであれば「常勤性あり」と認められる可能性があります。ただしその場合、形式的な住民票の住所だけでは足りないため、追加の確認資料が必要になります。

2. 単身赴任者が直面しやすい課題

単身赴任で建設業許可を申請する際、以下のような課題がよく見られます。

  1. 住民票が本拠地にあるまま
     例:住民票は那覇市にあるが、江東区の営業所に勤務している。
  2. 給与が低額に見える
     常勤であるはずなのに、標準報酬決定通知書に記載された給与額が少ないため「本当に常勤しているのか」と疑われる。
  3. 勤務実態が書類で裏付けられていない
     営業所の近くに実際に住んでいる証拠(居所資料)が提出できず、不備扱いになる。

3. 必要となる追加資料

単身赴任者が常勤していることを証明するためには、住民票以外に以下のような追加資料を用意することが有効です。

居所を確認する資料

  • 賃貸借契約書(単身赴任先で借りているアパート・マンション)
  • 社宅・寮の入居証明書
  • 公共料金(電気・水道・ガス)の領収書や請求書
  • 郵便物(銀行明細や公共料金請求書)

これらは、実際に単身赴任先で生活していることを示す重要な証拠になります。

常勤性を裏付ける資料

  • 健康保険・厚生年金の資格取得通知書や標準報酬決定通知書
  • 住民税特別徴収の通知書
  • 給与明細(継続して支給されていることが分かるもの)

特に社会保険や住民税関係の書類は、常勤性を示す強い資料となります。

4. 東京都江東区における留意点

江東区を含む東京都は、申請件数が多く、また建設業法に基づく審査が厳格に運用されている傾向があります。

  • 住民票と居所が異なる場合は、必ず追加資料の提出が求められます。
  • アパート契約書だけでなく、実際の生活実態を裏付ける資料(公共料金の領収書など)も出すと安心です。
  • 給与が低額に見える場合は、兼業していないことを説明できるよう、会社からの証明書を準備することが望ましいです。

5. 沖縄県那覇市における留意点

那覇市をはじめ沖縄県では、本土からの単身赴任者も少なくありません。そのため、居所と住民票の不一致に関しては比較的柔軟に扱われるケースもあります。

しかし一方で、500万円未満の工事を積み重ねて経験を証明するなど、もともと書類整備が大変な県でもあります。常勤性の証明についても、役所ごとに判断が異なるため、事前に相談することが極めて重要です。

6. 実務で起きた具体的なトラブル事例

事例1:住民票しか提出せず不備に

江東区の営業所に勤務する専任技術者。住民票は地方に残したまま申請したが、不備通知を受け、急遽アパート契約書を追加提出。申請が1か月以上遅延した。

事例2:給与が低く常勤性を疑われた

那覇市の営業所で勤務している令3条の使用人。標準報酬が極端に低く、審査で兼業の疑いをかけられた。結果的に会社からの勤務証明書を追加提出することで許可は下りたが、余分な対応が必要になった。

7. トラブルを防ぐための実務ポイント

  1. 住民票だけでは不十分
     単身赴任の場合は必ず居所資料を準備しましょう。
  2. 給与額と勤務実態の整合性を確認
     給与が低すぎると疑われるため、勤務実態を示す証明を会社に作成してもらうと安心です。
  3. 事前相談を怠らない
     東京都と沖縄県では取扱いが異なります。必ず申請窓口に確認してください。
  4. 複数の資料を組み合わせる
     1つの資料だけでは弱い場合があります。契約書+公共料金領収書+会社の証明書、という形で重ねて準備しましょう。

まとめ

単身赴任は、建設業界では決して珍しいことではありません。しかし建設業許可申請においては、「本当にその営業所に常勤しているのか」という点を厳格に確認されます。

  • 住民票だけでは不十分であり、居所資料や給与関係書類が必須
  • 東京都江東区では厳格、沖縄県那覇市では柔軟さがあるものの事前相談は必須
  • 余計な不備や遅延を防ぐため、複数の資料を準備して臨むことが大切

単身赴任という事情があっても、しっかりと裏付け資料を揃えれば、建設業許可申請は問題なく進めることができます。

行政書士見山事務所は建設業許可申請に精通しております、お気軽にご相談下さい。

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