「就労ビザ」とは、日本における就労を目的とした在留資格の通称であり、このビザを取得することで外国人は日本国内での就労が許可され、報酬を得ることが可能になります。外国人が日本で働く際には、適切な在留資格を取得することが法的に求められており、そのためには各在留資格の特徴や要件を正確に理解しておくことが重要です。
日本における在留資格の分類
日本における在留資格は大きく分けて、「身分又は地位に基づく在留資格」と「活動に対して付与される在留資格」の二つに分類されます。さらに後者は、就労が許可されているものと、就労が許可されていないものに分かれます。
1. 身分又は地位に基づく在留資格
このカテゴリに属する在留資格は、日本での永住や結婚、難民認定などによって取得されるものであり、就労に制限がありません。以下に具体的な例を挙げます。
- 永住者:永住許可を受けた外国人
- 日本人の配偶者等:日本人と結婚した外国人、日本人の子供
- 永住者の配偶者等:永住者の配偶者、永住者の日本で出生した子供
- 定住者:日系人、定住インドシナ難民、中国残留邦人の配偶者や子供など、その他日本への一定の定着性や在留の必要性が認められる者
これらの在留資格を持つ外国人は、日本国内で自由に働くことができ、職種や業界に制限がありません。このため、日本社会での生活やキャリア形成を図りやすいという特徴があります。
2. 活動に対して付与される在留資格
外国人が日本で行う活動に対して付与される在留資格は、さらに以下の三つに分かれます。
2-1. 就労が許可されている在留資格(いわゆる「就労ビザ」)
このカテゴリに属する在留資格は、外国人が日本で特定の職種に従事するために与えられるもので、職種ごとに細かく分かれています。以下に主な就労ビザの種類とその具体例を示します。
- 外交:外国政府の大使、公使等及びその家族
- 公用:外国政府等の公務に従事する者及びその家族
- 教授:大学教授、助教授、助手など
- 芸術:作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家など
- 宗教:僧侶、司教、宣教師など
- 報道:新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど
- 高度専門職:ポイント制による高度人材。1号と2号がある。
- 経営・管理:会社社長、役員など
- 法律・会計業務:弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など
- 医療:医師、歯科医師、薬剤師、看護師など
- 研究:研究所等の研究員、調査員など
- 教育:小・中・高校の語学教員など
- 技術・人文知識・国際業務:理工系技術者、IT技術者、外国語教師、通訳、コピーライター、デザイナーなど
- 企業内転勤:外国の事務所からの転勤者
- 介護:介護福祉士の資格を有する介護士など
- 興行:演奏家、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど
- 技能:外国料理の調理師、調教師、パイロット、スポーツ・トレーナー、ソムリエなど
- 特定技能:技能実習生(特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能、熟練した技能を要する産業に従事するもの)1号と2号がある。
- 技能実習:技能実習生(海外の子会社等から受け入れる技能実習生、監理団体を通じて受け入れる技能実習生)
これらの在留資格は、特定の職種に従事するために必要とされるものであり、職種や業務内容に応じて厳格な基準が設けられています。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するためには、申請者が従事する業務が該当する職種に該当し、かつその業務に必要な専門知識や技術を有していることが求められます。
2-2. 就労と就労以外が混在している在留資格(特定活動ビザ)
この在留資格は、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」として定義されており、具体的な内容は個々のパスポートに貼付された「指定書」に記載されています。具体例としては、以下のようなものがあります。
- 特定活動:外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー入国者、報酬を伴うインターンシップ、EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者等
特定活動ビザは、一般的に一時的な就労や特定の活動を目的として与えられるものであり、活動内容によっては就労が認められる場合があります。
2-3. 就労を許可されていない在留資格
このカテゴリに属する在留資格は、就労を目的としない活動に対して付与されるもので、基本的に日本国内での就労は認められていません。しかし、一定の条件下で「資格外活動許可」を取得することで、制限付きの就労が可能になる場合があります。具体例としては、以下のようなものがあります。
- 文化活動:日本文化の研究者等
- 短期滞在:観光、商用、知人・親族訪問等に90日以内の滞在をし、報酬を得る活動をしない短期滞在者
- 留学:大学、専門学校、日本語学校などの学生
- 研修:研修生
- 家族滞在:就労ビザなどで日本に来た外国人の配偶者や子供 ※親は含まれない
例えば、外国人留学生がアルバイトを行う場合、「資格外活動許可」を申請し、認められれば週28時間以内のアルバイトが可能です。また、長期休暇中(夏休みや春休みなど)には、1日8時間、週40時間までの就労が認められます。
就労ビザ取得のプロセス
就労ビザの取得には、以下のプロセスを経ることが一般的です。
- 雇用先の確保:就労ビザを申請するためには、まず日本国内での雇用先を確保する必要があります。雇用契約が成立していることが前提条件となります。
- 在留資格認定証明書の申請:雇用先が決まったら、雇用主が地方出入国在留管理局に対して在留資格認定証明書の申請を行います。この申請には、雇用契約書、会社の概要、申請者の履歴書などが必要です。
- 在留資格認定証明書の交付:申請が認められると、地方出入国在留管理局から在留資格認定証明書が交付されます。この証明書は、日本に入国する際のビザ申請時に必要となります。
- ビザ申請:在留資格認定証明書を持って、申請者が自国の日本大使館や領事館でビザを申請します。
- 日本への入国:ビザが発行されたら、日本に入国し、空港で在留カードを受け取ります。この在留カードが、日本での就労を許可する正式な証明書となります。
就労ビザの注意点
就労ビザの取得には、いくつかの注意点があります。まず、就労ビザは申請者の職種や業務内容に応じたものであるため、職務内容が変更された場合には、再申請が必要となる場合があります。また、就労ビザは通常、特定の雇用主に対してのみ有効であり、他の企業での就労を希望する場合には、再度在留資格の変更手続きを行う必要があります。
さらに、就労ビザの更新手続きも重要です。就労ビザは通常、1年または3年の有効期間が設定されており、この期間が終了する前に更新手続きを行わなければなりません。更新手続きには、再度雇用契約書や雇用主の会社概要などが必要となります。
まとめ
日本で就労を希望する外国人にとって、就労ビザの取得は非常に重要なステップです。適切な在留資格を取得することで、日本国内での働き方や生活が大きく広がります。しかし、各在留資格の要件や取得プロセスには細かいルールがあり、これを理解し遵守することが求められます。ビザの取得や更新手続きに関しては、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。