
建設業許可申請においては、経営業務の管理責任者、専任技術者、令3条の使用人が、それぞれ営業所に常勤していることが要件とされています。中でも「令3条の使用人」とは、法人の支店や営業所を代表して契約を締結したり業務を統括する立場の人を指します。
つまり、会社の本店以外に営業所を設けている場合、その営業所の責任者が「令3条の使用人」に該当するのです。
今回は、この令3条の使用人が常勤であることを証明するための資料について、実務的な観点から詳しく解説します。
1. 令3条の使用人とは何か
まず前提として、令3条の使用人は以下のような役割を担います。
- 建設業法施行令第3条に規定される「支店長等」
- 営業所ごとに置かれ、その営業所の業務を統括し、対外的に責任を負う立場
- 建設工事の契約締結など重要な権限を委ねられる人物
例えば、東京都江東区に本店を構える会社が、沖縄県那覇市に営業所を設ける場合、那覇営業所に常勤して業務を統括する責任者が「令3条の使用人」として認められなければなりません。
2. 常勤性を確認する理由
建設業許可制度は、各営業所において適切に業務が管理されることを前提としています。
したがって、令3条の使用人が「他の会社との兼務」「非常勤扱い」では、実質的に営業所を管理していないのではないかという疑念が生じます。
そのため、常勤している事実を確認できる資料の提出が求められます。
3. 令3条の使用人の常勤性を確認する資料の種類
令3条の使用人の常勤性確認においては、一般的に以下のような資料が求められます。
(1) 社会保険関係の書類
- 健康保険・厚生年金被保険者資格取得通知書
- 健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書
- 健康保険被保険者証(写し)
これらは法人の従業員であれば原則として加入しているため、最も信頼性の高い資料とされています。
(2) 税務関係の書類
- 住民税特別徴収税額通知書
- 給与支払報告書の控え
給与を受け取り、住民税が天引きされていることは、その会社に勤務している証拠となります。
(3) 個人事業主における専従者資料
- 確定申告書の控え
- 青色事業専従者給与に関する書類
個人事業主の場合、家族が令3条の使用人となるケースもあり、その場合は専従者としての記録で常勤性を示すことが可能です。
4. 常勤性が疑われるケースと注意点
常勤性の確認資料を提出しても、次のような場合は役所から追加説明や資料提出を求められることがあります。
- 給与額が極端に低い場合
最低限の生活費を賄えないような給与額では、他の仕事をしているのではないかと疑われます。 - 社会保険に未加入の場合
本来加入義務があるにもかかわらず、未加入であれば、形式的な在籍ではないかと指摘される可能性があります。 - 勤務地と住所が離れている場合
例えば、江東区の営業所に常勤するとしながらも、本人の住所が沖縄にある場合、本当に常勤なのか疑問視されます。
5. 常勤性を確実に示すための工夫
令3条の使用人の常勤性を明確に示すためには、以下のような補強資料を用意しておくと安心です。
- 勤務実態を示す 雇用契約書
- 出勤状況を確認できる タイムカードや勤怠記録
- 営業所に配置されていることを示す 組織図や社内規程
- 実際に営業所で職務を行っていることが分かる 名刺や業務連絡文書
これらは必須ではありませんが、役所とのやり取りで「常勤性を疑われたときの裏付け」として非常に有効です。
6. 東京都江東区・沖縄県那覇市での実務的なポイント
東京都江東区の場合
江東区は都心へのアクセスが良く、営業所が多く集まる地域です。そのため、都庁への申請件数も多く、書類審査は比較的厳格です。常勤性の裏付け資料は、できるだけ社会保険関係の公的資料を揃えるのが安心です。
沖縄県那覇市の場合
那覇市では、支店や営業所を設けるケースが増えています。地理的に本店と離れているケースが多いため、「本当にその営業所で常勤しているのか」が特に重視されます。住所地と勤務地の整合性が大きなポイントになります。
まとめ
令3条の使用人は、建設業許可を維持するうえで欠かせない存在であり、その常勤性を確認する資料は申請の成否に直結します。
- 社会保険や住民税の資料が最も有力
- 給与額や住所地に不自然さがあると疑われる
- 補強資料を併せて用意することで安心
- 東京都江東区では書類審査の厳格さ、沖縄県那覇市では住所地との整合性に注意
このような観点を押さえておけば、申請手続きがスムーズに進みやすくなります。
行政書士見山事務所は建設業許可に精通しております、ぜひお気軽にご相談下さい。