不動産の共有トラブルを避ける相続対策について〜江東区・那覇市の不動産事情に即した解説〜

目次

1. 相続で生じる「不動産の共有」とは?

相続が発生すると、被相続人(亡くなった方)の遺産は相続人全員の共有財産となります。特に土地や建物などの不動産は現金のように分けることができないため、相続人が複数いる場合には「法定相続分に応じた共有状態」となるのが一般的です。

たとえば江東区のようにマンションや住宅地が多い地域では、区分所有や宅地を相続した複数の兄弟姉妹が共有者となり、処分や利用を巡って意見が割れることが少なくありません。
一方、那覇市や沖縄本島周辺では広い土地を複数人で相続するケースが多く、地縁関係や親族関係の複雑さも相まって、利用方法をめぐる争いが長期化する例も見られます。

このように、共有不動産は一見公平に見えても、実際には相続人全員の同意が必要になるため、売却や建替え、担保提供といった行為が簡単にできず、大きな足かせとなるのです。

2. 共有トラブルが生じやすい典型例

相続によって共有が生じると、次のようなトラブルが頻発します。

  1. 売却したい人と住み続けたい人の対立
     長男は現金化して生活資金に充てたいのに、次男は先祖の土地だから残したいと主張し、話し合いが平行線になる。
  2. 固定資産税や維持費の負担割合を巡る争い
     共有者の一部が費用を負担せず放置し、他の相続人に不満が蓄積する。
  3. 不動産活用の意思決定が進まない
     駐車場や賃貸物件として活用したい意見があっても、反対する共有者が1人でもいれば進められない。
  4. 次世代に引き継がれて複雑化
     共有状態のまま次の相続が起こると、権利関係がさらに細分化し、誰が何分の何を持っているのか分からない「共有の迷宮」状態に陥る。

このような状況は、不動産の価値を大きく下げるだけでなく、相続人同士の人間関係まで損なうことにつながります。

3. 制度改正で変わった「遺留分」と共有問題

以前の遺留分制度では、不動産が遺留分の対象となった場合、請求を受けた側がその不動産の一部を共有で返還するケースが多くありました。これが新たな共有トラブルを生む原因となっていたのです。

しかし近年の民法改正により、遺留分侵害額請求は 金銭による支払いが原則 とされ、不動産の共有化が回避できるようになりました。
それでもなお、遺産分割協議の場で不動産をどう扱うかという課題は残ります。共有を避けるためには、事前の遺言や相続対策が不可欠です。

4. 共有トラブルを避ける具体的な相続対策

4-1. 遺言書を活用する

被相続人が遺言書を残すことで、誰が不動産を相続するかを明確に指定できます。

  • 公正証書遺言であれば法的に確実で、家庭裁判所の検認も不要。
  • 「長男に自宅を相続させ、二男には代償金として預貯金を相続させる」といった形でバランスを取れば、共有を避けつつ公平感を保つことが可能です。

江東区の住宅密集地では、自宅の相続をめぐるトラブルが多いため、遺言による指定は特に効果的です。

4-2. 代償分割を取り入れる

不動産を特定の相続人に単独相続させ、他の相続人にはその代わりに現金や代償金を支払う方法です。
これにより不動産の共有を避けられるほか、相続人間の公平も図れます。
沖縄の広い土地を分割すると利用価値が下がる場合でも、代償分割によってまとめて承継させることで土地の有効利用が可能となります。

4-3. 生命保険を活用する

代償金を準備するために生命保険を利用する方法があります。
例えば「自宅を長男に相続させるが、二男には保険金を充てる」という設計をしておけば、相続人間の不公平感を減らし、現金不足による共有化を防げます。

江東区のように不動産価値が高く、預貯金だけでは代償金が不足しがちな地域では有効な手段です。

4-4. 家族信託の活用

近年注目されているのが家族信託です。不動産を信託財産とし、信頼できる家族を受託者にして管理・処分権を託す仕組みです。
これにより、相続開始後に複数人で不動産を持ち合う状況を回避し、スムーズな管理や売却が可能となります。

特に那覇市や沖縄県内では、複数の子どもが県外に住んでいて管理が難しいケースが多く、信託を活用することで「遠隔共有問題」を防げます。

4-5. 遺産分割協議書を丁寧に作成する

相続人全員で合意ができた場合でも、その内容を必ず「遺産分割協議書」にして残しておくことが重要です。
不動産の持分割合や代償金の額を明確にしておくことで、将来の誤解やトラブルを未然に防げます。

5. 実際の事例から学ぶ共有対策

事例1:江東区の自宅マンション

父が亡くなり、江東区のマンションが相続財産となったケース。長女はそのまま居住を希望し、弟は売却を希望しました。遺言がなかったため共有状態で相続しましたが、売却も活用も進まず対立が激化。最終的に家庭裁判所で調停となり、解決までに2年以上を要しました。
→ このケースでは、事前に「長女に相続させる」と遺言があれば、時間も費用も節約できた典型例です。

事例2:那覇市の広大な土地

那覇市の中心部にある土地を3兄弟が相続。分筆が難しく、賃貸活用の話もまとまらずに20年以上共有状態が続きました。その間に孫世代まで権利が分散し、30名以上の共有者となってしまい、処分不能状態に。
→ 家族信託や代償分割を導入していれば、ここまで複雑化することは防げました。

6. まとめ

相続で不動産の共有が生じると、処分や利用の自由が制限され、トラブルの火種になります。特に江東区や那覇市のように不動産価値が高い地域や土地の広い地域では、共有問題は深刻化しやすい傾向にあります。

共有トラブルを防ぐためには、

  1. 遺言書で承継先を指定する
  2. 代償分割や生命保険で公平性を確保する
  3. 家族信託を活用する
  4. 遺産分割協議書を必ず残す

といった事前の対策が極めて重要です。

相続は一生に一度あるかないかの大きな出来事です。円滑に、そして家族の絆を損なわないためにも、早めに専門家に相談して共有トラブルを未然に防ぐことをおすすめします。

行政書士見山事務所は終活や相続手続き、遺言作成に精通しています。お気軽にご相談下さい。

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