
農地転用の許可を取得し、実際に宅地や駐車場などに転用したとしても、登記簿上の「地目」がそのまま「田」や「畑」となっているケースが少なくありません。これは、地目変更の登記が土地の所有者の義務であるにもかかわらず、実施されないことがあるためです。
では、なぜこのような状況が発生するのか、また、登記が反映されていないことでどのような問題が生じるのか、詳しく解説していきます。
1. 地目の変更登記とは?
地目の変更登記とは、土地の利用状況が変わった際に、その変更を法務局に申請し、登記簿の記載を実態に合わせる手続きのことです。
農地転用の許可を得て、農地を宅地や駐車場などに変更した場合、本来であれば、所有者が法務局に「地目変更登記」を申請し、「宅地」や「雑種地」へと変更する必要があります。
しかし、この手続きが行われていない土地も多く存在します。
2. なぜ地目変更登記がされないことがあるのか?
(1) 義務であるが、罰則がない
地目変更登記は、法律上の義務ですが、申請しなかったとしても罰則が科されるわけではありません。そのため、転用許可を取得したまま放置してしまうケースがあります。
(2) 住宅ローンを利用しないケースでは見過ごされがち
金融機関から住宅ローンや事業用ローンを借りて建物を建てる場合、銀行は担保評価のために地目変更登記を求めることがほとんどです。そのため、融資を受けた場合は、金融機関の指導のもとで適切に地目変更登記が行われます。
しかし、自己資金で建物を建てた場合や、小規模な転用(例えば、駐車場として利用する場合など)では、誰も地目変更登記の手続きを指導する人がいないため、そのまま放置されることが多いのです。
(3) 法務局の職権登記が機能しにくい
法務局の登記官には、職権で地目を変更する権限があります。しかし、全国に膨大な数の土地が存在するため、一つ一つの土地を現地調査し、適切に変更することは現実的に不可能です。そのため、所有者が申請しない限り、登記簿上の地目がそのままになってしまうことが多いのです。
3. 地目変更登記をしないとどんな問題があるのか?
登記上の地目が農地のままでも、実際の利用に支障が出ることは少ないかもしれません。しかし、いくつかの場面で問題が発生する可能性があります。
(1) 売却時に買主が不安を感じる
土地を売却する際、登記簿上の地目が「田」や「畑」のままだと、買主に「本当に転用許可が下りているのか?」と疑われることがあります。その結果、取引がスムーズに進まないことがあります。
(2) 不動産評価額が適切に算定されない
固定資産税の評価額は、登記簿の地目によって決まることがあります。農地のままだと、本来の宅地としての評価が反映されず、適切な資産評価がなされない可能性があります。
(3) 追加の手続きが必要になることがある
たとえば、新たに建物を建てる際、登記簿上の地目が農地のままだと、再度農地転用の手続きが必要になることがあります。本来は不要なはずの手続きが発生し、時間と費用がかかる可能性があります。
4. すでに転用許可を取得している場合の確認方法と対処法
(1) まずは登記簿を確認
現在の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、地目が変更されているかを確認しましょう。
(2) 以前の農地転用許可書を確認
地目が「田」や「畑」になっていた場合でも、過去に農地転用の許可を取得しているかどうかを確認することが重要です。役所の農業委員会や農地課に問い合わせれば、過去の許可記録を調べることができる場合があります。
(3) 地目変更登記の申請を行う
もし、転用許可は取得しているものの、地目変更登記を行っていない場合は、速やかに登記手続きを行うことをおすすめします。
登記申請に必要な書類
- 農地転用許可証(または届出受理証明書)
- 土地の登記簿謄本
- 土地の公図
- 申請書(法務局指定の様式)
- 所有者の印鑑証明書
手続きが不安な場合は、専門家に依頼するのも一つの方法です。
5. まとめ
農地転用許可を取得したからといって、自動的に登記簿の地目が変更されるわけではありません。これは土地所有者が自主的に行うべき手続きですが、特に自己資金で建物を建てた場合や、小規模な転用を行った場合には、見落とされがちです。
登記簿の地目が農地のままだと、売却時のトラブルや不動産評価の問題、将来的な追加手続きの発生といったデメリットがあります。そのため、過去に転用許可を取得した土地で地目変更登記を行っていない場合は、早めに手続きを進めることが重要です。
地目変更登記は、比較的簡単な手続きですが、不安がある場合は専門家に相談することで、スムーズに対応できます。東京都や沖縄県での農地転用や地目変更登記について不明点があれば、専門の行政書士にご相談ください。