建設業許可申請における専任技術者の実務経験確認資料について

建設業許可を取得するうえで「専任技術者」は欠かせない存在です。専任技術者とは、営業所ごとに配置が義務づけられた建設工事に関する技術上の責任者のことで、建設業の健全な施工体制を確保する役割を担っています。

専任技術者になるための要件にはいくつかのパターンがありますが、そのうち大きな割合を占めるのが「実務経験」または「指導監督的実務経験」による証明です。

今回は、この「実務経験」や「指導監督的実務経験」を確認するための資料について、東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業許可を検討している事業者様向けに詳しく解説いたします。

目次

1. 実務経験・指導監督的実務経験とは?

まずは定義を整理しておきましょう。

実務経験とは

「建設工事に関する技術上の経験」をいいます。具体的には、建設工事の施工に携わり、現場で技術的な業務を担った経験を指します。

ただし、以下のような単純作業は含まれません。

  • 工事現場での清掃など雑務
  • 単なる事務作業や現場補助的な業務

つまり、工事を技術的に担った実績であることが必要です。

指導監督的実務経験とは

工事現場主任や工事現場監督として、建設工事の設計または施工を総合的に指導した経験を指します。

  • 現場作業員として上長の指示に従う立場は含まれません。
  • 「工事を動かす責任を持った経験」であることが重要です。

2. 実務経験を証明するための確認資料

専任技術者としての要件を満たすためには、単に「経験がある」と主張するだけでは不十分です。客観的にその経験を裏付ける資料が必要です。

ここでいう確認資料には、大きく分けて「建設業許可を持つ会社での経験」と「建設業許可を持たない会社での経験」の二つのパターンがあります。

A. 建設業許可を持っている会社での経験

比較的証明が容易です。

  • 建設業許可の決算変更届(営業報告書)必要期間分
  • 建設業の許可証、許可証明書必要期間分

これらの資料は会社が行政に提出している公的書類ですので、信頼性が高く、実務経験の証明として扱いやすいのが特徴です。

B. 建設業許可を持っていない会社での経験

500万円以下の軽微な工事を継続的に行ってきた経験を証明する必要があります。この場合はより多くの資料を積み重ねることが求められます。

  • 建設工事の請負契約書、注文書、請書など必要期間分
  • 契約書がない場合:建設工事の請求書+通帳などの入金履歴
  • 発注者が工事を発注していたことを証明する資料

実務経験を証明するには「契約の存在」と「工事の実施」「対価の支払い」が確認できることが重要です。

3. 都道府県ごとの取扱いの違い

ここで注意が必要なのは、実務経験を証明するための資料の扱いが都道府県ごとに異なるという点です。

例えば、

  • 1年間に1件程度の契約実績で良い自治体 → 6~7件分でクリア可能
  • 年間4~5件以上の契約書を必要とする自治体
  • 毎月1件以上の工事契約を必要とする自治体

このように基準が異なるため、東京都江東区で申請する場合と、沖縄県那覇市で申請する場合では必要な件数や資料の範囲に差が出る可能性があります。

さらに、請求書の控えだけで足りるところもあれば、契約書や注文書の「原本提示」を求めるところもあります。

4. 実務経験の所属確認資料

一部の都道府県では、実務経験を証明するだけでなく、その期間に「申請者がその会社に所属していたこと」を確認することも求められます。

その場合には以下のような資料を用意することが必要です。

  • 厚生年金や社会保険の加入記録
  • 源泉徴収票
  • 給与明細や雇用契約書

これらにより、「実際に会社に在籍し、工事に関与していた」という事実を裏付けられます。

5. 実務経験資料の整理方法と注意点

(1) 年月日の整合性を確認

契約書や請求書に記載されている工事期間と、在籍証明の期間が一致しているか確認しましょう。矛盾があると不自然に見え、審査で不利になります。

(2) 契約書・請求書は複数年にわたり保管

許可申請に必要な実務経験年数は原則10年(指導監督的実務経験は5年)です。そのため、長期間にわたり資料を蓄積・保管しておく必要があります。

(3) 書類不足を補う工夫

古い会社や小規模事業者では契約書が残っていない場合もあります。その場合は、

  • 請求書と入金記録をセットで提出
  • 発注者からの証明書を取得
    といった方法で補完することが可能です。

(4) 事前相談の重要性

東京都や沖縄県など、それぞれの窓口で事前に確認してもらうことが最も確実です。実務経験の証明は自治体ごとに基準が違うため、「この資料で十分か」を必ず相談しておきましょう。

6. 東京都江東区と沖縄県那覇市での傾向

東京都江東区の場合

首都圏の中心部ということもあり、大規模工事から中小規模工事まで幅広い実績が対象となります。資料についても「網羅性」と「具体性」が求められる傾向が強く、契約書や注文書などの一次資料が重視されるケースが多いです。

沖縄県那覇市の場合

地元密着型の小規模工事が多いため、契約書が残っていないケースが少なくありません。その場合、請求書や入金履歴、第三者証明を組み合わせて補完する工夫が必要です。窓口相談でも柔軟に対応してもらえることがありますので、積極的に相談することをおすすめします。

7. まとめ

専任技術者の要件を「実務経験」または「指導監督的実務経験」で満たすためには、過去の経験を裏付ける客観的資料が必須です。

  • 建設業許可のある会社 → 許可証や決算変更届で証明しやすい
  • 許可のない会社 → 契約書・請求書・入金記録などを積み上げる必要がある
  • 都道府県ごとに必要な件数や書類の種類が異なるため、事前相談が重要

東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業許可を目指す方は、まずは「どの資料が残っているか」を確認し、不足している部分は補完資料を組み合わせて準備を進めましょう。

実務経験の証明は一筋縄ではいきませんが、適切な資料整理と専門家のサポートがあればスムーズに進められます。

行政書士見山事務所は建設業許可に精通しております、ぜひお気軽にご相談下さい。

目次