
長年日本に住んでいた外国人配偶者が、一身上の都合で母国へ帰ることになった場合、「今まで払ってきた厚生年金や国民年金はどうなるのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
日本の公的年金制度には、「脱退一時金」という制度があり、一定の条件を満たせば、支払った年金保険料の一部を受け取ることができます。
本記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市で在留資格手続きを行う外国人やその家族の方々に向けて、「脱退一時金」の仕組みや請求方法、注意点について詳しく解説します。
1. 日本の公的年金制度と外国人の扱い
日本では、すべての労働者が公的年金制度に加入する義務があります。日本で生活していた外国人も例外ではなく、以下のいずれかの年金に加入していたはずです。
- 厚生年金保険(会社員・公務員などが加入)
- 国民年金(自営業者・学生・無職の人などが加入)
日本人であれば、一定の年齢に達した後に年金として受け取ることになりますが、外国人の場合、「将来的に年金を受け取る前に母国へ帰国する」というケースも少なくありません。その場合、支払った年金はどうなるのでしょうか?
2. 脱退一時金とは?
「脱退一時金」とは、日本の公的年金に加入していた外国人が、日本を離れる際に、支払った年金保険料の一部を受け取ることができる制度です。
脱退一時金を請求できる条件
脱退一時金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 日本に住所がないこと(住民票を抜く=転出届を提出していること)
- 年金の加入期間が6か月以上であること
- 年金を受給する資格(10年以上の加入期間)を満たしていないこと
- 再入国許可期限が切れていること(つまり、日本の在留資格を完全に喪失していること)
- 帰国後2年以内に請求すること
これらの条件を満たせば、帰国後に脱退一時金を請求することができます。
3. 受け取れる金額の計算方法
脱退一時金の金額は、加入していた年金の種類や期間によって異なります。
(1)厚生年金の場合
厚生年金の場合、受け取れる金額は給与額と加入期間によって決まります。
【計算方法】
脱退一時金の金額は、日本年金機構が定める「報酬比例部分の年金額の計算式」に基づき算出されます。具体的な計算方法はやや複雑なため、厚生年金に加入していた期間と平均月収によって変動することを理解しておくとよいでしょう。
【参考】
2024年現在の基準では、最長5年分(60か月)までの保険料が返金の対象となります。それ以上の加入期間があっても、脱退一時金の計算には反映されません。
(2)国民年金の場合
国民年金に加入していた場合、加入期間に応じた固定額が支給されます。
【計算方法】
国民年金の脱退一時金の額は、日本年金機構が定める「納付した月数ごとの固定額」に基づきます。
例えば、2024年時点では、加入期間が36か月(3年)なら約15万円前後が支給される計算になります。
最新の金額は、日本年金機構の公式サイトで確認することをおすすめします。
4. 脱退一時金の請求方法
脱退一時金を請求するためには、以下の手続きを行う必要があります。
【必要書類】
- 脱退一時金請求書(日本年金機構の公式サイトからダウンロード可能)
- パスポートのコピー(出入国のスタンプが押されているページ)
- 銀行口座情報(外国の銀行口座でも可)
- 日本の住民票の除票(住民票を抜いた証明)
【請求手続きの流れ】
- 日本を出国する前に転出届を提出する(住民票を抜く)
- 日本を出国し、再入国許可期限が切れるのを待つ
- 再入国許可期限が切れた後、必要書類を準備し、日本年金機構へ郵送する
- 日本年金機構が審査を行い、問題がなければ指定口座に振り込まれる
5. 脱退一時金請求時の注意点
(1)日本に戻る予定がある場合は要注意!
脱退一時金を受け取ると、過去に納めた年金記録がリセットされ、将来、日本で年金を受給する権利を失うことになります。
「将来、日本に戻ってまた働く可能性がある」場合は、脱退一時金を請求せず、年金加入期間を保持しておいたほうが有利になるケースもあります。
(2)税金がかかる場合がある
脱退一時金には、日本で20.42%の所得税が源泉徴収されます。ただし、一定の条件を満たせば、「還付請求」によって一部の税金を取り戻すことができます。
6. まとめ 外国人配偶者が帰国するときの年金手続きは早めに準備を!
日本で長年働いてきた外国人配偶者が帰国する際、厚生年金や国民年金の支払分は「脱退一時金」として一部を受け取ることができます。ただし、請求には条件や期限があるため、事前にしっかりと準備しておくことが重要です。
【脱退一時金のポイント】
・ 日本を出国し、住民票を抜いた後に請求可能
・ 厚生年金・国民年金ともに支払った年金の一部を受け取れる
・ 日本の再入国許可期限が切れてから請求すること
・ 受け取れるのは最大5年分まで(それ以上の加入期間は考慮されない)
・ 請求期限は帰国後2年以内
脱退一時金の手続きや税金還付についてご不明な点がある場合は、行政書士見山事務所までお気軽にご相談ください。