親族を専任技術者にする場合の注意点~東京都江東区・沖縄県那覇市の建設業者の皆様へ~

建設業許可を取得するためには、営業所ごとに「専任技術者」を配置することが義務付けられています。専任技術者は工事の技術的な責任を担う重要な存在であり、許可の審査でも最も重視されるポイントのひとつです。

中小規模の建設業者や家族経営の会社では、代表者の親族(配偶者、子、兄弟姉妹など)が専任技術者に就任するケースも少なくありません。家族で経営している会社では自然な選択肢に思えますが、実は「親族を専任技術者にする」場合には、いくつか特有の注意点があります。

本記事では、東京都江東区と沖縄県那覇市の事業者の皆様に向けて、親族を専任技術者にする場合のメリットとリスク、そして申請時に気を付けるべき具体的なポイントを解説します。

目次

1. 専任技術者に求められる要件

まずは専任技術者の基本的な要件を整理しましょう。

  1. 資格要件
    • 国家資格(建築士、施工管理技士など)を保有している
    • または、申請する業種における一定年数の実務経験がある
  2. 常勤性要件
    • 営業所に常勤していること
    • 他社との兼任は不可
  3. 技術責任要件
    • 工事の技術面について実質的に責任を果たしていること

つまり、親族であっても「資格」または「実務経験」があれば、形式的には専任技術者になることができます。しかし、親族の場合には「本当に常勤しているのか?」「実質的に技術管理を行っているのか?」という点で厳しく見られる傾向があります。

2. 親族を専任技術者にするメリット

  1. 人件費を抑えられる
    外部から専任技術者を雇用する場合、資格者の給与水準は高額になりがちです。親族が資格や経験を持っていれば、その分コストを抑えることができます。
  2. 経営と技術の連携がスムーズ
    家族で意思疎通がしやすく、経営判断と技術的判断の連携が取りやすいのは大きなメリットです。
  3. 長期的な安定
    他社への転職や独立のリスクが低く、長期間にわたり専任技術者として確保できる点も魅力です。

3. 親族を専任技術者にする場合のリスクと注意点

(1) 「常勤性」が疑われやすい

親族の場合、「本当に毎日出勤しているのか」「名前だけの専任技術者ではないか」と疑われることがあります。特に配偶者や子が専任技術者になる場合、実際には別の仕事をしているのではないか、と審査でチェックされるケースがあります。

対策

  • 健康保険・厚生年金の加入記録
  • 住民税の特別徴収票
  • 出勤簿や勤務表
    などで常勤性を客観的に示す必要があります。

(2) 「無報酬」では認められにくい

親族だからといって報酬を支払わないまま専任技術者にするケースがありますが、これも不許可のリスクが高いです。給与や役員報酬がない場合、生活の基盤をどこで得ているのか不明となり、「常勤性がない」と判断されやすいためです。

対策

  • 親族であっても給与・役員報酬を設定し、源泉徴収票や住民税課税資料で裏付ける
  • 少額すぎる給与設定は避ける(極端に少額だと「他で働いているのでは」と疑われます)

(3) 「実務経験の証明」が難航しやすい

親族が資格を持たず、実務経験で専任技術者になろうとする場合、経験証明資料の収集が難しくなることがあります。

例えば、過去に家業を手伝っていたケースでは、契約書や請求書などの外部資料が残っていないことも多く、「本当に建設工事に従事していたのか」を証明できないことがあります。

対策

  • 請負契約書、注文書、請書
  • 請求書と通帳の入金記録
  • 年金加入記録や雇用保険被保険者記録

など、複数の資料を組み合わせて証明することが必要です。

(4) 他の勤務先があると兼任と見なされる

親族であっても、別の会社で勤務して給与を得ている場合は「兼任」とされ、専任技術者にはなれません。

対策

  • 他社に勤務していないことを明らかにする
  • 年金や雇用保険の加入状況を確認する

4. 東京都江東区での傾向

東京都は全国的にも審査が厳格な地域で、江東区でも例外ではありません。親族を専任技術者とする場合には特に次の点に注意が必要です。

  • 無報酬では認められにくい
  • 常勤性を複数の資料で裏付ける必要がある
  • 資格がない場合の実務経験証明は慎重に確認される

つまり、江東区で親族を専任技術者にする場合は、「形式だけ」ではまず通らず、資料の整備が不可欠です。

5. 沖縄県那覇市での傾向

那覇市では、家族経営の建設業者が多いため、親族が専任技術者を務めるケースは珍しくありません。比較的柔軟に扱われることもありますが、油断は禁物です。

  • 「常勤性を資料で証明できるか」が最も重視される
  • 無報酬の場合は追加の資料や説明を求められることが多い
  • 実務経験証明については、契約書や請求書などを必ず揃える必要がある

地域事情は考慮されても、最終的には「資料で証明できるか」が決め手になります。

6. トラブル事例

事例1:配偶者を無報酬で専任技術者にしたが不許可

江東区でのケース。配偶者を無報酬役員として専任技術者にしたが、社会保険や給与の裏付けがなく常勤性を認められず不許可。

事例2:請求書不足で補正を求められる

那覇市でのケース。子を専任技術者にしようとしたが、実務経験の証明資料が不足。追加で契約書や通帳を提出して補正。

事例3:報酬設定と社会保険加入でスムーズに許可

兄弟を専任技術者にしたが、役員報酬を設定し、厚生年金に加入させたことでスムーズに許可が下りた。

まとめ

親族を専任技術者にすることは可能ですが、以下の点に注意が必要です。

  1. 親族だからといって特別扱いはない。常勤性・技術責任を客観的に証明する必要がある。
  2. 無報酬では常勤性を疑われやすい。報酬を設定し、社会保険や税務資料で裏付けることが望ましい。
  3. 実務経験で要件を満たす場合は、契約書・請求書・通帳など複数資料を揃える必要がある。
  4. 東京都江東区は審査が厳格、沖縄県那覇市は柔軟さがあるものの、最終的には資料での証明が必須。

行政書士見山事務所は建設業許可申請に精通しております、お気軽にご相談下さい。

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