公共工事を受注するための経営規模等評価申請の受審方法を徹底解説

建設業許可をお持ちの事業者が公共工事を受注するためには、毎年「経営事項審査」(経審)を受けることが必要になります。経審は「経営状況分析」と「経営規模等評価」に分かれますが、ここでは後者にあたる経営規模等評価申請の受審方法について、東京都江東区および沖縄県那覇市の事業者向けに詳しく解説します。

経審は、提出先となる都道府県や地方整備局により細かな運用が異なることがあるため、申請前には必ず窓口で最新の手続を確認することが重要です。東京都の場合は東京都都市整備局、沖縄県の場合は土木建築部 技術・建設業課が窓口となります。

本記事では、一般的な受審の流れ、必要書類、注意点を体系的にまとめていますので、初めて経審を受ける方にも理解しやすい内容となっています。

目次

1. 経営規模等評価申請とは何か

経審は、建設業者の経営内容を客観的に評価し、公共工事の発注機関が事業者を格付けするために活用される制度です。

経審には二つの審査があります。

  1. 経営状況分析
  2. 経営規模等評価

このうち本記事で扱う経営規模等評価では、
・経営規模
・技術力
・社会性などのその他項目
を点数化します。

申請後に交付される「経審結果通知書」に記載される「P」の点数が、実質的な建設業者としての評価点であり、公共工事で言われる「経審の点数」とはこのP点を指します。

公共工事の「ランク(S・A・Bなど)」は、このP点に発注機関が独自に設定する主観的事項を加味して算出され、入札参加資格の基礎となります。

2. 経営規模等評価申請の手続きの流れ

申請手続は都道府県により多少異なりますが、一般的な流れは次のとおりです。

  1. 経営状況分析を受ける
  2. 経営状況分析結果通知書を入手
  3. 決算変更届を提出済みであることを確認
  4. 必要書類を準備
  5. 都道府県または地方整備局に申請
  6. 結果通知書を受領

東京都江東区の事業者であれば東京都庁への提出、沖縄県那覇市の事業者であれば土木建築部 技術・建設業課または沖縄総合事務局が窓口です。

特に重要なのは次の2点です。

・経営状況分析結果通知書が必ず必要
・決算変更届(決算報告)が未提出では申請できない

毎年の決算終了後、スケジュールを逆算して準備を進めることが重要です。

3. 受審前に必ず行う確認

申請前には次の事項を必ず確認する必要があります。

  1. 申請先の最新の受付方法の確認
    東京都と沖縄県では受付予約制度の有無、提出方法(窓口・郵送)が異なることがあります。年度により運用が変わるため、事前確認は不可欠です。
  2. 経営状況分析は済んでいるか
    経審の申請には必ず「経営状況分析結果通知書」が添付されます。これがなければ申請できません。
  3. 決算変更届の提出が完了しているか
    経審は直前決算の内容を基準として行われるため、決算変更届(決算報告)が提出されていなければ受付されません。

4. 全事業者が提出する書類

一般的に、すべての建設業者が作成・提示する必要がある書類は次のとおりです。

  1. 経営規模等評価申請書および総合評定値請求書
    経審の中心となる申請書類です。業種ごとの技術職員数、元請工事金額、建設機械の保有状況など、審査項目に応じた詳細な記載が必要になります。
  2. 経営状況分析結果通知書
    登録分析機関が発行するY点、X点などが記載された通知書です。原本の添付が求められます。
  3. 確定申告書一式
    法人であれば法人税申告書、個人事業主であれば所得税確定申告書です。税務署の収受印や電子申告の受信通知が必要になる場合があります。
  4. 納税証明書(消費税および地方消費税のその1)
    事業者に納税義務がない場合でも証明書が必要となることが一般的です。
  5. 直近の決算変更届の控え
    すでに提出済みであることが前提となるため、受付印の押された控えが必要です。

5. 該当する事業者のみ提出する書類

次に、特定の条件に該当する事業者が提出する必要のある書類について解説します。これらは企業規模、社会保険加入状況、建設機械の保有状況などに応じて必要・不要が分かれます。

  1. 雇用保険概算・確定保険料申告書
    従業員を雇用している場合に提出します。経審においては社会性の評価に反映されます。
  2. 健康保険被保険者標準報酬決定通知書
    社会保険加入企業の場合に必要となります。技術者数や給与水準の裏付け資料として扱われます。
  3. 建退共共済証紙の購入実績または加入証明
    建設業退職金共済制度に加入している場合に必要です。社員の福利厚生に関する評価として加点対象となります。
  4. 就業規則および退職金規定
    一定規模の企業の場合に必要となり、労働環境整備の状況として評価されます。
  5. 中小企業退職金共済の加入証書
    退職金制度を整備している場合に提出します。
  6. 法定外労災補償の保険証券
    上乗せ労災保険等に加入している場合に加点対象となる資料です。
  7. 防災協定書
    自治体との防災協定を締結している場合、社会性として加点が期待できます。
  8. 建設機械のリース契約書または売買契約書、特定自主検査の検査証
    自社保有またはリースしている建設機械が評価対象となる場合に提出します。
  9. ISO9001またはISO14001の認証登録証明書
    品質管理や環境管理に関する国際規格の認証取得は加点対象で、公共工事の入札において大きな評価につながります。

6. 東京都江東区の事業者が気をつけるポイント

東京都では、毎年度受付方法が変更されることがあるため、特に以下を確認する必要があります。

  1. 事前予約の必要性
    年度により完全予約制となる場合があります。
  2. 書類チェックサービスの有無
    提出前に内容確認を受けられる制度があるため、活用することで補正を減らすことができます。
  3. 郵送提出が可能な項目の確認
    郵送可能書類と窓口提出が必要な書類が分かれていることがあります。

江東区の事業者は都庁までの距離があるため、事前確認と書類の正確な準備が時間節約につながります。

7. 沖縄県那覇市の事業者が気をつけるポイント

沖縄県の窓口は土木建築部 技術・建設業課です。
本土と比べて運用が異なる点もあるため、特に次を確認することが重要です。

  1. 提出は原則窓口か郵送か
    年度によって変更されることがあります。
  2. 建退共やISOなどの地域特有の扱い
    沖縄県では、評価項目の判断に地域独自の取り扱いが存在する場合があります。
  3. 機械保有の評価対象
    特に自社保有とリースの扱いが窓口ごとに判断基準が異なるケースがあります。

沖縄県の場合、公共工事比率が高いため、経審の点数によって受注機会が大きく左右される傾向がある点も特徴です。

8. まとめ

経営規模等評価申請は、公共工事の受注を左右する極めて重要な手続です。提出書類は多岐にわたり、東京都と沖縄県では受付方法が異なる場合もあります。

特に重要なポイントは次のとおりです。

  1. 経営状況分析結果通知書が必須である
  2. 決算変更届を事前に提出しておく必要がある
  3. 申請前に窓口の最新情報を確認する
  4. 加点項目を十分に把握し、提出漏れを防ぐこと
  5. 毎年経審を受けていないと公共工事の受注ができない

建設業者にとって経審は義務ではありませんが、公共工事を視野に入れる以上、適切かつ継続的な受審が欠かせません。毎年のスケジュール管理と、必要書類の整理が大きな鍵となります。

建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所へお気軽にご相談下さい。

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