成年後見制度の申立て手続を完全解説~必要書類と申立ての具体的な流れ~

高齢化が進む現代社会では、認知症や判断能力の低下に備える法的手段として成年後見制度の活用が注目されています。しかし実際には、「どこに申立てをするのか?」「必要書類は何か?」「手続にどれくらいの時間がかかるのか?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市で成年後見制度の利用を検討している方のために、申立てに必要な書類とその手続の流れを、実務経験に基づいて詳しく解説します。

目次

1. 成年後見制度の概要

成年後見制度は、判断能力が不十分な高齢者や障がい者の権利を守るため、本人の代わりに財産管理や契約手続を行う「後見人」等を選任する制度です。

成年後見制度には3つの類型があります。

類型対象となる状態裁判所が選任する人
後見判断能力がない後見人
保佐判断能力が著しく不十分保佐人
補助判断能力が一部不十分補助人

申立てを行うことで、家庭裁判所が適切な支援者を選任し、本人の権利や財産を守ることができます。

2. 手続きの管轄と申立て先

成年後見制度の申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

  • 東京都江東区の方は → 東京家庭裁判所(本庁)
  • 沖縄県那覇市の方は → 那覇家庭裁判所

家庭裁判所では申立て後に審理を行い、必要に応じて調査官が面談等を行い、適任者を選任します。

3. 申立てに必要な主な書類

成年後見制度の申立てには、以下の書類を揃える必要があります。これらは後見・保佐・補助のいずれの類型でも共通です(一部異なる場合あり)。

【必須書類一覧】

書類名内容・注意点
申立書所定の様式に記載。家庭裁判所のウェブサイト等でダウンロード可能。
申立人の戸籍謄本親族などの申立人の身分関係を確認するために必要。
本人の戸籍謄本後見対象者(本人)の身分確認。
本人の住民票現住所の確認のため。
本人の診断書医師による所定の様式に基づいたもの。精神科医や内科医が作成。
本人の財産に関する資料預貯金、不動産、年金、保険、借入金の明細書など。
親族関係図(親族図)本人との関係が分かるように家系図を作成。
候補者の住民票・身分証の写し親族などが候補者となる場合。第三者が候補者となることもあり。

※診断書の様式は各家庭裁判所ごとに指定されていますので、家庭裁判所の公式サイトや窓口で確認の上、所定の様式を使用してください。

4. 申立ての流れ(スケジュールと各段階のポイント)

成年後見制度の申立ては、以下のような流れで進みます。通常、申立てから審判まで1.5〜3ヶ月程度かかります。

事前相談(任意)

家庭裁判所の後見センターなどでは、事前に予約制で相談を受け付けています。実際の申立て前に手続や書類の確認をすることができ、特に初めての方にはおすすめです。

また、専門家(行政書士・弁護士等)に事前相談することで、提出書類の漏れや不備を防ぐことができます。

書類収集と診断書の取得

最も時間がかかるのがこの段階です。特に医師の診断書は予約が取りにくいこともあり、早めの準備が重要です。

また、銀行口座の通帳コピー、不動産登記事項証明書など、本人の財産に関する資料も複数必要になるため、1〜2週間は見込んでおきましょう。

家庭裁判所への申立て

申立ては家庭裁判所の窓口にて行います(郵送不可の場合が多い)。申立書類一式を持参し、提出します。

この時点で、申立手数料(収入印紙800円)や切手代(5,000円前後)が必要になります。

家庭裁判所による審理・調査

申立て後、裁判所は以下のような方法で本人の状況を把握します。

  • 本人への面談・調査官による訪問
  • 医師による診断書の検討
  • 家族への聞き取り
  • 候補者の適格性確認

必要があれば、鑑定(専門医による認知症評価等)を命じられる場合もあります(費用:5〜10万円程度)。

審判の決定

裁判所が後見人の選任を認めると、審判書が申立人に送付されます。ここでようやく、後見人としての正式な権限が付与されます。

※審判確定までは約2週間の「告知期間」があります。第三者が不服を申し立てる可能性があるためです。

成年後見登記と報告義務の開始

審判が確定すると、後見開始が法務局の後見登記制度により登記され、証明書を取得することができます。

また、後見人は定期的に家庭裁判所への報告義務(1年に1回の財産目録や支出明細の提出)を負います。

5. 手続にかかる費用の目安

費用項目金額の目安
収入印紙代800円程度
郵便切手代約5,000円(裁判所指定による)
診断書作成費用約5,000〜10,000円
鑑定費用(必要な場合)5万円〜10万円前後
専門家への報酬(依頼した場合)行政書士:5万円〜10万円前後/弁護士:10万円〜

6. よくある質問(東京都・沖縄の実務から)

Q:どんな人が申立てできますか?

A:原則として、本人、配偶者、4親等以内の親族が申立てできます。親族がいない場合は、市区町村長が申立てをすることも可能です。

Q:後見人は親族でなければダメですか?

A:いいえ。家庭裁判所が適任者と判断すれば、専門職(弁護士・司法書士など)や第三者も後見人になります。

Q:申立て後に辞退できますか?

A:申立て人の辞退は可能です。ただし、すでに審理が始まっている段階では、一定の理由が必要になる場合もあります。

7. まとめ スムーズな申立てのために

成年後見制度の申立てには、診断書の取得や財産資料の収集、家庭裁判所とのやり取りなど、専門的かつ煩雑な作業が多く含まれます。

時間も労力もかかるため、「できるだけ早く進めたい」「不備なく確実に申立てをしたい」と考える方は、行政書士や司法書士等の専門家への相談をおすすめします。

特に、東京都江東区や沖縄県那覇市にお住まいの方は、地域の家庭裁判所ごとの運用の違いもあるため、地元に詳しい専門家のサポートが心強い味方になります。

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