法定相続情報証明制度とは?手続きの流れとメリットを徹底解説

相続手続きと聞いて思い浮かぶのは、「戸籍集めが大変」「銀行や法務局で毎回書類を出すのが面倒」といった声ではないでしょうか。被相続人(亡くなった方)の戸籍は、出生から死亡までのものをすべてそろえる必要があり、その数が十通を超えることもあります。

こうした相続手続きの負担を軽減するために、2017年に導入されたのが「法定相続情報証明制度」です。

この記事では、制度の概要から、手続きの流れ、利用するメリット、東京都江東区・沖縄県那覇市における実務の注意点まで、わかりやすく解説していきます。


目次

1.法定相続情報証明制度とは?

1-1.制度の概要

法定相続情報証明制度とは、戸籍をもとに作成した「法定相続人の一覧図」を法務局が認証してくれる制度です。法務局でその一覧図を一度認証してもらえば、以後の相続手続きではその「認証済みの一覧図」を提出するだけで済むため、何度も戸籍一式を提出する手間がなくなります。

この制度は、全国どこの法務局でも無料で利用することができます。

1-2.どんなときに使うの?

この証明書は、以下のようなさまざまな相続手続きで利用できます。

  • 銀行口座の名義変更や解約
  • 不動産の相続登記
  • 証券口座や保険の相続手続き
  • 自動車の名義変更 など

2.法定相続情報証明の仕組みと書類構成

法定相続情報証明制度で作成する主な書類は、以下の2点です。

2-1.法定相続情報一覧図

この一覧図には、被相続人および相続人の名前・生年月日・死亡日・続柄などが記載されます。形式は定められており、エクセルや手書きなどでも作成可能です。

【例】

被相続人 山田太郎 昭和15年1月1日生 令和6年3月1日没

配偶者  山田花子 昭和20年5月5日生 (妻)

長男   山田一郎 昭和45年4月4日生 (子)

長女   山田美咲 昭和48年8月8日生 (子)

2-2.認証文付き一覧図(写し)

法務局がこの一覧図を確認し、真正であることを証明した写し(法定相続情報証明書)を発行します。これを何通でも無料で取得可能です。


3.法定相続情報証明制度の手続きの流れ

制度の利用は以下のような流れで進みます。

3-1.必要書類の準備

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍含む)
  • 相続人全員の戸籍
  • 住民票の除票(被相続人)
  • 相続人の住民票(写し)
  • 一覧図の原案(申請者が作成)
  • 申出書(法務局の書式あり)
  • 本人確認書類(免許証等の写し)

江東区や那覇市に本籍がある方は、区役所や市役所で必要な戸籍を取り寄せることになります。郵送請求も可能ですが、時間に余裕を持ちましょう。

3-2.法務局への提出

相続登記と同じく、不動産所在地または被相続人の本籍地の管轄法務局へ提出します。提出方法は以下の2つです。

  • 窓口提出(予約制)
  • 郵送提出(返信用封筒を同封)

なお、法務局では内容に不備があると補正指示を受けるため、事前に内容の確認をしっかり行うか、専門家に相談すると安心です。

3-3.証明書の受け取り

申請後、通常は1週間~10日ほどで「法定相続情報一覧図の写し」が発行されます。この写しを金融機関などへ提出することで、以後の手続きが大幅に簡略化されます。


4.制度を利用するメリット

4-1.戸籍提出の手間が1回で済む

本制度を利用すると、各手続先に何度も戸籍一式を提出する必要がありません。特に、銀行や証券会社など複数の機関に提出する場合、大きな時間と労力の節約になります。

4-2.証明書は何通でも発行できる(無料)

必要に応じて、同じ内容の証明書を複数取得できるため、手続先が多い方には非常に便利です。

4-3.戸籍の原本を持ち歩かずに済む

戸籍原本は個人情報のかたまりであり、紛失や盗難リスクもあります。この制度を使えば、法務局発行の一覧図だけで済むため、重要書類の取り扱いリスクが減少します。


5.制度を利用する際の注意点

5-1.法定相続人の情報に誤りがあると、修正に時間がかかる

一覧図に記載する内容に誤りがあると、証明を受けることができません。戸籍の読み違いなどに注意が必要です。

5-2.遺言書がある場合は対象外

この制度は「法定相続人」に基づいた一覧図の作成が前提です。公正証書遺言や自筆証書遺言などで「誰に何を相続させるか」が指定されている場合は使えません。

ただし、遺言が相続人間でトラブルにならない内容であるなら、法定相続人の一覧図として利用できることもあります。ケースバイケースで判断が必要です。

5-3.代襲相続があると複雑になる

被相続人の子がすでに亡くなっていて、孫が代襲相続人になるケースでは、さらに多くの戸籍が必要になります。このようなときも、専門家のチェックを受けて作成することをおすすめします。


6.江東区・那覇市での実務上の注意点

6-1.江東区の場合:本籍が地方の方は早めの準備を

江東区にお住まいでも、本籍地が地方にある方が多く、戸籍の郵送請求に時間がかかるケースがあります。とくに改製原戸籍などは時間を要するため、相続開始後すぐに準備を始めるのが得策です。

6-2.那覇市の場合:旧字体・手書き戸籍の判読に注意

沖縄県では旧字や戦前の戸籍様式が今なお使われているケースがあり、読み取りに苦労する例が多くあります。法定相続情報一覧図の記載に誤りがないよう、戸籍の読み込みに自信がない場合は、行政書士などの専門家に確認を依頼しましょう。


7.まとめ 法定相続情報証明制度で相続をもっとスムーズに

相続手続きの現場では、「戸籍の束を何回も提出する」「本人確認のたびに同じ説明を繰り返す」といった煩雑さが大きな負担になっています。

法定相続情報証明制度を使えば、そのような負担を大幅に減らすことができます。

制度のポイントまとめ

  • 法務局が相続人の一覧図を認証してくれる制度
  • 戸籍一式を何度も提出せずに済む
  • 手続先が多い人ほどメリット大
  • 無料で複数通の証明書を取得可能
  • 内容に誤りがあると受理されないため、事前確認が重要

特に銀行口座や不動産が複数あるケースでは、相続の第一歩として本制度の活用を検討されることをおすすめします。

必要な戸籍の収集から一覧図の作成まで、行政書士が代行可能です。戸籍の内容や制度の適用可否など、少しでも不安がある方は、相続手続きに精通した専門家に相談すると安心です。

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